2020年04月08日

散歩とヒマラヤと運動不足 .

 運動しなくちゃならないのだが、スポーツは苦手なので散歩してきた。
 この春、近所を一、二時間、歩くしかなくなってからは、身近に見聞した小さな話を書くことにした。遠出して散歩したころよりも、たびたび書いている。
 自分で見聞きしたことだけ、ていねいに書く習慣をつけると、見てきたようなネタをたれ流すヒマはなくなるからだ。人を怖がらせる噂を拡散し合う場に加わらなくてすむ。

 そのうち散歩もままならなくなり、今週からは、引きこもるようになった(二〇二〇年四月第二週)。
 まったくの閉門は無理で、わずかだが人の出入りもある。完全な感染防御は不可能だ。しかし複数の理由、つまり病歴や年齢などから感染すると死ぬ可能性があると思っているので、必要のない外出は避けることにした。

       

 困ったのは、運動できなくなったこと。
 いや、運動が必須ならトレーニング用具でも使って自室でやればいい。脱獄・逃亡もののアクション映画にもあるでしょ、せまい所に幽閉されても腕立てや空手の型で鍛える話が。すごい懸垂をしたり敵を撲殺したりして、主人公が自由をつかむ、というね。

 それはムリ! どう考えてもムリだ!
 懸垂も空手チョップもできないという問題ではなく、日々運動を積み重ねたり、よい食習慣が維持できる性格なら、「生活習慣病」になんてなりはしない。
 わたしは、鳥のエサみたいなものを食い続けたり、大都市の汚れた空気の中を高価なウエアやシューズで走ったり、病気やアルコール摂取できない体質以外の「健康主義」から一杯の杯を断るようなやつを、心底、軽蔑してきた。おかげで自分が病気になってしまった。どうぞあざ笑ってください、すこやかな人々よ!

       

 ボソっていてもしかたないので、こういうものを掘り出してきた。
 ウエイトです。
 ウエイトとは、付属のバラストを入れ手首や足首に巻いて負荷をかける用具。トレーニングやリハビリ向けに商品化されている。ただ、いまどきの品は見た目がシンプルで、おしゃれだ。
 わたしのは写真のとおりゴツくて、つけると拘束具みたいな感じだ。カッコよくない。そちら方面が趣味の人にはビビビとくるかもしれませんけどね。

200410K1.JPG 
鉛(だと思う)の板を差し込み重さを調節。
片方に1キロくらい仕込めるが、
いきなり負荷をかけると危ないから、ほどほどで…。

 昔の用具なのでゴツいわけだが、まさに昔、ある山岳関係者からもらったものだ。外国の高峰にも登るような専門家である。
 仕事の縁だが、わたしは登山には興味がなく、ノリクラだコマガタケだといわれても場所からして知らない。もちろん仕事で聞いた話はよく確認したし、自分の仕事とは関係ない地方のイベントに付き合うなどもした。

 その人が、わたしの運動不足を見かねて、くれたのがこれだ。
 その人も、ふだんから足に装着して鍛えているという。
 当時、その人は六〇歳代半ばくらいだったろうが、若いわたしでも腰を痛めるに違いない重さで使っていた。

「いっしょにヒマラヤに行こう!」とよくいわれた。
 そんなのムリに決まってますよといくらいっても、しばらくこのウエイトをつけて歩けばだいじょうぶ、難しくないよ、行けるよ! と。
 登山家や冒険家は超人だと思っていたので、冗談のつもりで流し、ヒマラヤには縁がないまま、その人との縁も薄くなった。しばらく前に亡くなったと聞いている。

 そんなことを思い出しながら、これを手首や足首につけ、部屋の片付けをしている。
 模様替えなど大がかりなことではなく、高い棚や低いクローゼットの中に突っ込んだきりのモノを整理する。椅子に上がったり下りたり、床で立ったりしゃがんだり。多少は運動になればと……。

       

 ヒマラヤといえば日本にも、ぜひ訪れたかったのにかなわなかった「ヒマラヤ」があった。

「ヒマラヤ美術館」。ご存じですか。
 名古屋市にあった財団美術館で、「ヒマラヤ製菓」創業者の洋画コレクションを展示したそうだ。
 あれは同社の本店だったのか、一階が洋菓子店で上階が美術館、つまりギャラリースペースだったはず。開館は一九七七年と古く、文化色が薄いといわれた当時の名古屋に貢献したいという、創業者の思いからだそうだ。

 存在を知ったのは、たしか仕事で名古屋に行ったとき。二十五年くらい前だ。「ヒマラヤの〜ケ〜キ〜♪」というCMが耳に残る、ヒマラヤ製菓の店だった。
 ほかの用で忙しく、通りがかっただけだったが、ショーケースのとんでもないケーキに目がクギづけになった。

 それは「ベンベ」というケーキ。
 けっこう大きくて真っ白。生クリームだったのか。見た目は幼稚園児のヘタくそな粘土工作。いったい何なのかわからない。
 なんと「ベンベ」とは「BMW」! 車の形のケーキだという。どう読んだら出てくるんだ、ベンベ!
 さすがのわたしもズッコケた。みなもと太郎の漫画みたいにコケ、背景の彼方へふっ飛んだ!
 ところが「ベンベ」など序の口で、「名古屋プリン」や「ミソサブレ」、「コーチンエッグ」なるお菓子さえ、平然と販売していると知る。まいってしまった!

 そんなファンキーな製菓会社がアートギャラリーを持ち、岸田劉生や梅原龍三郎、杉元健吉や三岸節子などを常掲しているという。地元画家の作も熱心に集めていたそうで、じつに面白く、うれしくも思った。
 が、お店を再訪してファンキーなお菓子を買うことも、美術館を訪ねることも、かなわなかった。
 二〇〇〇年代初めに製菓販売経営が不振となり、売り上げはあったのにヒマラヤ製菓は倒産。地元食肉販売大手が買収し店舗は営業を続けたが、いまも記憶に新しいBSE関連の食肉偽装事件で、その会社も同年中に倒産。個別に続いた店舗も、現在ではみな姿を消したようだ。

 ヒマラヤ美術館は、それよりさきに閉館している。
 財団法人運営なのに、所蔵作品のほとんどがごたまぜに製菓販売会社の融資担保とみなされ、持ち出され、売られ、ゆくえはわからないらしい。(ケ)

200410KK.JPG 
ヒマラヤに行ったことはないから、
甲斐駒ヶ岳です。


Originally Uploaded on Apr. 11, 2020. 19:50:00
二〇二〇年七月二十二日、文のつながりのみ直しました。


posted by 冬の夢 at 00:05 | Comment(0) | 日記 話題・意見・世相 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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