2012年07月08日

ラジオとインターネットラジオ(3)

最初は、「そういえば久しくラジオを聴いていないよな……夜、自分しか起きていない闇の中で、ラジオの小さな灯りを見ながら、見知らぬ人の話す声を聴くのって、なんかそれだけで懐かしい気がする」と思っていただけだった。そして、とりあえず手に入るラジオを試しに買ってみた。それがいつの間にか、とっくの昔に処分したステレオ用のチューナーにまで手を伸ばすことになろうとは! 人間とは何と欲の深い生き物か(あるいは私だけ?)

しかし、決して責任転嫁するつもりはないが、「らじる・らじる」やBBCなどのインターネットラジオの音質がもう少し良ければ、以下に記すような「大騒ぎ」は決して起きなかっただろう。

NHKのFM放送は、近年はめっきりクラシック音楽やジャズの番組が減り、以前ほどには魅力的な放送局ではなくなってしまった。中でも噴飯すべき最たることは、AMと全く同じ番組を昼夜問わず流していたり、再放送を恒常的にしていること。つまり、FM放送にお金をかけていないことは火を見るよりも明らかだ。時代が地デジや衛星放送にとっくの昔に推移していることは百も承知だが、もう少し何とかなりませんかね? 音楽を聴くにはラジオで十分なんだし、魅力的な番組を作るのにそれほど資金が必要なわけではないのだから、頭とセンスを使えば、FMラジオは今でも十分に魅力的なメディアだと思うんだが。

このように、愚痴りたいことは百とあるが、それでも、夜の7時半からのプログラムにはときどき「お宝」のようなものが散見される。国内、海外でのライブ公演が聴けるのはありがたい。夜中にあるジャズの生収録も嬉しい。これらの番組を少しでも良い音で受信し、願わくば録音してみようと、とうとう平常人が渡らない橋を渡ってしまった!

ST9030T.jpg
(Technics ST-9030T)

ネットオークションで買いました。

往年の名機とも言われているらしいTechnics(某大手電器メーカーのオーディオ部門を独立させた会社だったが、すでに朝露と消えてしまった)のチューナーに決めた経緯は、かなり単純。というか、成り行きに任せていたら、自ずとこういう結果になってしまった。昔からチューナーで評価の高かったのはTRIO(今のKENWOOD)か、あるいはPIONEERであり、最初はこの両者のハイエンドを狙っていたのだが、特にT社のハイエンドは、驚いたことに中古でも今なおかなりの高額商品。10万円くらいの値がついていることもある。その上、中古購入にはつきものの修理・調整代を上乗せすると、予算の上限を軽々と超える。たかがチューナーで家庭内不和を招き寄せるわけにはいかない。ハイエンドからは早々と撤退することにした。

次に脳裏によぎったのは、中学生〜高校生の往時、エアチェックに夢中になっていた頃(夢中といっても、要は、レコードを買うお金がないから、仕方なく安上がりにラジオから録音していたに過ぎないのだが)、その頃使っていたYAMAHAのレシーバー(若い人はこんなもの知らないだろうな?)を手に入れようかと、ちらりと考えた。これは純粋にノスタルジー。ネットを漁っていたある日、「これは昔我家にあったものと同じだ」と気づき、「そもそも、いつ我家から消えてしまったのか?」と寂しく思い出して、あたかも過ぎ去った時間を取り戻さんとばかりに、しばらくはY社のレシーバーを探し回った。かつて我家にあったのはシリーズ中一番安価なCR-400というもの。このレシーバーには「マイク入力端子」というのがパネルの全面についていて、中学生だった私は、家人のいないときを見計らい、オーディオ・アンプをエレキギター・アンプの代用にするという暴挙を繰り返していた。(さすがにオーディオ・スピーカ−から出力することは自粛し、ヘッドフォンで鳴らしていたけれども。)
(参照)https://www.audio-heritage.jp/YAMAHA/amp/cr-400.html

CR-400には600、800という上位機種があり、特にCR-800というのは、当時の定価が12万という、ご大層な値段がつけられているだけあって、アンプ部もチューナー部もそれぞれ単独機に劣らない高性能を発揮するらしい。これには実際かなり触手が伸びた。往時を懐かしむCR-400か、シリーズのフラッグシップであるCR-800か。これらの機種を入手するに必要な費用は、一晩に3軒の飲み屋をはしごし、深夜にタクシーで帰宅するような、滅多にないにしても、一年に数回はしでかしている夜遊び程度なので、家庭内に生じる風雨も「遊泳禁止」になるほどではない。しかし、ここでも二つの障壁があった。一つは、すでに我家にアンプが3台もあるという事実。つまり、アンプはダブついている。使われない機械はいつしか妖怪化し、ときに火を噴くとも脅かされているので、これ以上危険分子を増やすのもどうか。ただでさえ登板回数が限られ、ふてくされ気味のリリーフ陣を抱え込んでいる現状に、ロートルとはいえ期待の新戦力をトレードで招き寄せたら、元からいる控え選手が造反することは、大いに考えられる。ともかく、アンプは要らない。必要なのはそこそこの性能を持つチューナーなのだ。

もう一つの否定的要素は、CRシリーズのデザイン。というか、オーディオ装置に対するコンセプト、フィロソフィーの問題。参照に挙げたサイトの写真を見ていただければ明らかだが、通常、オーディオ・アンプには高音や低音を補正するトーンコントロールなどの、様々な調整を行う機能があり、当然ながらそれぞれの機能に対応するスイッチ類が配置されている。ところが、普段私が使っている3台のアンプには、それらのものは何もない。ただボリュームと入力切り替えのスイッチがあるだけである。3台のうちわずかに1台だけが、この二つの機能に加え、左右のスピーカーの音量バランスを備えている。つまり、私はオーディオ装置に関して、過激かつ愚直にストイックで、バカの一つ覚えのように「シンプル・イズ・ベスト」を信心している。これが、ほとんど根拠のない、単なる思い込みに過ぎないことを、自分自身が百も承知なのに、パネルの上にスイッチやダイヤルがこれ見よがしに配置されていると、それだけで少しげんなりとしてしまう。ついでに、私が嫌いなのは、リモコン。テレビのリモコンでさえ違和感を覚えるのに、オーディオ装置のリモコンとなると、30畳のリスニング・ルームならばいざしらず、その必要性が全くわからない。もっとも、我が愛読書の『リア王』には、「『必要性』などを持ち出すな! そんなことを言い出したら、人間に本当に必要なものなど、ほんのごくわずかだ。必要なもの以外は必要でないというなら、お前たちは今持っている衣服も家も、車もクーラーも、後生大事に隠してきたへそくりも、奥さんも子供も、それどころか世間の目を忍んで囲ってきた愛人も、何もかも必要でなくなる」という、猛烈な台詞がある(もちろん、記憶に頼っているので、興味のある人はちゃんと『リア王』を読んで下さい)。
ともかく、今必要なのは、そこそこの性能のチューナーであり、アンプ機能のあるレシーバーではない。まして、FM放送を「受信する」にはトーンコントロールもラウドネス機能も、全て宝の持ち腐れ。

かように、かろうじて理性の力を取り戻し、すんでのところでCR-800の購入を回避できた。(ネットでの買い物は、ご経験の方々には熟知のことでしょうが、ただリターンキーを数回押すだけの、ほんのわずかな肉体的な運動で決済されてしまうので、日々理性の力が試されます。)

以上のような、傍から聞けばひたすら愚かな煩悩を満喫しつつ、ネット・オークションを回遊していると、チューナー本体ではなく、「チューナー調整します」という出品を見つけた。提示された価格も極めてリーズナブル。唯一の問題は「機種限定」ということ。もちろん、これは修理業者の良心の表れと理解すべきであろう。自信をもって調整できるのは基本的に以下の機種に限る、と。そして、その提示されたリストの中に、先に言及したT社やP社の人気機種と並んで、テクニクスのST-9030Tが混じっていた。調べてみると、評価もかなり高い。すると、運とはそういうものなのか、手頃な価格でこの機種が見つかった。という次第で、中古のチューナーが届くやいなや、基本的動作に問題がないことを確認して、続いて即、上記の調整業者に調整をお願いすることにした。調整をお願いした人が言うには、「個体としてもかなり程度がいい」らしく、調整だけではなく若干の修理(ランプの交換、など)もしてもらい、「そこそこの性能のチューナー」獲得は無事終了。

道具はそろった。しかし、目指すは「インターネットラジオよりも高音質」な録音である。録音機にはアナログにはアナログという「王道路線」も当然考慮されたが、今さらオープンリール・テープデッキを入手するわけにもいかず(家庭不和断然回避!)、カセットテープ・デッキでは、少々心許ない。ここは一気にPCM録音機を導入。これは、価格はいざしらず、何と言っても本体が安物のボイスレコーダー並みの大きさなので、「知らないうちに、昔からそこにあった」かのように擬態することを得意にしている。導入することにそれほど大きな問題はない。まして、比較すれば怪物のように巨大なチューナーの蔭に、まるでコバンザメのように潜んでいれば、そもそも家人はその存在に気づきもしないだろう。で、早速これもゲット。(趣味や道楽には、かようにお金がかかる。しかし、悪友たちは、「その程度の道楽ならば、罪は軽い」と、よく言えば親切に慰めてくれ、悪く言えば、悪事をそそのかす。)

もうこれで、完全に道具はそろった(はず)。都内に住んでいた頃は、東京タワーが見え、渋谷のNHKにも頑張れは自転車で行ける距離に住んでいたので、Tの字型にした加工したフィーダー線を室内の壁に伝わせておけば事足りた。しかし、田舎暮らしの現在、放送局に行くには電車でも小一時間、電波塔の姿は見るべくもない。当然FMの電波は弱い。こんな場合、昔はアナログテレビのアンテナに「寄生」すれば、FMもきれいに受信できた。厳密にはアナログテレビとFM放送は周波数帯が少しずれているのだが、実際上はまず問題はなかった。しかし、テレビがデジタル放送になった今、マンションの共有アンテナでFMが受信できるのか?

ネットでの噂に耳を傾けたところ、「運が良ければ」という声もあったが、概して見通しは暗かった。怖々とチューナーとアンテナ線を接続し、地元の放送局に周波数を合わせると、はたして結果は無残にも敗北(?)。受信を示すメーターは、5段階の内わずかに3。こちらの希望は、当然ながら4を超えて、限りなく5に近づくのが理想。3程度ではパソコンで「ラジオまがい」を聴いている方がマシというものだ。ステレオ受信を示すランプは点灯しているし、音声も鮮明に聞こえはするが、「インターネットの音質を超える」とは言い難い。これでは、これまでの投資が文字通り水泡に帰してしまう。いや、それ以前に、道楽としても全く成立しない。まだ何も達成していないのだから。

マンションの共有アンテナがダメとなれば、残る最後の手段は自前でアンテナを上げるしかない。
(この稿、まだまだ続く)(H.H.)
 
posted by 冬の夢 at 22:25 | Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽 オーディオ・楽器 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私も、このCR-400を所有しており、調整やOHなどしたいと常常思っておりましたが、料金の事を考えると薄給の身では、中々決断しかねまして・・・今まで(調整の件は)ズルズル延ばし延ばしになっていました。差し支えなければ、調整にかかった料金をお聞かせ願えればと思いコメントさせて頂きました。
Posted by たかぽん at 2016年02月27日 21:45
申し訳ありませんが、修理を頼んだのはCR-400ではなくTechnicsのST-9030Tの方でした。ですから、CR-400のことはわかりませんが、ST-9030Tの調整には1万円弱の費用がかかりました。ネットで修理屋さんを見つけて、相談してみるといいのではないでしょうか? 修理屋さんもピンキリだと思いますが、電話でやり取りしているだけでも、何となく相手の人間性がわかるような気がして面白いと思っています。
Posted by H.H. at 2016年02月27日 22:52
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