2019年11月16日

たまには詩でも #11

(本当はずっと前から「夜の千切れ雲」の第二作を載せたいと思っているのだけど、肝心の「小説もどき」がちっとも完成しない。仕方ないので--というわけでもないけれど--、その代わりに懲りもせずに「詩もどき」を一つ。)


夜、いやむしろ深夜と言うべき時間
善男善女の面々ならとっくの昔に大人しく床に就いているはずの時刻
独りお風呂で水を使うと
昔からいつも人の話し声が聞こえた

子どもの頃はそれが幽霊やお化けを思わせ
怖くて怖くて仕方なかった
だから馴染みのない他人の家でお風呂を使うのは凄く嫌だった

少し大きくなると
水のはねる音やぶつかる音は
現代音楽のようにも聞こえ
もうお化けに怯えることはなくなった
それにいつの間にか幽霊は霊に昇格し
恐怖の対象ではなくなっていた

ところが今度は
静まりかえったお風呂の中だけでなく
水の流れるところならどこでも人の声が聞こえるようになってしまった
ひそひそ密談したり
ケラケラ笑ってみたり
突然ふっと声を顰めたりもするが
水のおしゃべりは止まらない

自分でも当惑するのは
例えば旅先の温泉で髪を洗っているときに
不意に誰かに呼ばれた気がして
思わず振り返ってしまうようなときだ

そんなとき
自分はもしかしたら気が狂いかけているのかもしれないと思う

(H.H.)
posted by 冬の夢 at 02:20 | Comment(1) | 創作(詩・小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 ゲゲゲ詩いいですね。
 本当にそんな出来事があったかどうか不明ですが、彫刻家ミケランジェロが弟子と散歩していて、路傍の石を見て、この中に天使、女神かな、いるといって、運び帰らせて素晴らしい像を彫ったと。たしかそういうエピソード。
 そのときミケランジェロは、石を見て自分のイデアを喚起されたのか、それとも、その石の中に「ゲゲゲ」がいるのを察知したのか。
Posted by (ケ) at 2019年11月16日 10:04
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