2012年10月07日

サムスンと忠誠酒

 ひとつ前の文「麗水と順天とタイタニック ─ 古くて新しい日韓問題」(一〇月四日)の最後に出てきた韓国のイッキ飲み「タイタニック」が、どうやら禁止されるらしい(朝日新聞一〇月一日夕刊)。
 といっても、韓国のある会社が社内「節酒キャンペーン」を開始する、という話だ。
 が、なぁんだどっかの一企業でのことか、という話ではすまないのだ。
 その企業とは日本でもよく知られるサムスングループ。全社員だと三十七万人が対象になる。グループ社員数でいえばトヨタ自動車も三十二万人を超えているが、韓国の人口が日本の半分以下であることを考え合わせると、すごい話だとわかる。
 韓国は接待酒の習慣がさかんで、ムチャ飲みや、酒の上の暴力なども問題になっているそうだ。サムスンは、この慣行が社員の健康や意欲を悪化させることを問題視し、イッキだけでなく、飲めない社員に無理強いしたり、でかい器で酒を混ぜて飲む習慣も禁止するとのこと。
「タイタニック」もそうだが、韓国人男性が飲むときのならいは、徴兵による従軍経験を背景にしていると思うがどうだろう。社会的立場が形式上シャッフルされる軍では、あらたに隊つながりのネットワークができる。それが社会の表裏にネットワークを形成し、よくも悪くも経済活動を回していっている面もあるはずだ。飲み会の風習がその現れだとしたら、いちがいに禁止するのはどうだろう。社員の禁酒を強制するという話ではないから、いいか……。
 で、韓国で自分がやったことはないが「忠誠酒」というのもあるそうだ。「タイタニック」に似ていて、ビールを満たしたジョッキの上に箸を渡し、その上に焼酎やウイスキーを入れた小グラスを置く。テーブルにアタマをぶつけてグラスをジョッキにドボンと落とし、混合液を飲むのだが、アタマをぶつけるとき「忠誠(チュンソン)!」(韓国軍で敬礼するときいう言葉)と叫ぶから「忠誠酒」。
 むろん、それをやっている男のほとんどが実際に「忠誠!」を叫んだ経験があるわけで、わたしがふざけてマネをしてもシラケるだけだろう。
 ちなみに二〇一〇年の韓国映画「大韓民国1%」」は、入隊率1パーセントといわれる韓国海兵隊特殊部隊にただ一人入隊した女性兵士を描く作品。当時、日本大学の映画学科に在籍中で、これが初の映画出演・主演だったイ・アイが「忠誠!」を叫ぶ。舌っ足らずのカワイさを期待していると、実際に訓練を受けてゴッスリ下腹から吐き出す「忠誠!」が二重の意味でカワイイ(叱)という困った映画でもある──と書くとコメディ映画みたいだが、とんでもない。訓練生が北朝鮮領に迷い込み、戦闘に巻き込まれる設定が絵空事ではないリアルな映画である。
 余談だが、イ・アイはこの映画を日大の卒業製作に提出したらしい。同じ学科に通う同世代の日本人学生たちが経験する可能性ゼロの内容の、しかも劇場映画が卒製に出され、学科の教師たちがどう採点したのか、ちょっと興味がある。
 なお、全社節酒運動より前にサムスン電子では、喫煙を社員のマイナス評価とする運動も始まっているそうだ。ご存じのかたも多いだろうが、きわめて社員競争が激しい企業であり、会社方針は絶対と朝日新聞も報じている。この調子だと、そのうちインドの会社で社員に「太るな」といい出す所が出てくるかもしれないな。
 そう、禁酒・禁煙・禁デブは、いうまでもなくアメリカが発明した「陰謀」だ。
 やれば悪酔いするとわかっている飲みかたなど最初からしない方がいいし、人は健康であるにこしたことはない。しかしそれは誰のため、そして何のためなのか。 (ケ)

2012-10-04 21:39:36
posted by 冬の夢 at 23:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 国際 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く:ペンネーム可・アドレスは表示されません
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック