2019年09月23日

ラグビーワールドカップ2019 〜 決勝予想はニュージーランド対アイルランド

 ラグビーワールドカップが始まった。日本が南アフリカに勝ってしまったイングランド大会からはや四年。光陰矢の如し。これから先にワールドカップを見られる回数は、今まで見てきた回数に及ばないのだろう。惜しむような気持ちで待ちわびていた開幕だ。

 日本対ロシアの開幕戦を皮切りに始まった予選プールの試合は粒揃い。特にニュージーランド対南アフリカ、アイルランド(※)対スコットランドの二試合は準決勝あたりで見たい強豪同士のぶつかり合い。期待を膨らませながらのTV観戦と相成った。
 そしてその膨らんだ期待を軽く一蹴したうえで、ラグビーの現在進行型モデルを指し示してくれたのが、ニュージーランドと南アフリカの一戦。これが決勝戦だったとしても不思議がないほどのハイレベルな好ゲームだった。

 序盤は南アフリカの攻めをニュージーランドが受ける形。しかしニュージーランドは単なる受け身ではない。守っていてもいつでも攻撃に転じられることに一意専心。南アフリカのほんのひとつのミスを見逃さずに強襲。奪った最初のトライは南アフリカのアタック中に起きたハンドリングミスからのターンオーバーを起点としたものだった。敵のミスをトライに結びつけてしまうのがニュージーランドの抜け目のなさ。だからこその受け身なのである。
 しかし南アフリカもただでは起きない。後半、攻めを意識し過ぎたニュージーランドの防御網。ラック前方が手薄になったところを南アフリカのフランカーが難なく突破してトライ。さらにたたみ込むようにしての攻撃が続く。左に展開すると見せかけて、中央にいたスタンドオフにパスを戻しての意表を突いたドロップゴール。これで4点差に追い上げる。しかし、さすがに60分過ぎからはニュージーランドがペナルティキックを二本決めて、南アフリカを突き放し、23対13で接戦を制したのだった。

 ワールドカップが始まって以来、全大会に出場しているニュージーランドの戦績は44勝6敗。この恐るべき勝率に立ち向かうのはどの国か?その答えがアイルランド対スコットランド戦にあった。
 個人的に言えば、これまでのアイルランドは際立った特徴に欠ける小粒な印象しかない。世界ランキング1位と言われてもピンと来ず、スコットランド戦はこれまでに両国が繰り広げてきた肉弾戦の果てにスタミナ切れでアイルランド惜敗という先入観しか持ち得なかった。
 ところがところが。この試合を見てアイルランドの強さにぶったまげてしまった。強さの元はディフェンスの堅牢さ。スコットランドがラックサイドを突いてもバックスに展開してもゲインラインを突破出来ない。それはアイルランドの防御網に見事なほど穴がないから。スコットランドの選手が果敢に挑んでも強靭なタックルに見舞われ地面に叩きつけられる。さらにアイルランドはタックルしてもすぐに立ち上がってディフェンスラインに戻る。スコットランドは攻撃に人数をかけているので、必然的にアイルランドの防御陣の方が常に数的有利を保っていた。
 スコットランドが本調子でなかったせいもあるだろう。ノックオンやパスミスが散見され、そのたびにアイルランドが大きく陣地を進める。スコットランド陣22メートルラインを超えたらあとは簡単。ブレイクダウンでボールを奪われることなくフェーズを重ねてジワリと前進。低い姿勢でタックラーを弾き飛ばしてインゴールに潜り込んでトライだ。

 ミスにつけ込むニュージーランドとタフなディフェンスを継続するアイルランド。この一戦をぜひ日本で見てみたい(もちろんチケットは入手不可能なのでTV観戦ですが)。両チームが予選プールを1位で通過して決勝トーナメントを勝ち上がれば、その対決は決勝戦で実現される。現時点でのワールドカップにおける最高のタイトルマッチになることだろう。

 さて、日本代表は大会初戦となるロシア戦を30対10のスコアで勝利した。前大会が始まる前までは、勝利はわずかジンバブエ戦の1勝のみという体たらくであったのだから、「勝って当然」の試合を勝ち切ったのは誠に喜ばしいことだ。
けれどもニュージーランドとアイルランドの勝ちっぷりと比較すると、なんともぬるくてたるい勝ち方でしかなく、とてもベスト8に進むべきチームには見えない。
 前回大会での日本の躍進には五つのポイントがあった。

 @ハンドリングミスをしない
 Aスクラムとラインアウトでマイボールを保持
 Bタックルを決める
 Cブレイクダウンで反則しない
 Dキックを互角に蹴り合える

 ところが初戦のロシア戦は、どれも今ひとつピリッとしなかった。誰もが緊張し過ぎていたせいか、特にハンドリングミスは目を覆うばかり。ロシアが蹴ったキックをしっかりキャッチ出来ていなかったし、パスミスも多かった。タックルも決まってはいたが、一発必中は少なかった。ロシアだからワントライで済んだのであって、ニュージーランドクラスの対戦相手ならあっという間に50点くらい取られていただろう。
 次戦は最強のアイルランド。ロシア戦のような状況なら、たぶんコテンパンにやられるだろう。いや、五つのポイントを完璧にこなしたうえでベストを出し尽くしても、世界をあっと言わせた南アフリカ戦のようなアップセットは200%ないはず。しかしスコットランドがアイルランドに負けたほどにやられなければ、善戦が見えてくる。狙いは7点差以内に食らいついて、負けてもボーナスポイント1を獲得すること。予選プールAの1位はアイルランドで決定同然だから、2位に入るにはスコットランドを超えなければならない。そして、今大会のスコットランドならそれは不可能ではないかも知れない。

 まだ始まったばかりだけれども、以下はラグビーワールドカップ日本大会雑感。

 ■スタジアムが美しく見える。
 TVを通じて見るとスタジアムはどれも見栄えがする。普段Jリーグやプロ野球で見慣れているスタジアムなのにワールドカップでは美しさが際立つ。何が要因かと言えば、色彩ではないか。広告看板が排除されていること。各スタジアムで統一された装飾が施されていること。そして芝生の緑。いつもより照明が明るく設定されているという説もあるらしいから、明度も関係しているかもしれない。特に今までのところでは、観客席が球技場仕様にせり出した札幌ドームの美しさが目を惹く。本来は野球場だから、かえって形状に歪みが出て近未来的な造形に見える。

 ■横浜の芝生は大丈夫か。
 運営コストの関係なのか、予選プールごとに試合会場を同じにしているのか、ひとつのスタジアムで続けて複数の試合を開催して、間を置くようなスケジュールになっている。たぶんスタジアムの芝生の状態を維持するための措置なのだろう。それにしても横浜国際競技場の芝生はたった二試合が行われただけなのに荒れ方がひどい。決勝戦は横浜が舞台。激しいスクラムやタックルに、荒れた芝生が水を差すようなことにならないか。秋到来で涼しくなれば、芝生の根の張り方も変わってくるかも知れないが。

 ■イングランドのユニフォームの白。
 各国のユニフォームを見ていると、最近は原点回帰してきているようで、中でもイングランドのユニフォームの白さがシンプルで素晴らしい。一時期、肩にラインを入れたりして、そのシンプルさが台無しになっていた。今大会では、シャツの襟と裾にほんの少しだけデザインが入っているが、ほぼ真っ白で胸には赤いバラ。見ているだけでホレボレする。
それに引き換え我が日本代表の桜のジャージーはますます醜くなってきた。赤いキャタピラ柄に金色のトリミング。横縞ならばアルゼンチンの白と水色のトラディショナルな均整さを見習ってほしい。さらには栄養ドリンクの商品名。長年ラグビーを支援してきた企業姿勢には感服するが、ユニフォームに文字を入れることへの反感の大きさに気づいてほしい。

 ■日本テレビは「声なし」にしてほしい。
 スポーツ中継に限ってはNHKの右に出るものはいない。特にラグビーは年季の入り方が違う。かたや日テレは野球中継専門局だから、アナウンサーの絶叫調と特定選手のスター扱いは聴くに耐えない。おまけに解説に起用されている元ラグビー選手たちの話の引き出し方が下手すぎる。みんな一流のプレイヤーたちなのに知性がないように見えてしまう。滅多にない好ゲームのニュージーランド対南アフリカ戦でも誰一人ひとりとして南アフリカの良質なプレーに目を向けない。せめてアナウンサーなし・解説なしで歓声だけの副音声モードを設定してほしい。

 ■わかりにくいスクラムのレフェリング。
 TV観戦していると反則のたびにレフリーが下したジャッジがテロップで表示される。その中で「オフフィート」というペナルティの呼び方はこれまであまり聞かなかった。調べてみると、ラグビーの根本に関わる反則で、「ボールを前に投げないこと」と並んで「立ってプレーすること」がラグビーの二大原則。前に投げるのが「スローフォワード」だとすると「オフフィート」は立っていない状態でボールに関与すること。ラック内の反則にオフフィートが加わってわかりやすくなった(とは言っても「ハンド」との違いは不明だが)。
かたやわかりにくいのはスクラムでの反則。スクラムが潰れるとどちらかのチームに「コラプシング」や「イリーガルスクラム」などが告げられる。この反則がどのようにしてジャッジされるのかがよくわからない。たぶんプロップの肩や腕の組み方と力の掛け方の問題なのだろう。しかし選手たちはあくまで押すプレーをしているのであって、「潰す」動きには見えない。スクラムの安全性を確保するためのレフェリングとは言え、勝敗を決する場面においてはチームも観客も納得出来るジャッジが可能なのか甚だ疑問である。

 雑感と言いながら、愚痴のようになってしまった。歳を取るとついついくどくどと不平不満を述べてしまう。四年に一度の祭典が、日本で行われている僥倖をまず喜ぶ気持ちに切り替えよう。その中で日本代表にはエキサイティングでワンダフルな好試合を期待したい。そして、次の記事では「日本代表のベスト8進出を喜ぶ」というタイトルを掲げたいものである。(き)


ラグビー01.jpgラグビー02.jpg


(※)EU離脱問題の渦中にある英国であるが、アイルランドラグビー協会(IRFU)の歴史は、アイルランドがアイルランド共和国と英国北アイルランドに分断される以前に遡る。よってラグビーの世界においてはアイルランド代表は国境を越えてアイルランド島全土から選出されている。



posted by 冬の夢 at 22:28 | Comment(3) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日本チーム、やりましたね! アイルランドに勝つなんて、快挙の一言。ぼくも今年のアイルランドは滅茶苦茶強いと思っていたし、ぜひ優勝してもらいたいと蔭ながら応援しているのだけど、まさか勝ってしまうとは! 素晴らしかった点はいくつもあると思うけど、反則をしなかったことは、感心を軽く通り越して、感動も通り越して、言葉もないくらい。一番印象的だったシーンは、後半逆転してからアイルランドに攻め込まれていたとき、どの選手かは不明だけど(稲垣だったか?)、たまたまオフサイドの位置にいたその日本選手の目の前にアイルランドのラックの中からボールがポロリと転げ出たとき、アナウンサーも一瞬「チャンス!」みたいな実況をしているのに(そして、正直に言うと、見ているぼくも一瞬そう思ったのだが)、その選手は、ほんの少しだけ反応したようだけど、見事に踏みとどまって、そのボールに触らず、みすみすオフサイドの反則を犯さずに済ましていた。解説も「よく我慢しましたね」と感心していたけれど、本当にそう。凄く単純なことだけど、咄嗟のときにあの判断ができるために、いったいどれだけの練習と(失敗)を重ねたことか。いやー、良いものを見せてもらいました。

今夜(30日)のスコットランド=サモア戦、暑くなりそうで、スコットランドには気の毒な感じだけど、これも良い試合を期待しているところ。

ところで、スクラムの中の反則について、ぼくもほぼ「き」さんと同感ですが、おそらくラインアウトなどと同じで、昔(20〜30年くらい前)と少しルールが変わったのではないかと推測しています。つまり、「スクラムを崩したら=スクラムが崩れたら、基本的にどちらかに反則がある」ということになっているのでは? というのは、スクラムは正々堂々と力比べをするべきで、押されたときに「これはマズい!」と思ったがために、変な動きをすると、即反則。押す方も斜めから押したりしたら(つまり、前列の3人が意思統一して真っ直ぐに押さないと)即反則。つまり、「真っ直ぐ力比べするように。押されたときも、我慢しなさい」ということなのでは、と理解しています。長文コメント、ご容赦。
Posted by H.H. at 2019年09月30日 14:50
日本とアイルランドのペナルティ数は6:9。特に日本は自陣で反則しなかったので、アイルランドのペナルティキックはゼロでした。これも日本の勝因のひとつだったと思います。

スクラムについてはほとんど特殊技能の世界なんでしょうね。NHKで解説者をやっている五郎丸選手がフォワードのことを聞かれて「全く興味がない」的な感想を述べて大笑いしました。
Posted by (き) at 2019年10月01日 13:25
かつての名スクラムハーフと言ってもいい、明治大学やサントリーで活躍した永友氏(チョロQ!)も解説で「スクラムの中では色々と駆け引きが繰り広げられていると聞くけど、全然わからない」と言っていた。一番近くで見ていたはずの人間でもわからないのだから、こればかりは当事者しかわからないんでしょうね。でも、当事者同士は分かり合っているってのが、いっそう不思議。スクラムを組んだ敵味方はお互いに「今日はオレ達の勝ち(負け)」みたいに感じているんでしょうからね。
Posted by H.H. at 2019年10月01日 14:36
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