2018年03月15日

Little Village − Solar Sex panel 元気が出る曲のことを書こう[38]

I'm goin' out and get me some sun
 外へ出るぜ ちょいと太陽を拝ませてくれよ
Gonna collect it baby
 集光するってわけさ
Then we can have a whole lot of fun
 そうすりゃ最高に楽しめるぜ
Gonna reflect it baby
 ピカっと反射させてね
That fossil fuel's got no renewal
 化石燃料は再生不可燃料
You know it couldn't hold a candle
 ロウソク一本 点けてられないよな
There ain't no spark in the dark
 暗闇の中に一閃さえあれば
Can touch my solar - Solar sex panel
 俺のソーラー・セックス・パネルに届くのさ
Got a fire up on top of my head
 俺のアタマのてっぺんで火を点けなよ
I'm a love regenerator
 俺はラブ充電器
Why don't you get up off your tanning bed
 日焼けマシンから出てこいよ
I'm an ultra-violet penetrator
 俺は紫外線注入器
Don't sweat and toil with no heating oil
 灯油がないって アワくって探すことはないよ
'Cause Momma I'm hot to handle
 だってさ 俺にさわるとヤケドするぜ
Gonna turn you up, gonna burn you up
 お前をその気にさせて 燃やしちゃうよ
With my solar - solar sex panel
 俺のソーラー ソーラー・セックス・パネルでさ
Got a headache burnin' bad gasoline
 粗悪なガソリンで頭痛がしたなら
Well, I'm gonna relieve it baby
 そう オレが楽にしてやるよ
My solar powered lovin' burns clean
 俺のソーラーパワーの愛が 完全燃焼させるさ  (略)

 Solar Sex Panel とは、イギリス英語の俗語でハゲのことだそうだ。
 イギリスでこの単語を言うと、どういうニュアンスになるのか、それは知らないけれど、この曲のコーラス「With my solar - solar sex panel」は最高だ!
 solar が soul にも聞こえて、サム・アンド・デイヴの「ソウル・マン」みたいで、ウキウキする。
 それほど難しいテクニックで演奏しているわけではないけれど、アメリカ南部ふうというか、カリブ海ふうというか、あるいはバンドの音全体で聴くと「ボ・ディドリー・ビート」──「Shave And A Haircut, Two Bits」という語呂合わせで弾くおなじみのやつ──みたいな感じもしてきて、ワクワク感いっぱいのリズムだ。テンポもBPM 100 くらいと心地よいゆるやかさ。春の陽光のもと、のびのびと首の体操をしつつ「集光」しながら歩くのにちょうどいい。バスドラムとスネアが、絶妙なノリで歩みを後押ししてくれる。
 ソーラー・セックス・パネルばんざい! 美人の嫁をもらってガキを二人もつくった英ケンブリッジ公、すなわちウィリアム王子を見よ! 関係ないか!

 作詞作曲はバンドで行ったとCDジャケットに書いてあるが、俗語のアイデアを持ってきたのはベースのニック・ロウだろう。
 といっても英国のバンドではない。
 シンプルですばらしいドラムを叩いているのは、レギュラーバンドを作ったポール・マッカートニーは別として、解散後のビートルズメンバーのソロ活動にいつも指名されていたジム・ケルトナー。歌っているのはジョン・ハイアット。それから、そうかこの人がいるから「世界音楽博物館」みたいな、えたいの知れない気持ちいい音楽なんだと納得の、ライ・クーダーがいる。
 そう、一九九二年にCD「Little Village」でデビューしたこのバンドは、その前年の結成時すでに四〇歳がらみの、玄人筋のおっさんたちによる「スーパーバンド」なのだ。

180315Lv.JPG
Little Village 1992

 それほど難しい演奏じゃないと書いたけれど、ちょっとばかり速く弾いたり叩いたりできるからって、この演奏が出来るかといったら出来っこない。歩く速さにたとえるためにBPMを測ったわけだが、テンポが、たまらないほど気持ちよく微妙に揺れている。誰が誰に合わせるのかなんてことは何も考えずに合っていて、揺れながら心地よい「ノリ」を繰り出しているわけだ。
 もちろんライ・クーダーについては、いまさらここで説明することは何もない。この人が奏でるギターや「えたいの知れない」変な楽器たちの、弦がはじかれるときの、うわっと叫びたくなるようなキレのいい美しい響きを聴いてください。ライ・クーダーが、もっともロックっぽくビートの効いた演奏をしているところも、わたしは好きだ。ライ・クーダーって、文化人が聴くものだという感じがして苦手という場合も、そういう面がいいんであってルーツ音楽や音楽探訪こそがライ・クーダーの本筋だと譲りたくない場合も、このバンドを聴いて損はない。なにごとも「食わず嫌い」はいけないという好例だ。

 このバンドでのライ・クーダーの聴きどころをもうすこし言うと、もちろん得意のスライド・ギターもいいが、やはり「Solar Sex Panel」でも弾いている変な楽器!
 見た目では、ヴォックスのベース、ローリング・ストーンズのビル・ワイマンが、昔、弾いていたイチジク浣腸みたいな(詫!)やつですが、ベースはニック・ロウが弾いているわけだし、出てくる音が楽器の形からは想像もつかないキンキラの不思議さだ。
 どうやら改造して、ブズーキみたいに使っているらしい。ブズーキは、カントリー音楽で使われるマンドリンと同じ調弦だから、ロングスケールのマンドリンとして弾いているのだろうか。変わった楽器だからって曲の味つけに添える感じではなくて、曲そのものを引っ張る感じで元気よく鳴らしているのが素晴らしい。
 
 ステレオの左右チャンネルへの楽器や歌の配置は、昔のレコードを思い出すようで、九〇年代にしては保守的で古臭い仕立てにも感じる。が、弦の鳴りの素晴らしさといい、ベースとドラムの音が、柔らかくあたたかいのに、くっきり通ってくるさまといい、バンドメンバーが「そこにいる」感じがして、気持ちがいい。
 それもそのはず、制作はバンド名義になっているが、このての音楽の名プロデューサーとして知られるレニー・ワロンカーが録音技術者として記されているし、実際の録音は併記されているアレン・サイズがしているはず。サイズが録音した何百枚もの盤──U2からマイケルジャクソン、フランク・シナトラからレッド・ホット・チリ・ペッパーズまで──を並べれば、ポップス百科事典が出来てしまうほどだから、この盤は制作面でも「スーパー」であることは間違いない。

 ジョン・ハイアットはライブ演奏でこの曲を、クリーンなラブソングだよ! と紹介している。
 そういわれてみると、この盤には環境問題に関連した社会的内容の曲もある──「Do You Want My Job」──が、けっしてシュプレヒコール調でなく、ハワイアンふうのゆるやかで朗らかな演奏にのせて、汚染された環境の中で仕方なく生き、その汚染に仕方なく手を貸す結果になってしまっている「おっさん」の、呟きとして描いているのがいい。プロテストソングにさまざまな表現あれど、わたしには、そういう曲がいちばん、伝わる。
 
 なんだか、ほめてばかりだけれど、ざんねんなことにリトル・ヴィレッジは売れなかった。この盤一枚きりで、解散してしまった。
 もともと、スーパースター的なバンド活動をしてきた人たちではないから、爆売れの必要はなかったのではとも思うわけで、こんなにいい音楽がやれるなら、ときどきこの顔ぶれでライブをやってくれても、といいたいが、解散に至ったということは、音はともかく気持ちのうえで合わないこともあったのだと想像している。
 発売当時に買って聴いて以来、さまざまな人に薦めたが、いいね! という人はあまりいなかった。なまじライ・クーダーやデイヴィッド・リンドレーが好きだと、違和感もあったらしい。
 これ以後のライ・クーダーは、インド、アフリカへと「世界音楽博物館」探訪を続けた。キューバで出会った音楽が「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」に結実したことは、ご存じのとおりだ。(ケ)

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posted by 冬の夢 at 16:20 | Comment(0) | 音楽 ロック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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