2018年06月09日

Lowden F32 (mid - '90s) のリペアについて

 この楽器をメンテナンスすれば、持っている三つのギターすべてのチェックと修理が完了。
 ライブなどで、がっつり弾く機会はもうないと思うが、どの楽器も「おつかれさま」にして、いい状態にして持っていようと。

 エレキギター二台は、さほど迷わず修理店を決めたが、アコースティックギターはエレキの何倍もビビってしまい、決めかねた。
 大きい修理になるかもと予感したせいもある。メーカーが違っても楽器の基本構造は似ているので、どの修理店でも作業は大きく違わないそうだが、エレキギターより繊細だと思うのか、修理がまずいと取り返しがつかなくなるのでは、と悩んだせいだ。

       *

 ローデン Lowden というギターメーカーの来歴は省略。メーカーのウェブサイトがキレイだし、検索でこの文を読むアコースティックギター趣味の人は、わたしの何倍もくわしいはずなので。
 持っているアコースティックギターは、これ一台きり。この楽器だけ弾いてきたが、弾いた感じをいえば特徴の説明になるだろうか。

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 買ったのは、二十年近く前だ。
 このブログに書いた音楽の話は、ロックやジャズがほとんどだが、はるか昔の中学生のころ初めてギターで演奏したのは、日本のフォークだった! 
 人生の汚点だとよほど思ったか、二度と演奏しなくなり、学生時代はアコースティックギターは持っていなかった。
 おとなになると、「アンプラグド」ブームなどアコースティックギター伴奏の音楽がさまざまに増え、自分もジャンジャカ弾いてみたくなった。せっかくなら、いい楽器でライブもやってみたいと。フォーク以外の音楽で!

 そこで、買うなら一生ものの高級ギターだ! と楽器店へ。
 といっても、壮大な予算があったわけでなし、そこまで悲壮になることはなかったが。
 高級といえば、マーティン Martin かギブソン Gibson と、ひとり決めして、ジャラ〜ンと鳴らして気に入ったほうにするつもり。
 そして勇躍、踏み込んだお店に、このローデンがあった。

       **

 アイルランドのギターであることと──北アイルランドで作られてきたので、正しくはイギリスのギター──好きな演奏家のピエール・ベンスーザンの──いまだに、ほんのサワリしか弾けない!──楽器ということは知っていた※1。
 いまの同番号モデルの半額以下だったと思うが、日本で売られ始めたばかりのためか、マーティンやギブソンのように、買い得な中古品はなかった。
 見た目が、クラシックギターふうでジミ。円を組み合わせたような本体は柔和で美しいけれど、ヤワな感じもして、強く弾いたら壊れそうだ。繊細なつま弾き用なのだろうか。ピックガードがなく、自分の弾きかた向きではなさそうだった。アコースティックでは、フォークのジャンジャカしか弾いたことがなかったから。ちぇっ。
 しかし、その店で鳴らしてみたら……やっぱり買っていた。この楽器を。

 北アイルランドは関係ないと思うが、マーティンやギブソンと違い、しみじみ悲しい音がする。
 湿気た暗さでなく、乾いて寂しい感じ。
 細い弦の高音部の共鳴がとても美しいせいだが、エコーがかかりすぎて音がボヤけたカラオケとは違い、すっきりと響く。
 アルペジオの憂愁もすばらしいが、ガシガシと7th、13thのようなコードを弾いても、マーティンやギブソンほどガツンとはしないが、きっちりと力強い。
 使う弦の違いもよくわかる※2。弦を変えると、控えめになったり、固めにもなったり。
 ギターの存在感が薄いようで芯が通っている、といいたいわけだが、なにしろ自分の弾き癖が目立つ。ヘタな指使いや不十分な押さえかたがすべて、通りよく音になって聞こえてしまうのだ。くそ!

       ***

 上手下手はともかく、長年弾いて外でもまれに使い、不具合は起きなかったが、近年さすがに変だと感じつつあった。
 多少の不具合があっても音のうち、と思い、大修理はしたくなかったのだが、音質や演奏に大きくかかわる部分を交換することになった。

 メンテナンスの依頼さきは、まず、北アイルランドの Lowden Guitars 本社にメールで問い合わせた。
 できれば同社の楽器にくわしい、日本のリペア専門店か技術者を紹介してほしいと。
 返答は、現在の日本販売代理店である、有名楽器店へということだった。
 事情でローデンの日本代理店は代わっていて、わたしの楽器は、いま代理店になっているギター店で買ったものではない。
 しかし、本社にすれば当然のガイダンスだと思うから、あっさりその通りにした。指定された楽器店は、正しく仕事をしたと思う。

 結果として、いままで弾けていたことが、弾きづらくなった。
 やや特殊な使いかたをしているので、依頼時に説明したが、伝票には書かれていなかった。修理者には伝わっていないと思う。
 お店の人がその場で修理内容を決め、どんな修理者が、どんな意図でどう作業したかはわからない。仕上がって渡されたとき、説明もなかった。
 二台のエレキギターを修理したときは、修理する本人が楽器を指して悪い状態を説明してくれ、うち一台は作業を見せてくれながらの修理だったから、修理直後は違和感があるが、すぐに、それまでいかに悪い状態で弾いていたか理解できた。

 もっとも、修理が終わった自分の楽器を試し弾きしたり、ついでに売りものを弾かせてもらったりしているうちに、ほとんどアコースティックを弾かなくなっていたせいで、ろくに弾けなくなっていることをを、いまさら思い知った。そのショックのほうが大きくて(笑)、修理できた楽器で、初心者として出直したいと思った。

 事故で十年ほど前から、弦を押さえる手に力が入らない。
 押さえるのも、弦を押し上げて音程を変える「チョーキング」も、思うようにいかず、エクストラライトゲージの弦を半音下げるという、音質的にはあまり、お奨めできない「特殊な使いかた」をしている。それでも弾きかたがぎこちない。
 なので、そもそも思うように弾けないのだから、しかたないな……。

       ****

 帰途、修理を終えた楽器のはいったケースを持ったまま、ほかの店ものぞいてみた。
 あるお店の人に「それはローデンですか」と、声をかけられた。年輩の、職人ふうの厚手のエプロンをした、最近の若いショップスタッフにはいない「懐かしい」タイプの人だ。
 自分のケースに「Lowden」のロゴがついているので、そのお店の高級楽器をもう一台どうですかと奨められるのかと思ったら、その人は、わたしがこの楽器を買った店で、ローデンのギターを担当していたという人。ローデンの修理経験もある、ギター修理のエキスパートだった。

 Lowden Guitars には紆余曲折があり、わたしの持っているギターと、いまの同型番モデルは、形も方向性も違っている。その方向性の違いや、わたしの楽器の時代の特徴などを教えてもらい、わたしの楽器全体のチェックまでしてくれた。

 曇り気味の気持ちがすこし晴れ、帰宅してみると、まったく別件で、自分がめずらしくかなり大きく、人のお役に立てた感謝の知らせが届いていた。
 ついでにギターを美しく弾き鳴らせたら最高だが、やっぱり思うようには弾けなかった。

 本来の販売修理担当者に出会えたり、人から感謝されたりした一日は、このギターがもたらしてくれた。
 その楽器を存分に鳴らしてやれない自分がふがいなく、この楽器を弾きこなして音楽ができる人に譲ったほうが、とふと思ったけれど、せっかくだから「ふがいなく」、この楽器とつきあっていきたい。(ケ)。
 
*続編もあります→こちら←

※1 ベンスーザンの公式Youtubeアカウントで「Le voyage pour l'Irlande」が聴ける。www.youtube.com/watch?v=luWveym90uE
※2 細かい話ですみませんが、D'Addario Phosphor Bronze Wound Light Gauge .012 - .053 で弾いていたときの話。現在は同じ弦の Extra Light Gauge .010-.047 を半音下げて使っています。一九九〇年ごろのローデンギターは、出荷時この D'Addario (Phosphor でないやつ)がセットされていたはず。現行機種の推奨弦は Elixir と聞きましたが、確認はしておらず、使ったことはないです。
※  二〇二一年六月二〇日、文のつながりのみ、直しました。管理用
posted by 冬の夢 at 02:36 | Comment(0) | 音楽 オーディオ・楽器 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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