2014年01月25日

『OK牧場の決斗』〜クラシックな西部劇

ワイアット•アープとドク•ホリデーがトゥームストーンの町にあるOKコラルでクラントン一家と対決した。このワンセンテンスが2時間の映画になるのだから西部劇がアメリカ映画の一時代を築いたのも頷ける。
保安官と肺を病むガンマンの出会いと友情に女を絡ませ、町の治安を乱すならず者との対立がついには決闘に至るまでを撮ればそこそこの興行収入になる。ハリウッドで50年代まで続いた西部劇量産システムは60年代にはイタリアが模倣して成功することになる。
そんな西部劇映画の中で『OK牧場の決斗』(※1)が今でも特別な存在であるのはなぜだろう。たぶん中学生のとき以来40年振りにしっかり腰を据えて(BS放映の録画だけど)鑑賞してわかったのは、ワンセンテンスでは済まない映画作りの古典的手法が効いているということだった。

開巻からフランキー•レインの唄(※2)が流れる。歌詞は「無法者と最後の対決だぜ」みたいなもので、いわゆる主題歌なのだがそうではない。物語が場所を変え人物が意志を固めるところで違う歌詞で唄われる。映画の大きな流れを転調させ、主人公の心情を補足する効果があって、人形浄瑠璃の義太夫のようである。
同じくしてジョン•スタージェス監督の演出も舞台劇の調子で統一されている。馬や馬車に乗った人物は必ず仰角で描かれるし、そもそも人物に寄った画面はなくバストショットまでも近づかない。
映画的手法を徹底して抑制して舞台のように物語る。だから観客の視点は自然と登場人物にフォーカスされていく。
ワイアット•アープとドク•ホリデーをバート•ランカスターとカーク•ダグラスが演じる。『OK牧場の決斗』はこの二人の俳優なしでは成り立たない。かつて映画には本当に輝いて見える俳優がいたのだとあらためて認識させられる。熱演とか存在感とか言うだけでは及ばない。要するに二人は「スター」なのだ。闇に輝く星に目が吸い寄せられるようにして映画は二人の俳優を中心に始まって展開し、そして終わる。
「スター」なのだから演技がどうしたとか言っても詮ないことで、人物造形だけ触れておきたい。
ワイアット•アープは法の番人として禁欲的に表現されている。だから常にグレーのシャツに黒のスーツを着ていてまるで僧侶に見える。黒ずくめの正義漢が私怨の決闘に導かれるところに深みが出る。
一方のドク•ホリデーは前身頃にフリルの付いたドレスシャツにシルクのベスト。しかもベストは赤と緑の二色を使い分けるほどに洒落ている。咳が止まらず常にバーボンをあおり、ワイアットに「荷物は?」と問われて「これだけさ」とトランプを出してみせるほどの賭博狂なのにどこか品の良さを感じさせる。
衣裳だけではなくいわゆる「美術さん」の仕事ぶりが画面に横溢していて当時のアメリカ西部地方の風俗を見事に切り取った舞台設計のきめ細やかさにも注目したい。保安官事務所の入口のドアガラスに施された目隠し模様や宿屋のフロントカウンターの造りや劇場の看板の装飾文字などはどれもリアルに再現されている。
西部劇の古典とは『OK牧場の決斗』のような映画を指して言うべきものであり、そこにはスターシステムの最高ランクに位置するキャストと時代を忠実に映像化出来る職人芸のスタッフがいたということである。

キャストについて付言すると主役の二人に絡む女優はなんとも寸足らずで、豪華な衣裳を取っ替え引っ換えするロンダ•フレミングはともかくとしてもドクの愛妾役ジョー•ヴァン•フリートは出演時の年齢が43歳。首に浮かぶ皺が見苦しく、本作の2年前に『エデンの東』の母親役でアカデミー助演賞を得ていることからして言い訳出来ないミスキャストであろう。
ところが男優は豊作。血縁で決闘に参加せざるを得ないビリーを多感に演じるデニス•ホッパーをはじめ、巻頭でイライラしながら酒を飲んでいるところを呆気なくドクに殺されるリー•ヴァン•グリーフはイタリアに渡ってマカロニウェスタンのスターになった。アープ一家の次兄モーガン役のデフォレスト•ケリーは『宇宙大作戦』(言わずと知れた『スタートレック』)のドクターマッコイに昇格。ホープの宝庫たる助演陣である。

それにしても、因縁の末に夜明けとともに決闘に挑むアープ兄弟とドク•ホリデーの四人がライフルを手に横一列になって歩き出すときの格好良さたるや!
西部劇とはかくあるべしという見本のような古典の素晴らしさをたっぷりと堪能したのだった。(き)

OK.jpg

(※1)Gunfight at the O.K. Corral
1957年アカデミー編集賞•音響賞候補
"Corral"は「牧場」というより「馬一時預かり所」に近い。

(※2)ディミトリ•ティオムキン作曲
口笛で奏でられるイントロ部分はマカロニウェスタンで音楽を担当したエンリオ•モリコーネに影響を与えている。
posted by 冬の夢 at 23:59 | Comment(0) | TrackBack(1) | 映画 洋画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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