2021年12月04日

オミクロンじゃない! ズミクロンだ!

 ズミクロンM35ミリF2──レンジファインダー写真カメラのレジェンド、ライカM型で使う、傑作レンズです。
 ライカM6という機種でこのレンズを使っていました。どちらも、持っているカメラやレンズのなかで、いちばん高価です。

 カメラオタクの自慢話ではないですから、ご心配なく。
 ライカのカメラとレンズはひとつずつ持っているだけで、ほかにさしたるカメラやレンズはありません。ライカも、フィルムで撮らなくなったから、かなり長い間しまわれたきりです。
 カメラや楽器は、使ってなにをするかにしか興味がないから、この文もすぐやめます。

 オミクロンなんて、まぎらわしいワルモノのほうが有名になってしまって、ズミクロンが、さぞかし腹を立てているだろう、という話です。

 プロのカメラマンでも芸術家でもないわたしには、ライカは分不相応です。なのに持っている理由は、昔、プロカメラマンたちからすすめられたからです。
 当時、カメラマンに知り合いが多く、何人かに「ライカで撮りましょうよ」と誘われたのです。ひとりが、買うのにわざわざつき合ってくれました。
 ライカの話をすると、すぐに本一冊になってしまうでしょう。フィルムカメラの時代は、そのての書籍や雑誌があれこれありました。そこまでの知識はありませんし、ライカのことはあまり知らずに使いはじめました。ライカやカールツァイスのことを多少知ったのは、ずっと後です、製品の種類や性能より、ドイツ現代史や戦後分断史と両社の関係が、興味深いです。
 というわけで、おわり……というのも芸がなさすぎますね、どうしようか。

       

 撮った感想はむずかしいです。長らく使っていませんし。
 マニアならM6より古いM3や、同じMでも最新デジタル機のM10シリーズで使い、比較するのですか。ズミクロンM35ミリF2は長年製造され、何世代か違いがあるので、撮り比べするのでしょうか。
 いずれもわたしがやったら、まちがいなく破産します。
 フィルムカメラしかない時代に、さまざまな機材で撮影されたポジフィルムのスリーブをどれほどたくさん見たか、想像もつきませんが、必要ないことだったとはいえ、使われたレンズをいい当てたことなど、ただの一度もありません。

 背のびして買ったズミクロン35ミリは、だんだん使わなくなりました。
 事情でモノクロプリントができなくなったせいもありますが──ライカやカールツァイスのレンズは、なぜかモノクロで撮りたくなります──このレンズの特徴が、だんだん苦手になってきたのです。不遜もいいところです。

 絞りを開いたときと閉じたときで、写りに差があったのです。
 絞りを開くと、ふわりとした空気感で写ります。ユメユメしいのではなく重い芯があり、うまい構図で写せると、存在感があるカットになりました。
 あら、使った感想、けっこういえているような。
 ならば、絞りを閉じたらですが、まさに表現主義です──というか、その影響をうけたオーソン・ウェルズの感じでしょうか、光と影のコントラストが爽快で線が鋭いです。表現主義といっても、ライカの故郷のドイツでなくカナダで設計されたレンズですけど。

 いまいった「差」は、このレンズらしい、ひと粒で二度おいしい魅力なんですが、そこが困りました。
 雰囲気の揃ったひとまとまりの写真にしたいが、同じような場面でも絞り値によって写りかたの違いが目立つ場合があるわけです。絞りをあまり動かさず撮りたいですが、アマチュアですからカメラがぶれやすく、シャッター速度の設定に限度があります。どうしても絞りで、適正露光へ持っていくことになるからです。
 そんな偉そうな理由で、ズミクロン35ミリF2と、やや縁遠くなりました。某国産レンズをM6につけて撮っていたこともありますが、本格的に写真を扱う仕事になるにつれ、余暇に撮るのもやめました。

 じつはいま、デジタルカメラで気軽に昔のレンズを使うことができます。各種レンズを装着できる仕組みがあり、M型ライカ用レンズをライカでないカメラにもつけられます。
 それは、いまのところやるつもりはありません。
 カメラは「のぞいて撮るもの」だった世代ですから、光学ファインダーなしでライカレンズを使う気にはなれません。一眼レフはどうかというと、M型ライカのファインダーしか写真にすべき視界を持っていないと思います。借りてのぞいてみて最高だったのはライカM3ですが、使いにくく、より現代版のM6を買ったのです。
 ライカM型がデジタルになっているM10シリーズで写せば、フィルムじゃなくても撮れるじゃないかって? だから、破産しますから……。

       

 ずいぶん前ですが、このズミクロンM35ミリF2で、イタリアで写したことがあります。
 イタリア人の友だちのところへ、しばらく行っていたときです。
 帰国後その彼に、写した写真を送りました。モノクロ8×10サイズ、彼の家の室内で飼いネコを撮った、どうでもない写真です。
 何年かのちに伝え聞いた話があります。
 イタリアにいる彼を、あるプロカメラマンが仕事の縁で訪ねました。わたしも面識がある、広告写真の第一人者でした。
 そのカメラマン、飾ってあったモノクロのネコ写真を見つけると、じぃっと見て、こうつぶやいたそうです。

 これ、ライカでしょ?

 ネコの写真を見て「これ、ネコでしょ?」とはいわないだろうけど、わかるものなのかな、ライカレンズで撮った写真って? (ケ)

211204sM.JPG 
ひさしぶりに出してみたら、合焦部が固まってました!
 お前が使わないからだろ! ってレンズに怒られている気がする。
 修理代、貯めなくちゃ……。

 
※ こちらがそうです。すべてが、そのとき撮ったものではないですし、オリンパスXAで撮った写真がまじっています(発売価格がM6+ズミクロン35ミリF2の20分の1くらいのコンパクトカメラです)。プリントスキャンデータで、カットにより、かなり処理をかけています。

posted by 冬の夢 at 13:15 | Comment(0) | 写真 カメラ・写真家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする