2015年12月21日

富士は遠かった──三浦の「富士山」一八三メートル 登攀記

 運動不足が慢性化しているので、散歩しようかと地図をながめていたら、みょうな場所に「富士山」があるのに気づいた。神奈川県・三浦半島の「くるぶし」やや下あたり。そういえば三浦半島って形がイタリアに似ている。
 その富士山、標高わずか一八三メートル。ハイキングコースがあり、二時間もあればじゅうぶん歩けるようだ。関西に住んでいるときは六甲山で四、五時間ほどの登り下りがレギュラーコースなので、楽勝にちがいない。
 ということで、昼過ぎごろ東京の住処をだらだら出て、京浜急行久里浜線の快特で京急長沢駅へ。都心部から近い!
 コースはまったく簡単。京急長沢駅の北側に案内があり、それにしたがい湘南長沢グリーンハイツの団地群を抜けていくと、すぐ登山口が見つかる。山道の見晴らしは終始あまりよくないが、ちらほら海が見え続けるから方角を誤ることもない。
 世の中は歳末で爆裂に忙しいはず。誰にも出会わない山道をとぼとぼ歩く。それでいいのか悪いのかよくわからない。いま忙しがっている同世代の勤労者、つまり友人知人の多くはそのうち定年退職し、山を歩いたり、東京オリンピックを見にいったりするのだろう。そのとき自分は、どちらもしていない、と思った。

 そんなことはどうでもいい!
 かなりくたばってきたのに富士山頂に着かない!
 困ったことに、出かけたときは晴れていた空の雲行きが怪しい。
 六甲山のとき同様、ふだん着でジョギングシューズ。水を買い忘れた。
 地図は駅前で案内図を写したデジカメ画像だけ。メーラーを持っているだけでスマホはない。磁石がない。
 やれやれ、子どもでも行けるハイキングコースで遭難かよ……というパターンがわたしの場合、多いのだが、こういうときに限って「いくら考えてもわからない分岐」に出くわす。片方にはテープの巻いてある小枝が見えるが、以前、六甲山でテープを信じてひどい目に合ったので、テープがない方へ行く。
 これが失敗。早々に見切りをつけ戻った。案内図を見直せばすぐわかる話で、海に向かって円を描くような道のり。「道なり歩き」でいいのだ。
 
 運動神経が鈍くスポーツは苦手。部屋の中で壁を見ていれば一日が終わる。
 のだが、そうしてはいられない。苦労して改善した生活習慣病関連の指標が、数年ぶりに検査してみたらまずい事態に。運動! 歩くしかない。
 が、事故のせいで昨今、出不精だったとはいえ、持続力低下はひどい。ちょっと前なら面白がれた急な登坂など、見ただけで引き返そうかと思ってしまう。
 それでもやっと「武山、三浦富士」方面を示す道標にたどりつく。そこから「富士山頂」はすぐで、最後の急登にはスチールのステップが埋めてあり楽に上がれた。
 そんなこんなのロスタイムで、子どもでもおそらく四〇分ほどの山道を一時間以上かかってしまった。
 
 山頂には小さい鳥居や富士山型の献灯台があり、富士講の古い記念碑が並ぶ。この日は天気が悪かったが、海はもちろんホンモノの富士山も見える場所なのでミニ絶景といったところか。もっともホンモノの富士山の絶景絵画や絶景写真からもわかるとおり、ホンモノは登るより姿を愛でるものだ。三浦の「富士山」はいわばホンモノ富士山崇敬所なのだ。
 で、同じ道をすぐ帰るべきだが、ちょいとだけ前進。
 近い所にある「砲台山」が気になった。長沢駅前の地図に載っていたのだ。
 こちらは少し歩くと乗用車の車幅ほどある一般ハイキングコースに出て、すぐ到着。標高は二〇〇メートルを少し超える──おい! 「富士山」より高いじゃねえかよ……。
 

 砲台山の山頂で目立つのは海上保安庁の大きなアンテナ。そして隣に、こんなものがある。またハイキングコース沿いに、やや内陸側に向かって、一対のギリシア神殿の柱みたいなものも。
 その場所に解説板などはなく、すこし調べたが信頼できる資料は見つけていない。いまの段階で書けることは、「砲台山」の名のとおり、すり鉢型の構造は高射砲設置場所の遺構らしく、柱は、上部に探照灯を据え付けたらしい、ということだ。
 三浦や横須賀には、太平洋戦争時の軍事施設遺構がかなりの数、残っていることはよく知られていて、観光ルートにはいっているほど。明治時代にはじまり太平洋戦争敗戦まで「東京湾要塞」として管理運用された施設が多い。東京湾沿岸の砲から第一の射線、横須賀近辺などの砲から第二の射線、東京湾全体を射程におさめた防衛線だという。
 三浦の砲台山で、実際に高射砲や探照灯が機能していたかどうか、航空機攻撃用の高射砲陣地が、東京湾へ侵攻する軍用艦を攻撃する要塞の一部をなしていたのかなど、歴史的なことは調べきれていない。
 
 平日午後の「富士登頂」は、これで終わり。
 ホンモノの富士山は、少しだけ裾のほうが見えた。
 太平洋戦争で東京を空襲したB29は、昼間作戦の場合、富士山を目標に飛来したという。(ケ)

Originally Uploaded on Dec. 22, 2015. 03:33:00
posted by 冬の夢 at 23:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 旅・徘徊・発見 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く:ペンネーム可・アドレスは表示されません
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック