2020年02月10日

最近使っているカメラと「目的写真」の話【追記あり】 .

 いま使っているカメラは2つ。
 ひとつは、キヤノン PowerShot G1X MarkU 。これまで使った初代G1Xと年初に交替。
 昨年後半から使いだしたソニー Cyber-shot DSC-RX1 と、同時に2台持っている。

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 キヤノンG1Xの被写体対応力のひどさは、発売当初から反時代的といっていいほどだったのだが、五年以上使った。
 使いにくいカメラにこだわったのではなくて、まれに奇跡のような写りかたをするのが捨てがたかった。「まれに」というのがいい。
 かなり使ったので操作部などの劣化か、誤作動するようになった。生産は終了していて、かなりの修理費をかける意味があるだろうかと迷う。
 G1Xシリーズはすでに三代目まできていて、交替した「U」も発売六年。フィルムカメラの時代なら、さほど驚かない年数だが、デジタルカメラだと過去の遺物だ。新品を買ったが、発売時の三割の値段だった。「三割引」じゃなくて。

 なぜ現行機種でなく、わざわざ時代遅れのカメラを? 
 毎度の食事を撮って記録する要があり、ずっとG1Xで撮ってきたので、近い操作感で撮り続けられるカメラにしたかった。G1Xの三代目で現行機種の「MarkV」は、カメラの形状がかなり変わったので、十二万円もする「V」を買う気にはなれなかった。

200210c1.JPG 
PowerShot G1X MarkU
ボディのロゴにはパーマセルを貼っています

 といっても、もう一台のソニーRX1は「V」よりずっと高いが、なぜ買ったか。
 死ぬまで使えるかどうかはともかく、それで撮るならカメラに文句がいえない機種も、手にしたかった。
 フルサイズ撮像素子にカール・ツァイス設計の35ミリF2レンズで、コンパクトカメラだが高級一眼レフに匹敵する高性能機なのだ。
 わたしにはもったいないようなカメラだが、ピントの締まりや解像度がすごく、機敏さもまずまず。慣れれば問題なさそうだった。実際RX1を使うと、写しっぱぐれが減った。
 ところが「アホのないものねだり」なのか、自分が撮ったのではなくカメラに写してもらったように感じ出す。
 結局、RX1では無目的な思いつき写真を撮るようにし、G1X MarkUは目的写真≠ノ使うようになって、2台いつも持っている。

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 わたしはプロカメラマンではないけれど、つてで頼まれ、イベントやメニュー(料理)など、ウエブやプレゼン、パンフレットなどに使う、趣味でない目的写真≠撮る機会ができてきた。
 わたし自身はプロではないが、プロの友だちが何人かいて、その人たちには申しわけないが、照明のしかたやデータ納品の方法などを教わることができた。

 その点はいいとして、問題は使うカメラだ。
 プロやベテランアマチュアむけの、フルサイズセンサーの高級一眼レフで撮ったほうがいいかなと、迷いながら撮っていた。
 キヤノンなら5Dや6D、RX1のソニーなら、一眼レフではないが α7 シリーズだとか。

 目的写真を頼まれたとき心配なのは、印刷物に使われたときの刷り上がり。チラシやパンフレットに載るていどの写真の刷り具合なんてどうでもいいかもしれないが、気になる。印刷物を作る側でしたから。
 校正は見られないので「どう刷られてもOKなデータ」を渡したい。となるとプロ向け一眼レフで撮らなきゃダメかなぁ、と不安だった。
 気分の問題もある。
 プロでなく料金ももらわない、お手伝いカメラマンだと了解されているが、小さいカメラを出して撮ろうとすると「そんなので撮るんですか」という、気まずい雰囲気になる。乗ったクルマや服装で人品を見られるのと同じで、しかたないとは思うけれど。

 だからってプロ用のカメラや照明機材を使っても、技術や写りぐあいが向上するはずがない。わたしには投資額が大きすぎるし、機材に使った額を稼げるわけでもない。無理して買ったプロ向けの機材を趣味で使う気もない。

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 とりあえず、写りかたが歴然と違うかどうか確かめようと、最近何度か、プロ向けのフルサイズ一眼レフとレンズ一式を借り、撮ることを頼まれた撮影で使った。カメラはキヤノン EOS 5D Mark IV だ。
 いやぁ写る写る。
 フィルム一眼レフは使ったことがあるし、ファインダーをのぞいて撮る世代だから、やっぱりプロ用一眼レフを使わなくちゃいけないんだな、そういうカメラを使えばどんな撮影でも楽勝だ。
 となるはずだったが、撮った写真を見ていると、どうもおかしい。
 ポイ捨てするしかない「完全失敗」のカットはたしかに少ない。しかし小型カメラで撮っていたときには確実にあった、失敗コマも多いけど、このカットはうまくいった、これがあればOKだという「頼みの一枚」が撮れていない!
 なので、直近の行事撮影では 5D Mark IV は使わず G1X MarkUにして、夜の撮影もあったから、引退させた初代G1Xに再登板願い、X接点アダプタとケーブルで光量が大きい他社ストロボを装着、そちらを暗所専用にした。それで必要な写真は撮りきることができた。

200210c2.JPG 
Cyber-shot DSC-RX1
同じ角度で撮ってみると、2つのカメラは似て見える

 もっとも、わたしが頼まれて撮るときは「これでいいのだ」的な「OK」になっている。
 依頼元が期待することを大きくカバーできていればよくて、自分で細かくチェックすると失敗して足りない面があっても、必要十分であればいいのだ。もちろんワンシーンもゆるがせにできない撮影ならプロを呼べばいいわけだが、「OK」をもらっているのは、ややズルい。

 ズルいというのは、写真はワンチャンス、失敗厳禁、という感覚が自分にあるから。
 自分でポーズをつけて撮れるモデルの場合も、照明などを自分で調整できる静物の場合も。
 ニュースの現場で写す特ダネ写真とか、アンリ・カルティエ=ブレッソンのキャッチフレーズだった「決定的瞬間」こそがほんとうの写真だ、といっているのではまったくない。
 どちらも、一枚のベストカットを得るために何枚も「失敗写真」を撮って捨てている。時代の瞬間を切り取ったワンショットなんて、ウソだからだ。

 さして目的がなく、情緒も感情もない、ぼんやりした視線を瞬間的に氷結させ、石や骨の銘板のような重たい存在に固めるのが、写真の本当の役割なのではないかと思っている。
 百枚の写真を連続的に写したとしても、撮り集めた時間はせいぜい一秒かそこらだ。しかしその薄氷のような時間の切れ端に、どれほど重さがあるかを告げるのが、写真の本当の役割ではないか、とも──。

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 いま名前を出した、スナップ撮影の名手としてあまりに有名なカルティエ=ブレッソンのコンタクトシート、とはフィルム一本分のネガを印画紙一枚に密着焼きした、写真プリント店で出力できるサムネイルシートみたいなものだが、それと「和製カルティエ=ブレッソン」ともいわれ、市井の生活実感をみごとにスナップした巨匠、木村伊兵衛のコンタクトを見比べると、驚くほど大きな違いがある。

 カルティエ=ブレッソンは、「決定的瞬間」を得るため、かなり執拗に被写体を追い続けることが多い。失敗が連続して、突然そのシーンが途切れている場合など、本人の舌打ちが聞こえてきそうなほどだ。
 いっぽう、木村のスナップ写真は、発表された写真はたしかにカルティエ=ブレッソンに似ている面があるように思うが、コンタクトシートを見て、そのシャッターのきり方を追ってみると、奇妙に感じるほどカルティエ=ブレッソンとは違っている。

 木村伊兵衛の名作として知られる写真の、前後のコマを見るとわかりやすいのだが、同じ場面をほとんど写していない場合が多いのだ。いい場面に出くわしたから、いい写真にしてやろうと、何度もシャッターを切った形跡が、みごとなまでにない。
 どういうことかというと、そもそも、そういう写真の撮りかたをしていなかったということだ。
 木村が目的写真≠撮った場合にも、興味深いことがうかがえる。雑誌などの仕事で撮影したフィルムのコンタクトシートを見ると、たまに、ひどく奇妙な写真の撮りかたをしている場合がある。
 仕事の最後に使って撮り余したフィルムをカメラから抜かず、帰り道に写したのか、残り部分に、撮ることじたい無意味としか思えない近隣の様子が写っていたりするのだ。昭和の終わりから平成のはじめ、フィルムカメラ爛熟時代のプロカメラマンで、そういうケジメのない(笑)ことをする人に出会ったことがなく、いったい木村伊兵衛という人は、どういう気持ちで写真にかかわっていたのか、惑わされてしまう。

 写真の鑑賞者だったころ、木村伊兵衛という写真家のことは、正直いってよくわからなかった。
 いまも、明晰な言葉で解釈したり説明しようとするのはむずかしく、ムリにやるとウソになる気がする。
 しかし写真を鑑賞することをやめ、自分で撮ってみるようになってからは、無意識のうちに、木村伊兵衛にもっとも影響を受けているような気もする。(ケ)


【追記】

 G1X MarkUの動作にわずかに不安を感じたので、点検に出すことにし、東京・新宿に用事があるから持って行ってあげる、という友だちに託した。
「キヤノンサービスセンター新宿」は二〇一七年末で閉鎖。二〇二〇年二月現在、サービスセンターは銀座のみ。品川のキヤノンプラザに修理受付コーナーはあるが、引取は宅配(宅配料が必要)となる。
 また同現在、キヤノンではコンパクトデジタルカメラの点検は受け付けておらず、すべて修理扱いとなる。修理するなら料金は二万七千五百円+部品代(どんな状態でも)。
 G1X MarkUの場合「らくらく買替便」を使うと、新品が四万五千九百八十円で買える。キヤノンでは「修理よりもだんぜんおすすめ」と、その他諸製品でも「らくらく買替便」を推奨している。
 なんだか、G1X MarkUを使って頼まれた撮影を熱心にしたり、撮影とは何かと考えたりするのが、バカらしくなってきた。


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posted by 冬の夢 at 00:59 | Comment(0) | 写真 カメラ・写真家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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