2020年06月29日

散歩と通院と国民にとどく安倍晋三のことば

 外出しなくなって八○余日。
 ひさしぶりに、玄関のドアを開けた。

 外出の理由は病院に行くこと。
 中止していた定期診療の、間があきすぎた。
 診察を受けているのは、新型コロナウイルスに感染すると重症化や死の危険が大きいとされる基礎疾患で、病院に行くことのほうが危険かもしれず、通院を控えていた。

       

 政府による緊急事態宣言解除から、すでに一か月。いま住んでいる東京都の「東京アラート」は、六月十一日に解除ずみ。都の休業要請の順次緩和も、六月十九日に完了して、大型イベントの諸条件以外は全面解除になっている(二〇二〇年六月下旬)。

 なさけないことに、いまの数行を書くのに、何度か調べ直さなければならなかった。「東京アラート」からして正確には理解していなかったからだ。
「全面解除」後も数日引きこもった理由はとくにない。人出が急に増えると聞いたので様子を見た、というところだが、急にではなく数日おいて、こちらが出かける日までに増加したらしい。

       

 二か月半ほど世の中を見ていなかっただけで、観察力が鈍ったとは思えないけれど、外のようすは何も変わっていなかった。それも、感染が大問題になる以前の、ことし初めくらいの様子と。

 誰もがマスクをしているじゃないかって。確かにその通り。通りがかりに見る店も、ご存じの対策をそれぞれ施している。しかし街頭の人たちの様子には、とくに変わったところはなく思われた。世間話に興じていたり駅へ急いでいたり。
 もとより、よく街中でものを訊ねられるが、この日も、どっかのオバハンに呼び止められかけた。「かけた」とは、逃げてしまった。悪いけど……。
 百円ショップのレジ前には間隔を空けた線が引いてあり、買う人たちはその通り並んでいる。けれど売り場では、そんなことはまったく守られていない。ペーパーフィルターを探していると、横から無言で手が伸びてきた。「いつも」となにも変わらないので、嬉しくなってしま……わなかった。やはり、逃げました。

 暑さと蒸れで、マスクは大変だろうし、本当に酸欠状態なのか、険悪そうな目つきの人が多い気がする。まして表情が読めないので、そういう人たちが、いつこちらへ体当たり攻撃してくるかと──しないか、そんなこと──ヒヤヒヤし通しで、すっかり疲れてしまった。
 だいいち、どうしてこちらが逃げてばかりいなくちゃいけないのかと、うんざりもした。

       

 ありがたかったのは、病院の対応だ。
 いつもと変わらず勤務する様子からして救われた気持ちになったし、患者が診察を待つ椅子をダブルハンドクロスで拭きまくる清掃スタッフさんたちの姿も、安心につながった。
 指導室で、引きこもり暮らしの運動不足を、中学校の体育授業を思い出し剣道の素振りで補っているつもり、と話したら、なんと剣道の心得がある──部員だったのかな──とのことで、正しい振りかたと足さばきを教わることができた。かかりつけ病院で(笑)。
 担当医には、いくら基礎疾患があるとはいえ、自分の生活態度はウイルス恐怖症というか、神経質すぎないかと質問してみた。「これから何が起きるのか、まだ何もわかっていません。気をつけるに越したことはないです」という答えだった。

      

 わたしよりずっと若いはずの、医師のことばを信じるべきか、それとも、この国の首相のことばを信じるべきか。
 ちなみに、その首相は、ひと月前の五月二十五日、五つの都道府県の緊急事態宣言解除にあたり、早くもこういっていた。

 我が国では、緊急事態を宣言しても、罰則を伴う強制的な外出規制などを実施することはできません。それでも、そうした日本ならではのやり方で、わずか1か月半で、今回の流行をほぼ収束させることができました。正に、日本モデルの力を示したと思います。
 全ての国民の皆様の御協力、ここまで根気よく辛抱してくださった皆様に、心より感謝申し上げます。
 感染リスクと背中合わせの過酷な環境の下で、強い使命感を持って全力を尽くしてくださった医師、看護師、看護助手の皆さん、臨床工学技士の皆さん、そして保健所や臨床検査技師の皆さん、全ての医療従事者の皆様に、心からの敬意を表します。
(中略)
 そして本日、ここから緊急事態宣言全面解除後の次なるステージへ、国民の皆様とともに力強い一歩を踏み出します。目指すは、新たな日常をつくり上げることです。ここから先は発想を変えていきましょう。


 そういえば安倍晋三の会見発言を、できるだけ中略を避けて要所を引用しようとするたびに、気づくことがある。
 わが国の首相の発言は、きわめてしばしば、美味しいところだらけで、長い。

 わたしは、担当医師のことばを信じることにした。
 かなり前からわかっているが、いまの日本で、わずかでも安心して暮らしたかったら、こうすればいい。
 この国の指導者がいうことを、信用しないこと。
 あるいは、そいつが、こうしろということを、なるべくしないようにすることだ。(ケ)

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※全文は首相官邸サイトにあります。ここ

posted by 冬の夢 at 01:20 | Comment(0) | 日記 話題・意見・世相 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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