2020年01月03日

段ボールごみのかたづけと映画『イコライザー』

 住んでいる集合住宅のゴミ置き場の、段ボールごみをかたづけるようになった。去年秋ごろから。
 四〇世帯ほどが入居する低層住宅。ゴミは分別し集積所に置くと、通いのお掃除のオバチャンが取りまとめ、収集日に出してくれる方式。

 年初早々、ツマラナイ話でスミマセン。

 数年前の、この住宅の新築時から住んでいて、いつしかオバチャンと顔なじみになり、掃除中に会うと世間話をしたり、まれに家具など大きい粗大ゴミを運ぶのを手伝ったり。
 ある日、オバチャンがボソっと言った。
「近ごろの人の、する事なす事、なに考えてるのか、わからないわ」と。

 入居当初から、住人のさまざまなマナーが良くないのは気づいていたが、オバチャンにいわれゴミ置き場をあらためて見ると、たしかにひどかった。
 高級マンションではないが、低所得者向けではない。駐車場には外車も停められている。が、ゴミ置き場は、誰がどう見てもクソ溜め状態だった。置き場の入り口から奥へ向かって投げ込むらしい。の横行は当然、いちじはも跋扈したという。そのせいで「投げ込み」もひどくなったのだろう。

 生ゴミの話はこれ以上したくないからやめるが、紙類、とくに段ボールも同様だ。箱はこわして板状にし、段ボール置き場に立てるようになっているが、そうする住人は少なく、空箱がうず高く積み上げられるまま。すべて通販、ということをいまさら知り、多くはない世帯数から出てくる段ボールの数や大きさに驚いた。
 掃除のオバチャンは、各種ゴミの惨状を、状況によっては分別し直して収集所へ運ぶことに加え、段ボールの空箱を壊し、まとめ直し回収に出すという、余計な手間を強いられていた。昨今の人手不足でか、オバチャンは一人で二棟、べつべつの集積所を片付けなければならない。

 管理会社は去年暮れごろから、戸別訪問で居住マナーも含め「お願い」に回っているらしい。しかし、改まるケハイはない。
 ヨソの高級タワーマンションで実際あったと聞いた話だが、管理や警備を担当するスタッフの姿を見たことがないという理由だけで──その「タワマン」では24時間シフト勤務──「やるべき仕事をしていない」とキレた住人がいたという。ウチの住宅でも、ゴミはゴミ置き場に置いたら、あとはオバチャンの仕事! と誰もが思っているんだろうな。
 それはしかたないとして、「わからないわ」とオバチャンに繰り返し嘆息されて、疲れて情緒不安定ぎみなのではないかと、心配になってしまった。
 そこで、自分が捨てに行ったときだけ、段ボール捨て場が荒れていたらかたづけることにした。

 実はその作業、意外に自分に向いていて苦にならない。
 アントワヌ・フークアのアクション映画『イコライザー』でデンゼル・ワシントンが演じる、アタマの中にイメージしたマニュアル通りに敵を手際よく秒殺する元CIA工作員と、同じ性癖がわたしにはある。
 いや、殺しじゃなくて、整理フリーク。「整理」というより、平行垂直依存症、かな。持ちものを最小限にし、かつ、歪みなくピタリと合わせて置く癖だ。
 映画『イコライザー』でいうと、毎夜、同じダイナーの同じ席で読書し、コーヒーカップやスプーンの起き位置は同じ。読んでいる本を置くときは、ダイナーのテーブルの辺に合わせてピタリと……続編『イコライザー2』でも、ピッタピタに本が並べられた書棚が出てくる。そして、めぼしい持ちものは本しかない。
 それらの本は話中に登場する。ヘッセ、プルースト、セルバンテス、ヘミングウェイや、名作だけでなくベストセラーものらしい本(黒人作家の著書)など。そう、この男は、亡くなった妻が──妻の死が汚れ仕事から引退した理由でもあった──死ぬまでに読むべきよといった百冊の本を几帳面に順番に読んでいる「読書人」でもある。

 シリーズタイトルの『イコライザー』(The Equalizer)は、主人公の性癖とかけて、不正を正し世の中に平滑・均衡をもたらす者、という意味になっているわけだが、音楽やオーディオに興味がある場合、音質調整機器の「イコライザー」を連想すると、わかりやすい。
 マシンとしてのイコライザーは、周波数の不均衡やクセを修正し音質を良好に均一化する機器だが、そのためには設定を微細に動かして周波数を追い込む、こだわりが必要だ。
 それが「イコライジング」だが、逆に不均衡に設定して高低音を強調したりする「ブースト」も可能だ。デンゼル・ワシントンが悪に殺しという不均衡を下すときは、その設定にしている──もとのバランスに戻すために──というわけだ。

 話がマニアックになってしまったが、その「イコライジング」つまり平滑化を、わたしは未整理の段ボール箱ごみに下している、というわけ。
 はじめのうちは、若干の悪態をつきながらやっていたが、そのうち、掃除のオバチャンが悩んでいるような、誰がなぜムチャな捨てかたをするか、など、どうでもよくなった。
 もちろん多少「イコライジング」したからって、捨てかたが改善されるきざしはないが──多少よくなったかな──それもどうでもいい。オバチャンの身になって捨ててください、という希望もない。そのうち、自室の読みかけ本の「積ん読」も、なおさらきっちり揃えて積むようになった。積み直しているヒマがあったら読めよ。

 なぜ、そんな「イコライジング」を行動にうつすようになってしまったか。その理由は、かんたんだ。
 世界中が、とてつもなく不安定で不均衡だから。近隣では誰もそう思っていないらしいが、日本も、もちろん例外ではない。(ケ)

200105e1.JPG 200105e2.JPG 
『イコライザー』2014 公式トレイラーは→こちら←
 『イコライザー2』2018 公式トレイラーは→こちら←

G:Gokiburi D:Dobunezumi

Originally Uploaded on Jan. 05, 2020
 

posted by 冬の夢 at 00:05 | Comment(0) | 映画 洋画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く:ペンネーム可・アドレスは表示されません
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: