2020年05月25日

散歩とテレワークと充実感 .

 外出しなくなって、ひと月半が過ぎた。
 運動しなければならない病気という、ややこしい持病があるが、スポーツは苦手。なんとか散歩だけ続けていた。それができなくなり、たちまち運動不足になってしまった。
 気づかずにウイルスを拡散する可能性はなく、自宅待機の意義は満たしている。しかし今後も感染を避け続けるには不安が残る。いくら出歩かなくとも、首都圏ではウイルスとの接触をゼロにはできないからだ。

 運動が必要な持病とは、ご想像どおり糖尿病。高年齢男性だし過去の病歴も考えると、感染すれば発症し死ぬ可能性を意識せざるを得ない。
 そこはあきらめがついているが、緊急事態解除を前にした日曜日(二〇二〇年五月二十四日)、窓の外に目立つ解放感を見るにつけ、ほんとうにこれが「出口」かどうか疑っている。怯えてはいないが平常心ともいえない。

 こういう気持ちでいる自分のような人びとのために、目盛りひとつ分でいいから、もうしばらく抑制してほしいとも思うが、そういうことをいうと「自粛警察」だそうだ。そんな扱いをされるなら黙っていよう。いま書いてしまったけれど。
 このさい田舎に住む友だちを探し、居候を頼もうかと考えなくもない。しかし、知らずにウイルスを運搬してしまう危険がないとはいえないし、いま首都圏から地方に行こうものなら、県境でショットガンを乱射されたり、バズーカ砲で攻撃されたりするらしい。

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 自室にこもり続けでも、ストレスはない。会社や学校でのよけいな人間関係がないと仕事や勉強がはかどる、というテレワーク体験者には共感できる。
 いや、将来もずっとテレワークでいけるのでは、という声は、けっして少数派のものではなく、支持されつつあるようだ。たしかに、自分の会社員時代を思い出しても、上意下達だけの会議、人事などをめぐるうざい密談、エンドレスな夜の付き合いがなかったら、倍以上のアウトプットができたことは間違いない。都心通勤による避けがたい疲労もなかったわけだし。
 このままテレワークが定着すると、都心の飲食店やネーチャンのいる店が干上がるじゃないかというかもしれないが、地域の商店街に移ってきてほしい。賃貸料も安い。自宅業務は効率がいいとすれば早々と夕飯が食える。家族と晩メシを終えてから、おもむろにネオン灯る駅前商店街へGO! 一日ウチで稼いだんだから、それぐらいは許されるのでは。

 ただ、全面テレワーク化には賛成できない面もある。古い考えと承知のうえで。
 オフィスなし、対面仕事なし、一日分の仕事パッケージをこなせば業務終了、というのは合理的で、自由時間や家族とのひとときも豊かになり、いいこと尽くしに思える。
 しかし、人のプレゼンスがない組織になってしまうと、Aiに仕事させているような感覚になってしまわないか。勤務者の存在実感がないので、ひとりの人間を捨てたり取り替えたりすることが、過度に容易になってしまったら──。
 人が顔を見せている場があり、その場の人の存在感や関係性で動く仕事があり、内勤外勤を問わずリアルなやりとりが連鎖しているからこそ「余人をもって代えがたい」という人材思想もあるのではなかろうか。
 もっとも、出入業者に賭け麻雀や握りゴルフの勝ちを譲らせて喜んでいるようなくだらない輩に限って、「余人をもって〜」といわれて管理職に居座り続けたりするのが、日本の組織の病理のひとつでしたけどね。

       ♪

 引きこもっていてストレスを感じない理由は、テレワークどころか固定業務もないのに、やることが多くて、一日二十四時間では足りないほどだから。

 たとえば、数日前から、この十年近くめったに買わなくなっていた音楽CDを、さかのぼって買い直そうと、リストを作ることにした。
 これが、ぜんぜん進まない!

 五年ほど前にも思いついたが、いろんなジャンルの音楽を聴くので、各種の音楽雑誌のバックナンバーの新譜案内を遡らなければと思い、いまさら膨大なプレビューなど読む気になれず、とりかからなかった。
 が、クロスジャンルの新譜情報を扱う月刊情報誌『CDジャーナル』が、新譜情報のバックナンバーを無料ウエブ公開していることを知った。版元に問い合わせてみると、国内盤の月次新譜発売情報に、以後の内容変更(廃盤など)を付加したバックリストだそうだ(インディーズ盤などはのぞく)。
 かつて爆買していたレコードやCDは、ほぼ輸入盤と新古の国内盤。国内発売の新譜はあまり買わなかった。それでも助かる。
 よく聴くジャンルで浦島太郎状態なのはロックやR&Bなどの洋楽ポピュラー盤である。しかしさすがに枚数が多すぎ、とりあえずジャズから始めた。ウエブのリストをちらほら見てみると、わりと近年まで未練がましくポツポツ買っていたことがわかり、浦島次郎くらいの感覚じゃないかな、ということで。

       ♪

 過去十年のうち三〜四年分のジャズ新譜情報に、短いレビューを読みつつ、目を通し終えてみると、やっぱり自分は浦島だ! と驚かされた。
 日本で発売されるジャズの盤って、こんな傾向になってしまっていたのか!
 その話は、直近までのジャズ新譜情報にひと通り目を通せたら、書けたら書くつもりだが、→こちらに書きました← レビューを見て、興味がある奏者の「実音」をネットで確認するだけ──「爆買時代」にはできなかったことだ──で、一日なんてすぐ終わってしまう。ほかに受験勉強もしなくちゃならない(笑)し。
 ただ、これで自宅待機生活が楽しく充実しているかと聞かれたら、そうでもない。

 かつての同業者の知人から、テレワークだと仕事のやめどきがわからなくなり、朝から深夜まで手が離せなくなる、という知らせがあった。
 驚いたことに、自分の心のどこかに、そんなふうに充実してみたいといういびつな気持ちが、いまだにある。
 リアル勤務だろうと、テレワークになろうと、組織化された労働はやはり人間を機械に変えるらしい──というのもまた、最近の若い勤労者たちからすれば、ひどく古い意見かもしれないが。(ケ)


■二〇二〇年七月二十三日、わずかに直しました。
posted by 冬の夢 at 03:28 | Comment(0) | 日記 話題・意見・世相 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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