2020年03月04日

素人と専門家:専門家は問題を難しくするのが好き?

このようなブログを書き続けている以上、自分で書いた駄文の後始末をしておくことも大事だろうから、駄文に蛇足を付けておこうと思う。

たまたまネットを開いたところ、「クルーズ船の隔離は『失敗』だったのか、専門家が語る理想と現実」(元長崎大学熱帯医学部教授で、〈世界エイズ・結核・マラリア対策基金〉戦略投資効果局長という立派な肩書を有した國井修という署名が付されている)という一文が目に入った。どうやら『Newsweek(日本版)』の3月10日号に掲載されるらしい。ざっと読んでは見たが、残念ながら特筆すべきことは何もないように感じられた。つまり、その記事に書かれているようなことは私のような素人にも大方予想が付いているか、あるいは別ルートですでに頭に入っているようなことばかり。こういう点ではインターネットの発達はありがたいともいえる。

しかし、その記事の「クルーズ船の対応は簡単に失敗とは言えない」という主張には全く納得がいかない。本文にはこう書いてある:

このような船舶のリスクを考えると、早急に全員を下船すべきだった、との批判は正当に聞こえる。私も初めはそう思った。対策担当者もその可能性を探った。しかし、頭で考えるほどオペレーションは生易しいものではなかった。

つまり、ぼくのような素人は「大失敗だ」と声高に非難するが、専門家が考えると、事はそんなに容易なことではなかったというわけだ。というわけで、もう少し本文に耳を傾けてみると、その理由は以下の4点となる:

1)その理由として、まずこのクルーズ船は英国籍であり、横浜港に入港する2月3日までは介入できず、2月6日の接岸後も船長と船会社の意向を尊重しなければならなかった。

2)下船のため、外部の宿泊施設や搬送方法を検討したところ、乗客・乗務員の数が数百人規模であれば実施可能であったが、3000人以上のオペレーションは不可能であった。風評を恐れて、受け入れてくれる民間施設はなかなか見つからない。国や公共の施設にも限りがあった。

3)搬送するために必要な数のバスもチャーターできない。個人間の感染防御対策を考えると、この搬送自体にリスクがある。2月5日には感染者10人が確認され、検疫開始前に既に船内で感染が拡大していたことが判明した。バスの移動でさらに拡大する恐れがあった。

4)仮に下船させれば、症状がないからと、検査もせずに勝手に日本国内または海外を公共の交通機関で移動する者も出てくる。法制度上、一度下船させると、検疫のためにどこかに強制的に停留させることはできない。


1)は問題でも何でもない。当然のことだ。そして、これはむしろ、そもそも横浜に寄港することを許可するのかどうか、という問題だったはずだ。言い換えると、感染が拡大した場合でも十分に対応できるだけの体制が日本側にある、十分対応できると思っていた(思い込んでいた)からこそ、寄港を許可したのであろうし、そうでなければ、一国の判断としてはあまりに無責任だろう。実際に横浜に入港するまでの交渉の経緯については、コロナウイルスが一段落したら次第に明らかになることと思う。

2)3000人以上もの乗客及び乗員を収容できる施設がなかったというのは、「本気で探したのか?」と、それこそ本気で問い質したい。例えば西日本のスキー場はこの冬異常な雪不足のために、どこもかしこも閑古鳥が鳴いていると聞く。千葉のホテルにできたことが、なぜその他のホテルではできなかったのか? また、日本全国にはユースホステルというものもある。さらには宿泊施設だけではなく、すでに廃校した小学校も多い。政府や自治体が所有している保養所もいくらでもある。研修施設も含めれば、その数は倍増するのではなかろうか。そういう様々な可能性を、本当に真面目に追求してみたのか? どう考えても怪しい。繰り返すが、もしも対象者の数が3千人ではなく、3万人であったなら、そのときは素人の私も白旗を揚げる。だが、たったの3千人への対応ができないのであれば、感染症が本当に拡大したとき、この国はいとも簡単に破滅するしかないではないか!

3)バスのチャーターができない! これは、もう絶句するしかない。たったの100台(計算が間違っていたらご容赦願いたい)が用意できない。なるほど、だったら仕方ない。乗り心地ははるかに劣るけれども、自衛隊の車に乗ってもらおう。相手は我儘なセレブかもしれないが、背に腹は替えられまい。それに、「日本のような野蛮国の収容施設には行きたくない」という御仁には、「それならどうぞ船にお残り下さい」と言えば良かっただけだ。それに、前稿の繰り返しになるが、空いている船だっていくらもあるのではないのか? 少なくとも、瀬戸内海では、四国と本州が橋で繋がってしまったせいで、フェリーの就航がどんどんと少なくなっている。ちょっとしたサイズのフェリーであれば、個室だって備えているのではなかろうか? そうした船の利用は考えてみたのだろうか?

4)の問題は、おそらく最も難しい問題だろう。だが、これは外務省と厚生労働省が頑張るしかないではないか。実際にこの問題は人権の問題とも抵触するので、今後は日本国内の感染者にも関連する微妙な問題だ。けれども、一方で、それならば関係諸国の大使を呼んで、自国の人間の保護を求めれば良かったのではないのか?

と、以上のように、この國井修という専門家の発言に代表される「素人さんは簡単に言ってくれるけど、実際はそんな簡単ではないのですよ」という物言いに対して、素人としては「なるほど、そうですか」とは少しも納得できない。

専門家って、自分の土俵を守りたいがために、徒に問題を難しくするってこと、ありませんかね? でも、実のところ、お医者さんは行政の専門家ではないので、収容施設や移動手段の確保については、この國井修氏も我々素人と大差ないだろう。上記の指摘は全て行政の専門家であるお役人の口パクに過ぎず、ここで今展開している非難も、結局は行政に対する批判だ。であるなら、この『Newsweek』の記事は、本来は厚生労働省の責任者(大臣が最適だが、彼は一切の皮肉なしに多忙で無理だろう)か、内閣の報道官にでも依頼すべきことだったと、今さらに思う。(H.H.)

posted by 冬の夢 at 18:42 | Comment(0) | 時事 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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