2020年10月18日

「男はつらいよシリーズ」全作品鑑賞苦行記 B(まで来た)

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「男はつらいよシリーズ」連続鑑賞をなんとか継続して、第二十六作まで来たところ。折り返し点を通過しながらも、シリーズがパターン化・マンネリ化していくのを見ると次第にいたたまれない気分になって来る。とは言え、ここまで来て途中棄権するのももったいない。この記事自体もおざなりで型通りになってしまっていることを自覚しつつ、製作順、タイトル、公開年、マドンナ女優、採点(双葉十三郎基準)、騒動、特徴の順で記録しております。


[18]『男はつらいよ 寅次郎純情詩集』1976年12月 京マチ子 ☆☆★★
【騒動】旅先から帰ったばかりの寅。満男の担任・檀ふみが家庭訪問に来て、博とさくらを差し置いて保護者のような顔で面談してしまう。とらや全員から非難されて飛び出した寅は旅芸人一座と再会。座員を宿に招いて祝宴を張るが、翌朝無銭飲食で警察へ。連絡を受けたさくらが迎えに来る。久々にゲンナリする悪行と犯罪クラスの騒動。
【特徴】檀ふみに惚れそうになる寅にさくらが「娘くらいの子よ。そのお母さんならともかく」と忠告。そこへ母親役の京マチ子が現れて「公認の相手」になる仕掛け。

[19]『男はつらいよ 寅次郎と殿様』1977年8月 真野響子 ☆☆☆
【騒動】題経寺で「トラ」と呼ばれていたノラの仔犬を引き取ったおいちゃんとおばちゃん。そこへ寅が帰って来るが、おばちゃんや博が「トラトラ」と呼ぶのを自分のことを言われたのかと勘違い。バカにされたと出て行ってしまう。
【特徴】「ゲスト俳優=先生」のパターンで嵐寛寿郎の存在感が圧巻。死んだ息子の嫁と暮らしたいという舅がいたらスケベ爺にしか思えないが、アラカンが演るから全く下品に見えない。

[20]『男はつらいよ 寅次郎頑張れ!』 1977年12月 藤村志保
すみません、見逃しました。

[21]『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』1978年8月 木の実ナナ ☆☆★★
【騒動】寅が夢のようなとらや再建計画を語り、そんな甘くないと言うタコ社長と喧嘩になる。とらやを飛び出た寅からの葉書には「熊本の旅館にいて宿賃がない」と。さくらが熊本まで寅を迎えに行くが、送金すれば済むのにと思ってしまう。
【特徴】松竹歌劇団のバックステージものにもなっている本作。木の実ナナはトップスターなのに結婚するとなぜ引退しなくちゃいけないのか。「女性の結婚=専業主婦になる」という時代の作品なのだった。

[22]『男はつらいよ 噂の寅次郎』1978年12月 大原麗子 ☆☆★★★
【騒動】銀行から帰って来ないタコ社長。金策尽きて自殺したのではないかと葬式の準備を始めようとする寅。旅に出るはずが大原麗子を見た途端、仮病の腹痛で救急車で運ばれる寅。森川信でなくても「バカだねえ」と嘆くしかないくらいに本作の寅はバカにしか見えない。
【特徴】脚本がダメ。デリカシーがない変な中年男の寅になぜ早苗が惹かれるのか全く描けていない。でも大原麗子が歴代マドンナの中でも最高ランクに綺麗でチャーミング。★ひとつおまけ。

[23]『男はつらいよ 翔んでる寅次郎』1979年8月 桃井かおり ☆☆☆
【騒動】三重丸をもらった満男の作文を寅が読み上げると「いつも振られているおじさん」と自分のことが書かれていた。「子どもはよく見ているね」と感心するタコ社長と取っ組み合いに。
【特徴】なんと言っても布施明。「君は薔薇より美しい」でヒットを飛ばした後なのに情けない若者役を飄然と演じている。寅が仲人をつとめる披露宴でのギターの弾き語りが歌手ならではの見せ場。

[24]『男はつらいよ 寅次郎春の夢』1979年12月 香川京子 ☆☆★★
【騒動】おばちゃんが貰い物の葡萄を仕分けしているところに帰ってきた寅の土産も葡萄。さらに満男が英語塾に通っていることからTigerの単語が喧嘩を引き起こす。あいみょんではないが「どうでもいいよもうどうでも」。
【特徴】脚本家レナード・シュレーダーと出演者ハーブ・エデルマンは『ザ・ヤクザ』から五年後に本作に参加。さくらがエデルマンから愛の告白をされる展開が珍しい。

[25]『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』1980年8月 浅丘ルリ子 ☆☆☆★
【騒動】リリーが急に旅立って沖縄から後を追った寅は柴又に着いた途端「行き倒れ」に。戸板でとらやに運ばれた寅だが、おばちゃんが用意したうな重に喰らいつく。あれ?うなぎ嫌いなんじゃなかったっけ。
【特徴】沖縄でリリーがプロポーズし、柴又で寅が「所帯でも持つか」と呟く。旅回りのふたりはどこまでもすれ違うしかないのか。本作はシリーズの基本設定に疑問を投げかける。沖縄から帰らない寅のことを気にかけるおばちゃんの台詞「ハブにでも噛まれて死んじまったんじゃないのかい」は、シリーズには珍しい楽屋落ち。

[26]『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』1980年12月 伊藤蘭 ☆☆☆★★
【騒動】諏訪家が一戸建てを購入したと聞き祝い金を包む寅だが、思いがけない金額に博とさくらは受け取れないと言い出し、寅は出て行ってしまう。「なんで気持ちよく受け取ってくれないんだよ」と寅が言うのももっともで、珍しく寅に共感出来る騒動になっている。
【特徴】マドンナに惚れるのではなく、父親代わりの思いを寄せる寅。伊藤蘭の演技力には心底驚かされるし、松村達雄先生による定時制授業風景も良し。寅の真面目な足長おじさんぶりがしみじみと伝わってくる佳作だ。


フーテンの寅が愛すべき存在であったシリーズ前期に比べると、中期にさしかかってそのキャラクターが徐々に鬱陶しく感じられて来る。呑気で屈託のないひょうきん者は悪ふざけが過ぎる不届き者に、無邪気で他愛ない失敗や勘違いは不謹慎で非常識な仕業に変容する。『寅次郎春の夢』の一場面。アメリカから来たセールスマンに寅次郎は梅干しを無理矢理三つまとめて食べさせる。吐き出しながら「水を下さい」と叫ぶアメリカ人のことをヘラヘラ笑いながら寅は参道へと出かけて行く。このようなガキ以下の悪ふざけをする主人公を観客は愛せるのだろうか。展開が読めて安心だからこそのワンパターン化は、代わり映えのしないうんざりするような退屈さに堕してしまった。映画として見るべき作品は、第十七作『寅次郎夕焼け小焼け』が最後だったのかも知れない。
と考えていたら第二十六作『寅次郎かもめ歌』は意外な小品だったのだ。寅次郎が歳を重ねて恋煩いをするのが似合わなくなったことから、保護者的な立場でマドンナを思いやるという新しい展開が生み出された。加えて第二作以来満男を演じてきた中村はやと君の起用が『かもめ歌』で打ち止めとなり、次作から別の俳優に取って代わられる。この記事にCがあるとしたら、語るべきはその俳優のことになるのだろう。(き)


かもめ歌.jpg

posted by 冬の夢 at 23:24 | Comment(1) | 映画 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 かつてテレビで何作か観たきりで「つまらん」と決めつけたきりのシリーズでしたが、「苦行記」によって、テレビで観たのはこのあたりの作だったせいか、とも思いました。なので、初期作を観てみようかと思っていますが、なかなかとりかかる「ふんぎり」がつきません。それにかぎらず、映画館やフィルムセンター、レンタル店などに行けないこともあり、だんだんと映画を観る気力がなくなって、まれに配信で昔の映画を観てみようと思っても、つい「ネタバレチェック」をして選んでから、観てしまいます。邦画の近作は、はなから観る気になれず、ここ三〇年くらいの間に公開された日本映画は数えるほどしか観ていないことに気づき、われながら驚くしまつです。
Posted by (ケ) at 2020年11月04日 01:03
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