2012年10月04日

ラジオとインターネットラジオ(4)

ようやく「FM放送受信+録音」に関する最終報告ができる。

興味関心がある御方は7月8日付けの記事をご覧頂くことにして、要するに、TVがデジタル放送に移行したとばっちりで、マンションの集合アンテナはFM受信の便利な代替策としてはもはや使いものにならないことがわかってしまったとき、残された唯一の善後策は、昔ながらのFMアンテナに頼るしかない。時代がかったFMチューナー(若い人は現物を見たこともないだろうな……)を入手し、ネットで見つけた修理業者に調整をお願いし、一方で最新のPCM録音機を用意したのに、肝心の受信状況が論外のレベルとは。ノイズが酷く、録音以前に、聴く気にもなれない。放送局から離れた地に住んでいるので、フィーダー線をT字型に加工した簡易アンテナも用を足さない。だが、ここで諦めてしまっては、先行投資が全て無駄になるばかりか、狭い家に新たな粗大ゴミが増えただけということになりかねない。いや、必ずそうなるだろう。

というわけで、禁断の?アンテナにまで手を出すことになってしまった。今は昔、ようやく声変わりし、生意気に初恋なんかを経験して、AMラジオの深夜放送からFM放送のエアチェックに興味関心が移行した頃を思い出せば、こんなときに登場するのはトンボ型の、つまりは2素子の八木式アンテナということになる。私自身も中学生の頃はこの羽を広げた金属製の巨大トンボ(1メートル四方程度)を自分の部屋の中に吊り下げて、おつに澄ましていた。だが、それから数十年、今の住居に「自分の部屋」なんてない。FMチューナー設置した部屋は、よりによって妻との共同の寝室であり、そんなところで巨大トンボを飼育でもしようものなら、その顛末は考えるだに恐ろしい。ベランダに設置したとしても、その異様な姿が威圧的に映ることは容易に想像がつく。(つくづく不思議だが、ガジェットに興味や関心を示すのは、決まって男だ。女性でガジェット好きな人って、まだお会いしたことがない。実際はどうなのだろう?)

2素子よりも小さなアンテナといえば、もうそれは小学校1年生の算数よりも簡単で、1素子しかない。だが、1素子ならば前述のT字型フィーダー線と大同小異なのではないか? もっと分かりやすい比較をするなら、それは要するに自動車に搭載されたアンテナと大同小異なのではないか。そんなものを苟も「ピュア・オーディオ用」と見なすことさえ憚られる。こう呻吟しているとき、とうとう見つけました! 別名「物干し竿型FMアンテナ」(と勝手に命名)。長さは2メートルくらいあるが、幅は7センチ程度で、実際に強度の問題さえなければ、洗濯物を干すのに相応しい形状をしている。

R0010663.jpg
(拙宅のベランダに紛れ込んだアンテナ君)

どれほどの実力があるのか不明だが、ネットではそれなりに評判もいい。というより、もはやこれしか選択肢がなかった。このアンテナならばベランダに設置しても、「忍法変わり身の術」を駆使し、実用的な物干し竿や洗濯ロープに紛れ込んで、自らの存在感を上手く消すに違いないと十分期待できた。

文字通りに最後の頼みの綱としてこのアンテナを取り寄せ、写真のようにベランダに設置した。結果は、評価を付けるならばB+か。最高ではないが、とりあえず満足している。受信感度を示すメーターは5段階の4に上がり、普通に聴く限りは、クリアーなステレオを受信するようになった。これでようやく東京の小さなホールで行われているコンサートのライブ放送を楽しめる。PCMで録音する気にもなる。

ところで、実際に録音して気がついたこと。
スピーカーを通して聴いている分にはほとんど問題がないのだが、携帯プレーヤーに落として、イヤフォンやヘッドフォンで聴くと、実はかなり驚くことになる。

「FMラジオって、こんなにノイズが多かったんだ!」

デジタルに移行して、いつの間にか、ノイズのことをきれいさっぱり忘れてしまっていた。実は今でもときどきレコードは聴いている。当然、盛大なノイズが乗っているはずだが、レコードをヘッドフォンで聴くことは絶えてなかったし、たとえヘッドフォンで聴いて、ノイズが気になったとしても、おそらく「これはレコードだから当然だ」と思えたかもしれない。しかし、FM放送の方は、すでにインターネット・ラジオも日常化し、実際、NHKにしても「らじる・らじる」でデジタル放送を行っている。私自身パソコンの前に座っているときにはネットラジオをイヤフォンで聴くこともある。それと比べると、我家のアナログ受信によるノイズは、正直、当初はかなり気になった。デジタルに負けた気さえした。「いっそのこと、せっかくのFMステレオ放送だが、ノイズ対策にモノラルで受信するしかないか」と考えたりもした。モノラルで受信すれば、FM変調/復調のプロセスがないので、ノイズは激減する。

けれども、こここそがこの一連のブログの「オチ」なのだが、携帯プレーヤーに落として、静まりかえった深夜に、通奏低音のようにノイズの乗ったライブ演奏を聴いていると、いつの間にか知らないうちに、そんなノイズは全く気にならなくなってきた。「人間はどんな苦痛にも慣れる」と言ったのはドストエフスキーだったか。ともかく、少なくとも耳はノイズに慣れる。考えてみれば、ときどき使用するQUADのパワーアンプは、トランスからハムノイズのような音がする。つまり、アンプが唸っているのだが、実はあまり気になったことがない。きっと事情を知らない人が聴けば、このトランスの唸りも気になって仕方ないに違いない。

ノイズ。確かに非常に不思議な存在だ。
案外と今回のFM放送回帰への取り組みが与えてくれた最大の愉しみは、ノイズへの感受性を取り戻してくれたことだったかもしれない。それを褒美として、FM放送に関する記事の締めとしよう。(H.H.)
posted by 冬の夢 at 00:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 オーディオ・楽器 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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