2013年12月14日

「悲しみはぶっとばせ」の邦訳決定版!には自信がない

 このブログのの筆者が「いまならビートルズに失礼だろみたいなタイトル」の例にあげた曲がもう一つあった。「You've Got To Hide Your Love Away」だ。
「悲しみはぶっとばせ」。
 同時代のローリング・ストーンズは「夜をぶっとばせ」(「Let's Spend the Night Together」)。
 どちらの曲も内容は「ぶっとばす」とは関係ないが、六〇年代の日本の若者の気分を象徴する言葉だったのだろうか。ちょうど当時の大学生に小泉純一郎というのがいて、後年その男が濫用したキャッチフレーズが「ぶっつぶす」。
 それはともかくこの曲は、思ったより訳しづらい!
 自分の気持ちを愚痴るというかつぶやく曲だけれども、つぶやく彼と「とり巻き」を、すこし離れて眺める第三者の視線も含まれている感じだ。とても映像的でモノクロの街角が立ち上がるようでもあり、アラン・シリトーの「土曜の夜と月曜の朝」の映画版を思い出す。しかしその気持ちで読み直すと、いったい登場人物は何人で、どういう人間関係なのかが断定しづらく、難しい。たとえば「she」は年上ではないか、とか、誰かの彼女に恋してしまった話なのかな、とか。仲間に笑われているのか、街の噂になっている話なのか。
 最初のヴァースの彼のポーズからしてうまく描写できなければ、ぶち壊しだろう。「Feelin' two-foot small」もクセもので、もともと「two-foot tall」だったのをジョンが歌い間違えた。が、これも面白い、ということでイキになったのだそうだ。さてどう訳す。
 ジョンがボブ・ディランの真似をして作った曲で、曲調もいかにも似ている。とすれば一聴一読ではよくわからない感じの訳でもいいのかもしれない。かんじんの「Hey you've got to hide your love away」の訳にはかなり悩み、「LOVE AWAY キミの恋はかくしておきなよ」にして、全体をJ-POPふうに訳すことも考えたけれど、ディランの曲の感じとは違いすぎる気がしてやめた。演歌調にしたり方言で訳したりと、それはそれで面白いとは思う。
 それとは別に、「ぶっとばせ」の邦題で親しまれてきた以上は、そのニュアンスを生かすべきか。これも悩むところだ。
「have got to」は「have to」と同義だとして、「hide〜away」は「どこかへやっちゃえ」のニュアンスはあるのだろうか。あるなら「心にしまって気にするな」=「ぶっとばせ」な気分は出せるが、ないとすると「心の中にしまっとけ、アタフタしやがって」みたいな、邦題と逆の感じになってしまう。
 ウエブにあるいろいろな訳詩の試みを見るのは禁じ手と決めていたが、ちらほら見てみた。しかしあまり参考にはならなかった。ともかく、自信を持って決定版とはちょっといえない出来になってしまった。

You've Got To Hide Your Love Away

Here I stand head in hand
Turn my face to the wall
If she's gone I can't go on
Feelin' two-foot small

Everywhere people stare
Each and every day
I can see them laugh at me
And I hear them say

Hey you've got to hide your love away
Hey you've got to hide your love away

How can I even try
I can never win
Hearing them, seeing them
In the state I'm in

How could she say to me
Love will find a way
Gather round all you clowns
Let me hear you say

Hey you've got to hide your love away
Hey you've got to hide your love away


 恋の愚か者

 アタマをかかえながら
 ただ壁に向かい 立ちつくす
 あの人が立ち去ったら こうしてさえいられない
 身の縮む思いばかり
 
 そこでもここでも きつい視線
 どの日もこの日も わかってる
 笑われてるんだ
 いわれてるんだ

 恋するなら 胸に語れ 
 恋するなら 胸に語れ 
 
 なにができるというんだろう
 こんなことになっていちゃ
 勝てやしない
 まわりの言葉や視線に
 
 あの人はよく言えたよ 
 愛には間違いはないのよ なんてさ
 みんなくだらないぜ さあ来いよ
 何とでもいえ 聞いてやるさ

 恋するなら 胸に語れ 
 恋するなら 胸に語れ      (ケ)



※「ビートルズの訳詞・決定版をつくる!」記事一覧は→こちら←
 (複数の筆者が書いています)

posted by 冬の夢 at 03:49 | Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽 ロック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
リフレインの一般的な効果として、「繰り返されているうちに次第に意味が微妙にずれてきて、複数の意味の間での反響が生じる」というようなことが考えられる。この歌のリフレインも、最初は「『恋人』を失って泣くくらいなら、最初からその『恋人』を隠しておかなきゃ。隠しておけば、取られることもなかったのに」と聞こえ、繰り返されときに「そもそも『愛情』なんてものは口に出したらおしまいよ。『より多く愛するものは常に敗者だ』って知らなかったの?」と聞こえるような気がする。つまり、your loveが「恋人」と「愛情」という意味を同時に持ってしまうから。しかし、ならばそれをどう日本語にするのか?ってのは、やはり困難な問題であり続けるけれど。
Posted by H.H. at 2013年12月16日 00:39
こんにちわ、自分でも「You've Got To Hide Your Love Away」を訳してみたので、
検索をして拝読しました、 
H.H. さんもコメントで書かれている様に、この歌の Love は恋人だと思います。
恋人を隠しておけ、と囃されているのだと。で、このセリフを当の恋人が言うととんでもない毒になっていますが。 
ストーリーは、「 You Can't Do That 」の続きの様だと思います。その後が、「Norwegian Wood (This Bird Has Flown)」や「Girl」になるのかな、と思います。
Posted by ノエルかえる at 2021年10月10日 17:45
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