2020年03月26日

散歩とスパゲティと「いつも通りの」桜 .

 運動しなければならないが、スポーツは苦手。せめて散歩だ。
 昨今は繁華街は避け、公共交通で郊外へ行くのもやめ、近所の回遊だけに。東京都大田区、世田谷区、目黒区など……。

 昨三月二十五日夜、都知事が会見。
 現状を「感染爆発の重大局面」とし、平日はできるだけ自宅仕事し、夜間外出を控え、この三月第四週末は「お急ぎでない外出はぜひとも控えていただくように、お願いを申し上げます」と述べた。

       ♪

 そのことに驚いてはいない。

 きのうまで驚いていたことは、近所を散歩すると、平日の日中から公園や駅商店街、宅地の細道などに、やたらに人出があったことだ。
 繁華街にはめったに行かなかったが、偶然なのかそちらも、平日でも以前の週末より混んでいる気さえした。
 
 日本は、感染検査を受けにくくし、医療関連機関の過剰な混雑や院内感染を防ぎ、重症感染者への医療を確保しようとする策で、ここまで来ている。
 賛否はあると思うが、重態の人をできる限り死なせないようにという選択なら、わたしにとってはありがたい選択だ。

 ただ、必然的に発表感染者数は少なめになるので、世界の主要都市よりずっと安全じゃん! という印象をもった人たちが往来を重ねると、感染が急拡大しかねない。症状の重い人も急増すると、医療が及ばなくなる事態がいきなり生じる可能性がある。説明するまでもないが。
 つまり都知事の「お願い」はとくに、子どもや若年層、さらに年齢をとわず健康や活力に自信のある、つねづねアクティブに行動している人たちに対してなのだ。
 都なり政府なりが、近々に直接のメッセージを出すだろう。もう出ているのかな。
 そして、それはわたしからの「お願い」でもある。

       ♪

 ここまでを、最後の散歩報告にしようと思ったけれど、つぎのような意見がけっこう多いと知り──伝聞したもので、じかに聞いたわけではない──都知事会見の翌日のきょう、近所で見聞したことを、すこしつけ足しておくことにした。

 意見とは、都民全員が外出自粛なんて、そんなことがいつまでやれると思っているのか、出かけると感染するのが怖い人が外出自粛すればいい、というものだ。
 こういうことを聞くと、これまでは「新婚さんいらっしゃい!」の桂三枝みたいに椅子ごとコケそうになっていたが、あきらめが先立つようになった。そういうことをいう人もいるでしょうね、と。

 意見の背景には、誰もが感染して抗体を持てばよいとか、死ぬのは高齢者や持病がある人がほとんどなら、それはしかたない、というような、すこし前まで流通していた──これからもだろうか──考えがあるのだろう。
 都知事会見に同席した国立感染症センター長の警告は、放送映像をなるべく略さず書き写すと、
「この病気の怖さというのは(略)八割の人は本当に軽いんです。(略)ただ、残りの二割の人は確実に入院が必要で、で、全体の五パーセントのかたは集中治療室にはいらないと助けられない。しかも僕は現場で患者さんをみていてよく分かりますけど、悪くなるときのスピードがものすごく早い」
 というものだった。にもかかわらず、もし感染しても自分は「八割」のほうだろうと思っている多く人たちが、むしろ安心したという結果にもなったらしい……。

        ♪

 ホットケーキを焼いてもらえる、という話になり、クロテッドクリームを買いに行くことになった。

 ウチを出たところで、ときどき雑談する、集積所などの掃除担当のオバチャンに会った。
「朝から、あちこち、買い占めで大変なことになっているわよ!」
 と、処分する段ボールを受け取りながらオバチャン、機嫌が悪い。
「あんなに買って結局は捨てるんだからね!」
 ちなみにオバチャン自身は、ゴハンと梅干しがあれば大丈夫よ! と豪語していた。

 近くの駅商店街では、アジフライをたまに買ったりする肉屋さんは午前中で肉は品切れ。シャッター半降ろしだった。
 親しいパン店に立ち寄ると、こちらも朝から、ほとんど売り尽くしたという。
 そこで、ふだんあまり買いものをしない、近隣でいちばん大きいスーパーマーケットに行ってみた。私鉄沿線各所にあるTストアだ。
 けっこう大きい店で、売場面積を調べてざっと計算すると、都心の標準的なコンビニだと十五店から二〇店ぶんの広さ。たしかに見渡すほどの売場で、在庫も豊富なはずだが……。

       ♪

 バックヤードから補充する時間差も、もちろんあるから、この日の確定状況とはいえないだろうが、かんたんに書いておこう。
 おかしなことは「やや減っている」だとか「そこそこある」商品はなく、「かき消えている」か「山と積まれている」かの、どちらかの場合しかないこと。「ない」場合、文字通りカケラも残っていない。

■売場からまったく姿を消した商品

 野菜、冷凍野菜、たまご、ヨーグルト、牛肉、牛乳、パン、小麦粉、米、もち、シリアル、カレールー、パスタソース、インスタントスープ、納豆、冷凍ピザ、インスタント麺、カップ麺など

■売場が埋まるほど存分にあった商品

 魚介(刺身など調理済含め)、デリカ商品(弁当・おかず)、ジャム、アイスクリーム、デザート、調味料、中華インスタント食品(レトルト、スピードクッキング含め)、酒類(ビール、ワイン)、ソフトドリンクなど

 ふしぎなことにパスタ(乾麺)は、ほぼ売り切れていたのに、なぜかバリッラ Barilla の麺だけが山と残っていた。そりゃ自分がスパゲティ料理を作るときは、バリッラよりデチェッコ DE CECCO のほうが、合うと思ってはいるけど、関係ないよな……。
 もっとも、輸入食材の店、ご存じKルディという店ですが、ここでもパスタが品薄のなか、デチェツコだけが山と残っていた。まさか……。

 テレビであんなこというから、どうなっちゃうかと思って
 と周囲に向かっていいながら、買いまくっているオバハンがいた。
 どうして何もないの!
 と、Tストアの店員にくってかかっているオバハンもいた。
 ババアと書きたいのだが、みな、わたしより歳下だと思う。

       ♪

 そして近所のコンビニエンスストア。
 入口の自動ドアに、こんな張り紙がベッタリなのが、やや前から気になっていた。

 マスク、ティッシュ、トイレットペーパーなど、品切れになっている商品は、ごぞんじの通り品薄です。
 入荷時間、入荷日時、入荷タイミング、品物の取り置きなど、全てが店員にも分からないし、お受けしていません。
 この文をお読み頂いた後、店員に聞いても、まったく一緒の内容をお答えするのみになります。


 なんの含みもなく「店員」なりにきちんと作文したつもりだろうが──つなぎがおかしい所は略した──見ないようにしているものの、通るたび目について、どうも憂鬱になってしまう文だ。

       ♪

 ついでに図書館にもまた行ってきた。
 東京都の公立図書館は、休館か縮小対応になっているはずだ。
 最寄りの区立図書館も、開館しているが、開架書架や学習場所などふだんの空間には立ち入れず、予約した本の貸出返却などにカウンターで対応するのみだ。
 それは了解している。以前からネットで他の図書館からも取り寄せることが多いので、同じだ。紫外線消毒器が使えるので「ぶ〜ん」とやってから借りている。
 周辺はいよいよ桜が満開。さすがに先週ほどは、あるいは例年の同じ時期ほどは人は多くないが、それでも最寄り駅前の信号が混雑するほど、平日から人が訪れている。

 咲いてるじゃん! いつも通りじゃん!

 という若い女性の叫び。
 思わずふり返ると、ガキ、じゃない、お子さんづれの、若いお母さんだった。舞い上がっちゃってる感じだが、べつにヤンママじゃなく、ふつうの人だ。
 そりゃ桜は「いつも通り」に咲くわいな、というヒネクレた突っ込みはまったく思いつかず、「いつも通り」という叫びが、ただ身にしみた。(ケ)

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■二〇二〇年七月二十二日、文のつながりのみ直しました。
posted by 冬の夢 at 21:57 | Comment(0) | 日記 話題・意見・世相 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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