2019年04月11日

FX-AUDIO DAC-X5J+ (D/Aコンバーター+ヘッドフォンアンプ)で聴いてみると…

 DAC(デジタル・アナログ・コンバーター)+ヘッドホンアンプ、というオーディオ機器を買いました。

 あるロックバンドの再発CDを聴き直すことにしたから。かなり前に大きな改変と音質アップを施した四〇周年記念盤が発売されていたことを、ごく最近知った。
 初めて聴いたのは、発売後二年ほどの一九七七年ごろか。
 内容に比べ音がよくないレコードとしても知られていたが、CD二枚組になった再発盤には、最新のリマスターと、二十一世紀になってようやく数度されたリマスターのすべて、そして発売当時のアナログLPから起こした音源も収録されているという。
 これは、居ずまいを正し、できる限りデカい音で聴かねばならんと思った。できる範囲で、聴く環境の音質アップもしたい。
 それが、ひさびさにオーディオ機器を買った理由だ。
 といっても、装置を一新できるような予算など、どこにもない。
 今回投入した金額は、総額七〇〇〇円ほど。 ※写真説明参照
 なのに、驚きの結果が出た。

       *

 ここ四〜五年は、パソコンの外付けドライブやポータブルCDプレーヤーなどを使うだけ。直(じか)聴きというのだろうか、ヘッドホンジャックに小型ヘッドホン。ハイファイどころではない。
 友だちの持ちもの、Bang & Olfsen を聴かせてもらうこともあるが、オーディオマニア向けの装置ではないし、遠慮してデカい音では鳴らさない。
 以前は、さまざまな音楽を追いかけ、新譜も旧盤もなくCDを買って聴きまくったけれど、いまは音楽を熱心には聴かなくなくなった。
 事情もあるが、かつて自宅で使った機器はみな、しまい込んだままだ。
 
 そこに現れた、生まれ変わった思い出の名盤。
 そして、これまた近年登場して話題の、部品代のような価格で最高級オーディオにも負けない音だという機器。
 現状がショボいだけに、ひさびさに興奮できそうだと、気がはやった。

       *

 接続はあっという間に完了、いままで使っていたヘッドホンで聴くと、たしかに驚かされた。
 ただ、その音で「よい」のかどうかは、正直なところよくわからない。

 というのも、あまりに音が「よくなりすぎ」て──あえて「よい」という表現にするが──演奏の微細部まで聴きとれ、演奏の緊迫感が格段にアップ、ますます「居ずまいを正し、できる限りデカい音で聴かねばなら」なくなったからだ。「ながら聴き」ができなくなってしまったのである。
 もっとも四十年前にレコードやカセットテープでこの盤を聴いた当時は、ステレオやラジカセの前に正座するほどの気持ちで聴いたから、それはそれでいいけれど。

       *

 ここまで読んでいるかたに説明は不要だろうが、DAC+ヘッドホンアンプとは何をするものか。
 DACは、CDプレーヤーが盤から読み取ったり、パソコンの音声ファイルに収められたりしているデジタル信号を、アナログ信号に変換する。
 ヘッドホンアンプは、そのアナログ信号を増幅しヘッドホンで聴けるようにするのだ。ちなみにこのモデルにはヘッドホン用のボリュームをバイパスしてオーディオアンプへ出力する、ラインアウト端子もついている。
 パソコンやCDプレーヤーにもヘッドホン端子があってそのまま聴けるが、じつはそれらの内部にも、まったく同じ仕組みが装備されている。そこを独立させ機能に特化した機器、ということだ。各機器内蔵のDACやアンプを経由しない接続──USBか光か同軸──で使うようになっている。

 たとえば一台が百万円以上するような超高級CDプレーヤーなら、本体内蔵のDACやヘッドホンアンプにも高級部品が使われているだろうが、ポータブルCDプレーヤーあるいはパソコンの場合は、とうぜん簡易なものしか搭載されていない。
 またパソコンは本体の中が雑音だらけで悪影響がひどいし、CDプレーヤーについても、最高級オーディオ機器の世界ではDACの別置は昔から重視されていて、盤を回す機構部(トランスポート)と信号変換部(DAC)に分離した機器もあった。

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FX-AUDIO- DAC-X5J+  ハイレゾ対応 D/Aコンバーター&ヘッドフォンアンプ
30×75×107ミリ・200g 5980円 
※本文中の「総額」は通販でACアダプタともに購入した額です。

 で、このほど買ったのは、低価格でDACとヘッドホンアンプが手のひらサイズにまとまったもの。オーディオマニアは「中華」といっている中国製品だ。日本の会社が自社ブランドとして開発・販売しているモデルである。
「中華」という表現には明らかに蔑視が入っていて、イヤないいかただ。十年ほど前からか、さまざまな中国製デジタルオーディオアンプ──正確にはスイッチング(D級)アンプ──が、爆安価格にクリアな音質で、つぎつぎに上陸、オーディオマニアの間で激論の対象になったと思うが──追いかけていなかったのでくわしくは知らない──どのような「結論」が出ているのだろう。いまだに「中華」といわれているからには、揶揄の対象なのだろうか。

・あっけないほど低価格でハイファイが実現。オーディオへの巨額投資は大損でしかない。
・最初の出音でびっくりさせるだけのパチモノ。性能はよくなく豊かな表現力もない、値段相応のもの。

 通販感想などを拾い読みすると、この両極ばかりで確たる結論はないようだ。議論になっていない言い合いも多く、いまひとつ理解できない。

 じゃ、お前が聴いた感想はどうなの、と尋ねられると、じつは書くのがえらく難しい。
 オーディオマニアというのは、つくづくいい加減なもので、うらやましいくらいだ。
 というのも、聞く音楽も、よいと思う演奏も、それを「こう聞きたい」という音の目標も、聞いている部屋も──「音は部屋しだい」だと思う──まったく設定も共有もせずに議論できてしまうのだから。
 まあ「個人の感想です」というやつを、だらだら言い合っているぶんには「ヒマですね」ですむが、理工系な術語をかざして──あたかも客観的であるかのように──攻撃に出たり、ひどい場合には議論相手の人格を貶めたり。

 待てよ、オーディオに関して、そういうことをしたことはないつもりだけど、他のジャンルでは自分でもやっているのではないかな、それって(爆)。
 思わず反省し、ますます書けなくなったが、できるかぎり前提を書くので、そこを「共有」していただいて、「中華」DAC+ヘッドホンアンプの初体験感想といこう。

       *

 まず、わたしが自宅の再生装置で聞きたい音は、このふたつ。どう工夫しても聞けないに違いないとも思う音だが。

(1)演奏者が聴いてOKを出した音。
(2)実演の鑑賞者として自分が経験し楽しかった音。


(1)は、自分が演奏者自身であるか制作関係者なら可能──制作中のスタジオなり、演奏者がOKテイクを聴いたのと同じ装置なりで──だけれど、その経験はいちどもないので、音の目標そのものがわからない。それだけに、いちどは聴いてみたいものだ。録音スタジオで仕事したことがないわけではないが、セリフの収録で、音楽ではなかった。

(2)は、商品としてのライブ盤は、演奏会場で聴衆の誰もにこう聴こえた、というふうには作れるわけがない。ということは、個人宅で「リアルに再現」するのも不可能だ。

 しかし(2)なら、自分の求める感じがはっきりしているぶん、気分を近づけることはできる。実際に観てはいないライブでも、その場にいる気になれるように。
 今回のDAC+ヘッドホンアンプでは、ちょっと怖いほど、それが実現した。断言してもいい。

 で、「正座して」聴きはじめた四〇周年記念盤とは、キング・クリムゾンの『USA』だ(KING CRIMSON USA 40th Aniversary Series / 2013)。

 まず、LPレコード落としの音源から聴いてみた。
 LPも持っているが、再生装置を片付けてしまったので比較はしていない。オーディオマニア連中の雑な論争の批判はできないが、それはそれとして。

 ゲッ、こんなひどい音だったっけ、という感じだ。ずいぶん記憶と違う。
 しばらく聴くとわかるのは、DAC+ヘッドホンアンプのおかげで、いわば「音の拾い出し」が非常によくなって「しまって」いる。メンバーの演奏それぞれが、悪い音なりに聴き取りやすくなり、かつての「音の塊が押してくる」ような、ある意味もっと「ひどい音」で聴いていた記憶──モノラルのラジカセでさえ聴いていた──と違うのはあたりまえだ。
 それにしても違和感があり、「こんなんだったっけ」って感じだ。

 つぎに、この盤のために作られたリマスタリング版。

 ゲッ、こんないい音だったっけ!
 メンバーそれぞれの演奏が、くっきり聴き取れるいっぽう、バンド全体から出る音のキレが激しさを増し、リズムが強烈にシャープに感じる。
 ためしに、これまでの「直聴き」でも聴いてみると、あまりの差に愕然としてしまうほどだ。
 昔は、ライブゆえの弾きかたのヨレで曲がコケそうになっていると感じ、そこでドキドキしていた部分など、そうではなく計算と偶然の「ぎわぎわ」のエキサイトメントを聴き取らなくちゃいけなかったことも了解した。
 そもそも四〇年前は、このテのバンドは日本でのセールス上ことさら「戦慄」だとか「異常」を文学的に付与されていたのだが、キング・クリムゾンについてはあらためて、そういうことを全部とっぱらい、「音楽そのものによる戦慄」へ耽溺すべきなんだと、痛感させられてもしまった。

 それではと、これまでにもよくやっていた裏技、でもないが、音の抜けがいいライブ盤に出会うと、ときどきやっていたことも試してみる。
 ヘッドホンの左右を替えて耳に入れる。つまりジャケット写真などを見てイメージするステージ上の配置と、聴こえる音を逆にするわけ。これをやると、盤によっては自分がステージの上にいる気分になれる場合があるのだ。ことに自分が観たライブの盤だと効果が大きい。

 キング・クリムゾン『USA』に収録された最新音源では、この効果が劇的だ。このメンバーでの実演はもちろん聴いたことがないが、当時のライブの写真を見ながら聴くと、まるで四人に囲まれているかのような錯覚に陥る。
 それにしても一九七〇年代のロック用の楽器って、現代のデジタルキーボードや高出力のステージアンプ、すばらしいドラムキットなどからしたら、アホみたいなひどい音だろうと思うが、なんとホコリっぽく、しかし、なんと美しい芯のある音だろう。

       *

 ふだん、こんなふうに音質や音像がどうこうで音楽を聴いているわけではないが、ついはまってしまい、ことのついでに Bang & Olfsen(Beolab 6000)でも回してみた。持ち主に断り、「太陽と戦慄パートU」を、どデカい音で。
 ううむ。メンバーの中心に座らせてもらって聴く感じとは違う。音の像はしっかり立ち上がっているが、開放感に包まれる感じとでもいうか、逆に曲の攻撃性は減るような……。
 ただ、これはこれで楽しめて聴けるので、もういちどDACとヘッドホンで聴くとエキサイター、オーディオでいうとエンハンサーだろうか、そういうものを「かまして」いるようにも聴こえてしまうようになった。
 この感覚は、さっきあげた「中華論」の二極に、つながるのだと思う。
 こうなると、いま使っている小型ヘッドホンを超高級ヘッドホンに替えたらどうなるんだろうという、よけいな欲望がカマ首をもたげる。早々にDACの接続をはずし、いったん片付けてしまった。

 もともとはキング・クリムゾンの「太陽と戦慄パートU」を聴くと、どんなに元気が出るか、ということを、『USA』四十周年記念盤を聴いて書いてみたかったのだけれど、こんな話になった。

 そういえば、キング・クリムゾンの『ザ・グレート・ディシーヴァー』(KING CRIMSON THE GREAT DECEIVER LIVE 1973-1974)──『USA』と同時期のライブ4枚組ボックスセット──を、値段も見ずに買ったのは、すでに二十五年以上前のこと。
 あのころ、「ジジイになったら、CD店に行って店員のネーチャンをつかまえちゃ『今度のクリムゾンのリマスター盤は前回とどう違うんじゃ』とイジって困らせ、そいで結局、買うんだよね」などと友だちと爆笑していたものだが、まったくその通りのジジイになっている! ただしネーチャン店員がいるようなCD店は、加速度的に消えてしまったが。(ケ)

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KING CRIMSON USA 40th Aniversary Series  2013
わたしのは輸入盤です。
各リミックス、リマスター音源担当者の顔ぶれは微妙に違う。最新の2013年のリミックスにはロバート・フリップが加わり、
マスタリングは、30周年リマスターを担当した技術者と同じ会社の、別のエンジニアが行っている。



posted by 冬の夢 at 01:06 | Comment(0) | 音楽 オーディオ・楽器 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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