2020年08月31日

たまには詩でも #14 夏の夜

   夏の夜

疲れて
何もしたくないとき
箸を持つのもペンを持つのも億劫で
食べることも字を書くことも面倒くさいとき
できることと言えば
死んだみたいに眠ること
そしてせいぜい夢を見る

頭の中に浮かぶことを
何もかも全部書き起こしてみたら
いったいどんなデタラメ、どんな混乱、
どんな狂気が飛び出してくるのか
それとも分厚い書籍で二十巻もあったあのOEDが
たった一枚の薄っぺらなCDに収まったように
もう抱えきれないと思った数え切れない妄想も
たかが知れたものか

目を覚ますと夢は消える
灯りを点すと闇が消えてしまうように
後にはごくうっすらと記憶だけが残り
それも誰かが弾いた弦の音のように
やがて儚く消えていく
そして昨日もまた
今日が訪れるたびに
まるで追い立てられるかのように
次々にかき消されていく
今日が昨日を蹂躙し、無きものにする

とりついて決して離れようとしない妄執
怨霊のように
木の幹にかたくからみつき
そればかりか
繊毛のような
節足動物の無数の足のような
血を吸うヒルのような
不気味な巻きひげを秘かに伸ばし
木の表皮を喰い破らんばかりに
一心不乱にきつく抱きしめている
細く頼りない一本の蔦

夢が夢と同じだなんて−−
人は人生の目標ともなるべきものを
目醒めれば跡形もなくかき消え
すぐにも忘れてしまい
場合によっては永遠に見失われてしまう
そんな儚い夢と見まちがえたとでもいうのだろうか

(H.H.)
posted by 冬の夢 at 23:35 | Comment(0) | 作品(詩・小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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