2017年05月22日

FM放送と光ケーブル(なのかな?)

 2012年7月8日に「ラジオとインターネットラジオ(3)」を書いてから5年近く、その続報の「オーディオ、恐るべし #1」を2014年7月14日に書いてからもすでに3年が経とうとしている。この事実に対して今さらながら愕然とする。我ながら「何にもしていない5年間だったな」とションボリしてしまう。しかし、よくよく考えると、実はそれこそさもしい人間の悲しい性と言うべきで、この5年の間に転職もしたし、引っ越しも2回もした。本当は「何にもしていない」なんてことはないし、仮に転職や引っ越しなどがなくても、やはり本当は色々とあったはずだ。それをろくすっぽ考えることもせず、条件反射的に「何にもしていない」というクリシェで片付けようというのは、知性の怠惰なのだろう。せいぜい自戒しなければ。(ゴヤ曰く、知性の眠りは怪物を生む。)

 事実、「オーディオ、恐るべし #1」にFMラジオと受信アンテナの話を書いて以後、知らぬ間に実はもの凄い事態・事実が出来していたという報告が今日の主題。

 上述のごとく、5年前に簡便なFMアンテナをベランダに設置してから、個人的事情で2回の引っ越しを繰り返した。最初の引っ越し先では、FM放送を聴くような気分でも環境でもなく、オーディオ機器も最小限しか設置できなかった。大方の機材は荷解きさえもせず(もちろん、保管状態にはそれなりに気をつけてはいたけれど)、チューナーもFMアンテナも文字通りに宝の持ち腐れ状態だった。それからおよそ1年半後に再度引っ越しをして、やっと思い通りのエアチェックが可能になった。その報告が「オーディオ、恐るべし #1」だった。
 しかし、実はこの段階でもかなり奇妙なことになっていたのだった。
 「オーディオ、恐るべし #1」で報告した通り、電波の受信状況は悪くなかった。というか、期待以上だった。が、新聞のテレビ・ラジオ欄に記されている一番近くの放送局ではない周波数の方が受信状況がいいのだ。おそらくは地形のせいだと思うのだが、なぜ遠くの、比較すれば弱いはずの電波の方が好ましい受信になるのか? いくら考えても、電波に対して素人の我が身には難問過ぎるので、ともかく結果オーライということで、そのままエアチェックを楽しんでいた。(繰り返すけれど、「エアチェック」なんて死語でしょ!)

 実はこの文章を書き始める前に、3年前に自分が書いた文章を読み直してみた。そこには「爺となったクソ耳には『ノイズ皆無』といって差し支えない」と書かれている。ちなみに、5年前には「ノイズも好ましい」とシャアシャアと書いている。我ながら実に節操がないと思うが、ノイズがなくなったことは、録音する上では非常に好ましかった。つまり、ノイズはないのであればないに越したことはない。そして、当初「ノイズ皆無」と勝ち誇ったように言っておきながら、段々と「そうはいっても、多分、放送局と我家の間に鉄道が何本もあるせいか、ときどき『パチパチ』と入るノイズ、何とかならないかな…せっかくの名演奏も台無しにさせられてしまう」と、不満が高まってきたことも事実。ラジオ放送の受信には天候なども大きく左右することは昔からの当然すぎる事実で、どんなに貴重なライブ放送があるときでも、たまたま雷雲などが発生していたら、快適な受信は最初から諦めなければならない。そんなことは百も承知しているのだが、しかし、煩悩は止められず、ぼんやりと、しかし執拗に「何とかならないかな〜〜」と当てもなく考えていた。というか、たまたまノイズが酷く入ってしまった録音を再生しているときなど、思うともなく思っていた。

 そんなある日、これまた度し難い物欲の悪戯でもあるのだが、どこからともなくサンスイのレシーバー(アンプとチューナーが合体した、ある意味で便利なオーディオ機器)が我家に届けられた。手元にある機材に比べて音質的には劣るのに、なぜそんなものが欲しくなったかというと、要は単なるノスタルジーに過ぎない。子どものときに初めて身近になったオーディオがレシーバーだったために、レシーバーを見るとついつい物欲が刺激されてしまう。ともかく、家人には「寝るときに音楽だけではなくラジオも聴けるし」なんて言い訳をして、レシーバーは寝室に鎮座することになった。だが、寝室にはFMアンテナを設置するわけにはいかない。もとよりこのレシーバーで録音をする気は毛頭なかったので、「適当にフィーダー線を目立たないように付けておけば、音質を問わなければ電波くらいは拾うだろう」と考え、事実、何の加工もしないフィーダー線をレシーバーのアンテナ端子に接続して、時々FM放送を楽しみ、時々iPodをaux入力に繋いで、それなりに楽しんでいた次第。

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(これがSansui SAX1000Xの勇姿?)

 そうして、かれこれ数ヶ月が過ぎたある日、いわば悪魔か天使が囁いたのだろう、「しかし、この寝室にはテレビのアンテナの端子が来ているぞ。ここに繋いだら、もしかしたらまだ昔の、テレビがデジタル化される以前のアナログ用アンテナが残っているかもしれず、そうしたらかなりの音質で受信可能なのではないか」という、それこそ時代遅れのアイデアが脳裏に閃いた。どういうことかというと、テレビがアナログ放送だった頃は、テレビ電波はFM電波と親戚のようなもので、テレビが周波数の比較的高い方を使い、FMは低い方を使うという、いわば同じ電波を仲良く使い分けていたわけで、当然、アナログのテレビアンテナはFM電波もかなりの能率で受信してくれていた。マニアの厳密な趣向には合わなくとも、一般家庭の、それこそ寝室で音楽を楽しむ程度ならば必要十分だった。チューナーを購入した5年前に同じことを試みたのだが、その頃住んでいた集合住宅ではすでにアナログテレビ用のアンテナは撤去されていたようで、テレビ用のアンテナに繋いだラジオは全く使い物にならなかった。さて、今度はどうかな?と思いつつ、テレビ用のフィーダー線を加工してレシーバーに繋いだところ、なんと大成功!「おー、このマンションはいまだにアナログ用のテレビアンテナを残しておいてくれたのか」と大感激した。

 と、話がここまでならば、冒頭に書いた「もの凄い事態・事実」は過大広告になってしまう。単に時代遅れのアンテナが、おそらくは大家か管理会社が呑気なおかげで残っていたというだけのことになってしまうのだから。

 「もの凄い事態・事実」というのは、FM電波の受信を示すメーターはご覧の通り強く振れており、聴感上もきれいな音で聞こえている。が、周波数が妙なのだ。いつもと全然違う周波数で受信している。他の、民間のFM局を試してみても、メーターは勢いよく振れるが、やはり全然違う周波数で同期する。しかし、地元ではなく隣の県の放送を受信しているにしては感度が良すぎる。念のために新聞のラジオ欄で近隣の周波数を調べてみても、合致するところは見当たらない。奇妙だ。オカルトだ。

 そこで、今度は自分のメインの機材で試してみることにした。引っ越しの際にわざわざ業者(といっても、エアコン設置業者だが)に頼んで引き回してもらったアンテナ線を外し、部屋の壁面に設けられているテレビ用のアンテナに繋いでみた。結果は寝室のレシーバーと同じだ。メーターの振れも非常に良好で、普段の受信に全く劣らない。しかし、同期する周波数は全然違う。ついでにヘッドフォンで音質を確認してみたが、明らかにノイズが少ない。これには再度驚かされた。小さいとはいえ、ベランダにFM受信用のアンテナを設置したときと同程度の強さで電波を受信している上に、さらにノイズまで減少している。だが、ラジオ局の周波数は全然違うところを示している。新聞で調べてみても、そんな周波数を発しているところはない。いったい何事が起きているのか?

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(このように受信状況は良好)

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(これが不思議な周波数)

 数時間ネットを頼りに調べてみて、ようやく事態を理解した。いや、正しくはこの謎を何とか説明できそうな一つの仮説に辿り着いたというべきだろう。この結論に自信はない。自信はないが、真相は当たらずも遠からずなのではなかろうか。

 最近のマンションにはインターネット用の光ケーブルが入っている。現在住んでいるマンションもそうだ。(もっとも、我家は加入していないけれど。)集合住宅なので、自分が加入していなくても、回線そのものは各戸まで引かれている。もちろん言うまでもなく、個別に契約しないとネットは使えない。少しでも快適なネット環境を手に入れようとしてこの光回線に申し込むと、何と付加価値的にテレビもケーブルを通して受信できるようになるらしい。(詳しいことは知らないが、そうすることで安定した受信が可能になるとのこと。)その上、ここがキモなのだが、「FM放送もケーブルを通して受信できる」という。ここから先が今回の「オカルト怪現象」の推測による謎解きだが、この集合住宅が光回線の導入を決めたときに、すでにテレビ用のアンテナなんぞはとっくの昔に撤去されていて、現在各戸の壁面に設置されているテレビ用アンテナ端子に届けられている電波の実体は、空中を伝わって届けられた電波ではなく、光ケーブルを伝わって届けられた電波(というのか?)なのではなかろうか。そして、そこではテレビの地上デジタル、BS、CS、そしてラジオのFM電波が一緒になっている。そういえば、引っ越してきたときにテレビを自分で設置したのだが、チャンネルがいまだによくわかっていない。もとより余所者であり、関西の放送局には全く疎く、東京であれば「1チャンネルはあれで、3チャンネルはあれ、4チャンは…」と、スラスラと出てくるが、関西エリアのことは全くわからない。毎日放送とかテレビ大阪とか言われても「何のことですか?」といった案配だ。そのため、最初のチャンネル設定もテレビにお任せで、いまだにリモコンのボタンを適当に押して、目当ての番組を適当に見つけている。新聞のテレビ欄を見ても自分で正確にチャンネルを定めることはできない。おそらく、その最初の設定のときに、すでに光回線仕様のテレビになっていたのだろう。
 というわけで、壁面のアンテナ端子には光回線の電波が来ている。もちろんネットは使えないし、CSも個別に契約しないと見られない。が、個別に契約していようがいまいが、光用のアンテナ端子には光回線と通じて届けられたFM電波が来ている。そこに受信機を繋げば、当然のように受信する。それが周波数が全然違ってしまう理由でもあるのだろう。

 しかし、実を言うと、この「推測」でもまだよくわからないことがある。念のためにNTTやAU、関西電力などの大手の光回線のホームページを調べてみたところ、それぞれに各FM局の周波数を記しており、それぞれ勝手な周波数なのだが、我家で受信する周波数を示しているところはいまだに見つからない。この家を斡旋した不動産屋に確認すれば簡単にわかることかもしれないが、そうは言いつつ、この謎をもう少しこのまま楽しんでみたいという気持ちも強い(というか、真相なんてどうでもいいかという気持ち)。ともかく、FM放送の受信環境は激変してしまった。その中でノイズが少なくなったことは慶賀すべきことなのだろう。けれども、光回線を使ったFM受信とは? これは最早アナログ放送とは呼べないのではないのか? いや、元々がアナログだから、途中で何を経由したとしてもやはりアナログなのか(つまり、空中を経由しようが電線を経由しようが、ということだが)? こんなことを考えると、大いに悩ましくもなる。昔ながらのチューナーで受信してそれを録音して喜んではいるが、自分はいったい何をしているのか、もうこうなると自分でもよくわからなくなってくる。アナログとデジタルのキメラ。そんな化け物を前にして、いわば途方に暮れているわけだ。それでも、もしも集合住宅に住んでいて、FM放送をもっと楽しみたいと思っている人がいたら、試しにテレビのアンテナを外して、それをチューナーに接続してみて下さい。同じような怪現象に出くわすかもしれませんから。(H.H.)


posted by 冬の夢 at 13:58 | Comment(1) | TrackBack(0) | 音楽 オーディオ・楽器 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 いつものように、時代を越えた不思議なオーディオ(ラジオ)話ですね。
 以下は、テレビもラジオもない生活のなかでの、まったくの推測です。
 本文に呼応し、想像を楽しむということで(当方もまったく間違っているかも)。
【1】TVアンテナ端子に来ているのはCATVの信号で、集合住宅契約などで基本サービス(含FM再配信)は「つなげば受かる」状態なのではないですか。そうであった場合、プロバイダでなく、ケーブルTV業者のサイトで確認。その社のFM再配信周波数に当たってないですか。そうであったら、その接続でチューナーが正しくつながっており、ノイズの少ないFM再配信を受信出来ていることになります。
【2】そうでなく、アナログTVアンテナが残置されていて、その信号である場合、放送局が電波状況対策で設置している中継局の電波を受けている(たまたまその中継局にアンテナが正しく向いている)かもです。たとえばお宅で受信していると思われるNHK−FMは、中継局が20以上あり、受かると思われる中継局も3か所ほど、あるいはそれ以上あります。そして中継局の放送周波数はすべて異なっています(わずかずつですが)。中継局の周波数は、地方本局のサイトですぐわかりますので、一覧してみてください。
Posted by (ケ) at 2017年05月22日 22:40
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