2015年01月15日

フランスパンと「わたしはシャルリ」

 パリの味がするバゲットやクロワッサンを探して、という感じで、いまいる首都圏でも、ここしばらく住んだ関西周辺でも、足がのばせる限り、さまざまなパン屋さんで買っては食べを繰り返してきた。このブログにも、かなり書いている。
 ここ数日それが、とても恥ずかしいことのような気がして、もうフランスパンをムキになって探すのはやめようと思いはじめている。

 最初に驚いたのは、「シャルリ・エブド Charlie Hebdo」で銃撃殺人が起きてわずか数日後に、オランドが結集を呼びかけたこと、そしてデモがあのような規模・内容で実現したということだ。
 いきなり映像で見たせいかすぐ慣れてしまったが、アッバスとネタニヤフが本当に来ている──だから、というわけでもなんでもなくメルケルもキャメロンも、ふつうに「いる」。警備に五千人を投入し安全確保を徹底したとはいえ。
 ひとつに、ヨーロッパという場にあってのフランス左翼政権の、ある意味したたかともいえる政治力と実務力を見せつけられた思いがした。
 しかしもうひとつに、パリだけで百数十万人という参加者数のことがある。
 いま東京で、天皇なり首相なりが呼びかけたとして集まる数ではない。それだけの争点も危険もいまのところ「ありえないらしい」ことは、喜んでいいのかどうか、よくわからないが、興味本位の野次馬気分からでなく、まして、何かせずにはいられなくてというような抽象的情緒からでもなく、信念と覚悟をもって現れた市民の数を「見せつけられた」、これまたそういう思いがした。
 もちろんデモはひとつの意思に統一された整然としたものでなく、テレビに写らない混乱のほうがよほど大きかったろうし──とうてい整理できる数ではなかったはずだから──フランス各地で報復とも思える暴力行為も発生している。それでも「わたしは(も)シャルリ」だというメッセージを掲げてテレビや新聞写真に写るという完全には安全でない、むしろ危険といってもいい行動で意思表示できる人の数に、あらためて驚かされた。

 で、日本では、そこのところがまったくわからないわけである。
 フランスには風刺という文化があってね、表現の自由といってもいろいろなんだよ、みたいなところで納得しているんでしょうね。
 イスラム教徒は怖いし、宗教みたいに人の大切な価値観をちゃかしたりしたらダメだよとか。他人や弱者を傷つけて何が表現の自由なもんかとか。日本はフランスとは違うからねとか。
 そういうことじゃないんだ、ぜんぜんそうじゃない。
 ということは、数日前に書いたから繰り返さない。

 BBCニュースの図では、予定されたパリのデモのコースは共和国広場からナシオンへ向かう二つで、南側はまっすぐ東へ、北側の長い方は山なりにメニルモンタン通りへ出て、ペール・ラシェーズ墓地の脇からナシオンへ南下する。
 自分では見ていないので間違っていたら訂正するけれど、日本のテレビでは「パリの中心部で、シャンゼリゼにもほど近い」というような前フリがしばしば繰り返されたという。
 そういうことじゃないんだ、ぜんぜんそうじゃない。
 日本人にわかりやすい名「シャンゼリゼ」、凱旋門のあるシャルルドゴール・エトワールあたりをイメージしてなら、明らかに「遠い」。
「近い」のはどこか。
 バスチーユだ。
 そう、このデモの設定コースは、歴史をたどる路程なのだ。今回の事件をうけたデモが、このコースでフランス国歌を歌うような仕込みだったなら、それがいいか悪いかは別としてもだ。
 そのあたりは、よくふらついた所だから、いかに「シャンゼリゼ」から物理的にも精神的にも「遠い」かが実感としてわかるが、行ったことのない都市だったら、わからない。
 それを説明するのが、メディアの役割なのではないか。
 テレビ番組でだって一分もあれば説明できる。テレビで一分のコメントというのは、ありえないほど長過ぎるらしいけれど……。
 
 フレンチシックなお店で、本場フランス直輸入のこだわり材料を駆使、フランスの何とか星で経験をつんだ誰それやらが、パリさながらの味を云々。

 それっていったいどういう意味だ!
 つまりは「いいとこ取り」だってか。
 
 日本とフランスでは文化が違うからね。
 イスラム教徒は怖いからね。
 フレンチシックで本場フランスだからね。

 アホだ。もはやアホでしかない……。

 フランスの味がするフランスパンを探して、だと!
 われながら、よくもまあ、恥ずかしげもなくいったよ。
 いま、自分が入る穴をせっせと掘っているところだ。

(ケ)

※実際にはデモは混雑のため、あちこちの路地へ分岐していったようだ。バスチーユへ南下し、そこからナシオンに向かった第三の流れがあるという説もあったが、さだかでない。
posted by 冬の夢 at 00:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 国際 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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