2020年09月22日

府民の危機に届くことば─大阪府知事・吉村洋文のポピドン会見と、ひとりの府民女性の情報公開請求

 大阪府知事の吉村洋文が8月4日に開いた、「大阪府立病院機構大阪はびきの医療センターによる新型コロナウイルス感染症患者への研究協力に係る共同記者会見」を、その数日後、このブログでとりあげた(8月10日)。
 お忘れのかたのために、かんたんに説明すると、いまとなっては発表内容より「うそみたいなホントの話で、うそみたいなマジメな話」という冒頭発言のほうがよほど知られてしまっている「ポピドン会見」あるいは「イソジン会見」のことだ。
 実質的には研究初期段階で、しかも明らかに科学的根拠の弱い見解を「コロナに対して非常に大きな、効果があるだろうと、いう研究が出てます」と知事自身が発表・解説し、市販のうがい薬≠ェ「コロナに、ある意味、うち勝てるんじゃないかと、いうふうにすら、思っています」と発言した、あの記者会見だ。

 危機の時代に生きる人たちに「届くことば」について考えてみたくなり、このブログで紹介しはじめた。
 新聞やテレビの情報にほとんど接さないので数は限られるし、実際に「ことば」に接してみると、報道メディアが紙面や時間に限りがあるからと行う、いいとこ取りの編集をしてはならず、全文を紹介しなければいけないと知ったので、手間がかかってなおさら少ない件数の紹介になっている。
 ただ、それらの「ことば」が、いかなる背景や文脈のもとに、どのように届けられようとして発されているのか知ることの大切さは、よくわかった。

 吉村洋文・大阪府知事の「ことば」をとりあげたのは──あまりにも徒労感がひどくて全文は書き起こせなかったが──たちまち大阪でうがい薬≠ェ売り切れはじめたほど「届くことば」でありながら、その「背景や文脈」がまったく不可解で、むしろ興味をもったからだ。
 もちろん会見直後から、さまざまな憶測や非難が飛んだが、撤回も謝罪も行われることはなく、話はうやむやに終わっている、と思う。アホの大阪やからと相手にしない人か、いっしょうけんめいやっとることをゴチャゴチャいうなと逆ギレする、吉村のことが大好きな大阪のアホのどちらかしかいないような気がする。書いてて自分でもゴッチャになってきたけど。

 しかし、うやむやにしない人もいた。たったひとりの大阪の女性が、うやむやにしなかったのだ。
 すでに拡散されているので、ご存じのかたも多いだろう。わたしは新聞にとり上げられていることで知ったので、この文でこまかく解説する必要はないと思う。
 その人は、ウエブ上で「ごくごく普通の大阪在住の会社員」と自己紹介している女性だ。しかし、創作投稿サイトの「note」に、なんと700ページ以上の行政文書を公開している。

 学会発表や論文化がなされていない段階でセンセーショナルに会見を行うことに対して疑念を抱き、そして、同日に関連銘柄の株価が急上昇したことから、株価の変動に対して十分に配慮がなされたのかを問いたくなり、初めて情報開示請求を行いました。

 と彼女は書く。そう、初めての行動だったのだ。
 わたしは、このブログで会見内容(抄)を紹介した自分の文に「吉村に、お願いしたいことがある。わたしの、貴重な人生の残り時間を、むだな作業に浪費させないでほしい」と書いた。
 その気分を晴らすためには、がまんして確かめるべきを確かめねばならなかったが、それを彼女はひとりで、大阪府知事に対して行った。そして府の行政文書公開制度にのっとり、わたしがあきらめたイソジン会見の「背景や文脈」が、いきいきと記録されている資料が、お下げ渡しになったのである。
 なんというすばらしい国だろう! いや、国のほうは、そんなもの(公文書)はどっかやっちゃった、といっていたか、そういえば……。

 ぜひたくさんの人の目でご覧をいただいて、複数の目線からこの文書を見ていただければと思い(略)ここで公開をいたします。

 と彼女はダウンロード画面に書いている。
 きょう知ったばかりなので、ほんのさわりしか見ていないが、科学者あるいは政治家でありながら科学と政治を弄ぶ、愚かなお調子者たちの姿が、まるで吉本新喜劇の舞台のように見てとれる。聖書でもあるまいに「はじめにイソジンがあった」になってしまってもいる。
 そして、府の専門部門長の立場で同席していながら、この喜劇役者たちを割って止めようともせず、うがい薬確保や合法的発表の技術論に終始するさらに愚かな行政担当者(藤井睦子・大阪府健康医療部長)も、結果としていっしょに踊っている(そもそも藤井は、5月初旬時点で、松山晃文・地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪はびきの医療センター;次世代創薬創生センター長の持ちかけに、メールで『イソジンですね。面白いですね。』と応答しており、かなり早い時点からイソジン──商品名である、念のため──が、ひとり歩きしていたこともわかる)。

 もちろん「全文」を見たわけではないから、内容に踏み込むのはこれくらいにしておく。
 この文はもちろん、このブログで、たぶん何度も、大阪にはアホしかいない、みたいなことを、自分も大阪府生まれのくせに書いたと思うが、心からお詫びします。(ケ)

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※9月21日付の毎日新聞ウエブサイト(地方版)で知った。記事を書いた記者は、9月8日に、この事実を知っていながら、なぜか投稿サイトに書かれた彼女の見立てを引き写しているだけだ。しかも「興味深い情報開示があった場合は、記者のツイッターアカウントにご連絡をお寄せください」とまで書いている。新聞記者って、それでいいのだろうか……。


Originally Uploaded on Sep 23, 2020 01:05:17
posted by 冬の夢 at 23:55 | Comment(0) | 時事 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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