2014年06月25日

ワールドカップと羊の角の呪い

 サッカーファンには申しわけないけれど、ワールドカップはこの結果でよかったと思っている。
 あまり調子よく勝ち上がって「日本は強いんだ!」と浮かれずにすんだから。
 威勢よがっている場合ではなかったからだ。 
「なかったからだ」とは、公明党に、地にコウベを擦りつけんばかりにお願いしたけれど、やはりダメらしい。「やはり」という自分が情けないが、昨今なにごとも「やはり」だらけ。仕方ない。
 ところが、サッカーこそ「やはり」がいちばんはっきりしているのに、なぜありもしない夢をみるのだろう。
 同じ人たちが、「中国が攻めてきたらどうする、おう、そうだそうだ」と威勢よがっておいて、まぁそう簡単には戦争にはならないからいいよ、と思うのだろうか。
 もう、どうしようもなく解らない。

「東京音頭」が爆発的に流行したのは、昭和初期の一九三三年。発売当時のみで百万枚以上売った。電蓄が高級品でまだ一般家庭にあるものでなかったことを考えると、異様なほどのヒットだ。意外に知らない人が多いので驚いたが、もとからスワローズの応援歌ではない。
 この年、日本は国際連盟を脱退している。わたしが使った日本史の教科書には「席をけって退場」と書かれていた松岡洋右は、連盟脱退通達にジュネーブ総会へ行ったのではなかったが、帰国後一躍、英雄にまつり上げられた。※1
 この年、小林多喜二が警察の訊問で殺害される。大島三原山火口への投身自殺があいつぎ、百二十人以上が亡くなった年でもある。
 何の本だったかどうしても思い出せないが、こういう話を読んだことがある。
「東京音頭」には、大人のみならず子どもも熱狂的で、ある小学校で曲が流れて来るのが聞こえたら、生徒たちが踊りながら学校を出て行ってしまう騒ぎになったというのだ。しかし「東京音頭」は治安維持法にはかすりもしていない。思想善導に好適と各省が普及を後押ししていたという説がある。
 
 バブル景気が頂点をきわめた一九九〇年に大流行していたのは「おどるポンポコリン」。宴席で、お前やれとか自分やりま〜す、という場面がよくあり、始まると皆が──たまたま店にいた別の客らも──踊り出すこともあった。外回りのとき、どこかで必ずこの曲が聞こえた。風船が破裂した瞬間がいつかは諸説あり、翌年らしいが、実際はこの年の秋に株価が半値に暴落している。
 たしかこのころ、ある企業の関連事業で現代の美術作品を買いまくって展覧会をするので指揮をしているという、意外なほど若い女性に会った。買って持っているものを並べるのだから現役の作者や作品保有先と交渉する手間がなく、展示したい作品は買えるなら買えばいいので、自分が望むどんな展示形態もやれると自慢げだった。しかし展覧会の話は聞こえて来ず、コレクションの実態もわからないまま、当時アジアを制覇していたその企業は、間もなく経営破綻した。

 何年か前、人を訪ねてアムステルダムに行った夏、市内がものすごく盛り上がっていた。オランダとイギリスの試合だという。いま調べると毎年八月の「アムステルダム・トーナメント」に違いない。ホストのアヤックス対イギリスのどれか有名チームだったわけだ。
 帰国しサッカーファンの知人に話したら「日本人選手がいるところなど、どれか応援チームを決めて、試合チェックすると楽しいですよ」といわれた。が、それきりだった。
 今回のワールドカップでオランダのすごさを見てそのことを思い出し、応援チームを決めた。
 SBV・フィテッセ・アーネムだ。
 サッカーにはくわしくなくて、日本のことには関心がなく、オランダリーグの様子はまったく知らない。
 キーパーソンはひとりだけだ。かつてジェフユナイテッド市原にいたペイター・ボスだ。
 二〇一一年四月にアムステルダムで東日本大震災チャリティイベント「Nederland helpt Japan」が開かれ、清水エスパルスが招待されてアヤックスと親善試合をした。同年秋までに七億円以上の募金が集まったこのイベントの提唱者のひとりが、ボスなのだ。応援するなら、この人がかかわっているチームがいい。
 当時ヘラクレス・アルメロの監督で、ヘラクレスと日本のどこかのチームでちょっとした慈善試合が出来ないかと考えていたのがアムステルダム市に届き、大イベントになったという。
 去年からフィテッセの監督になっている。おりよくマイク・ハフナーがいる。
 ぜんぜん知らなかったり危険地域が多いところが地元だと応援に行くのがちょっと厳しいが、アーネムはクレラー・ミュラー美術館が郊外にある美しい街。クレラー・ミュラーはゴッホのコレクションで世界的に有名だが、アムステルダムから電車とバスを乗り継いで行かなければならないので、ビビって行けていなかった。ちょうどいい。

 コートジボワールは、日本代表選手の香川真司に羊の角で呪いをかけていた。TBSのネット配信ニュースで見た。※2
 知り合いのコンゴ人に聞いてみると「あ、呪いはよくやります」とのこと。
 それはともかく、ドログバの地元に近い所で撮影したというニュース映像が気になった。
 家畜がうろつき、でこぼこが目立つ地面。木の枠をゴールに擬したフィールド。その光景は貧困とサッカーを結びつけるありがちな絵ではある。しかし、子どもたちの表情がおかしい。途上国へテレビや映画のカメラが来ると、大人も子どももウワっと集まることが多いが、大人の姿がない。そして子どもたちは、カメラがふられると逃げるような様子をみせる。テレビカメラに撮られると呪いが効かなくなるのか。いや、サッカーとは別の何かが起きているとしか思えない。しかし、放送内容からはまったく解らなかった。

 無知であることは残念だがしかたない。
 何年生きてきても、知らないことばかりだ。
「やはり」が繰り返されると「どうせ」と、さらに思考停止する。
 せめて鈍感ではいたくないと思うが、難しい。(ケ)
 
1 以後ファシスト的言動が激化する。
2 公開日数の関係でウエブサイトのリストからは残念ながら消えている。


posted by 冬の夢 at 23:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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