2019年10月15日

前回の東京オリンピック寄付金つき記念切手を楽しむ(1/3)

 しゃれとる!
 いま見ても、そう思う。
 一九六一年〜一九六四年に発行された、前回の「東京オリンピック募金」記念切手※1。一九六四年秋の開催時発行の公式記念切手はもちろん、今年の春に発行された「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(寄附金付)」切手より、ずっといい。

 正方形の切手を、角を上にしてダイヤ型「◇」に貼って使うようだ。これが外国切手のようで、カッコいい。日本の記念切手では、これくらいしかないのでは。※2
 使いかたとデザインが、みごとに合ってもいる。
 正方形の中に、文字を円型に配したフレームを置いて、さらに内側の円バックに各種目を描きこんである。オールカラーでなく、あえて単色刷りの手描き図案で、メダルのような端正な風格だ。色づかいも落ち着いていて好ましい。お祭りムードは足りないが、古びることがない、いい図案だ。

 もっともこのシリーズ、当時は時期尚早という意見もかなりあったらしい五輪開催の、ドタバタ騒ぎの渦中で、にわか仕立てで決まったことも多いと知った。

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 当時刊行されていた収集家むけ冊子『切手』に、ときの郵政省担当者が寄せた一文を見ると、一九六一年十月の初回発売分は、原稿の印刷所渡しが同年六月中旬。なのに、仕様が決まったのは六月上旬だ。強行日程である。
 凹版一色刷は、カラー印刷機の余裕がじゅうぶんでないことから決まり、円型の文字枠は、統一デザインを速攻で仕上げられるよう、あらかじめ写真にしておいて原画に貼ったものだそうだ。

 前回の東京開催は、一九五九年五月末のIOC総会で決まっていたので、立ち上がりが遅く感じるが、切手の絵柄になる開催種目が決まっていなかった。一九六一年六月のIOC総会を待たねばならなかったのだ。
 東京の組織委員会に電話で催促したそうだが、日本が勝手に種目を決めるわけにもいかない。初回発売の三種類のひとつは、ぜひ「柔道」にしたかったものの、日程問題から見送られ、翌年発行の「第二次」へ回されている。

 そもそも、五輪(前)のための募金つき記念切手を発行できる法律もなかった。「オリンピック東京大会の準備等のために必要な特別措置に関する法律」という長い名の法律ができて発行可能になったのが、これまた一九六一年六月中旬なのだ。
 前回も今回も、台所事情の厳しさは似たりよったりだろうが、ことに前回の五輪では資金不足が深刻に心配され、民間から開催資金を調達すべく「東京オリンピック資金財団」が作られた。それが一九六〇年。財団はさまざまな案を立てるが、なにごとも法律がないと実行できないので、提案と調整に時間がかかった。

 郵政省でも、公式記念切手と別に事前宣伝の記念切手を発行したい考えがあったそうだが、資金財団から郵政大臣に申請書が出たのが一九六一年二月。スタートラインが引かれた時点で、初回発売まで四か月しかない。
 切手の発行も「お役所仕事」だから、日程が押そうが押すまいが事務手続きが略されることはなかったはず。たとえば試刷ごとに何人もがハンコをつきまくったとしたら、いかに現場がヤキモキしたことか。実際に「回校」という、管理職の校正確認があったそうで、分秒の時間も惜しいなかを、カミシモ姿で校正刷を捧げ持ち、シズシズと省内を巡る様子が思い浮かぶ。
 といっても、現場の技術者たちにすれば、時間に追われながらクオリティを求める苦心に比べれば省内手続など、なんでもないことだったかもしれない。

 ともかくも、初回発行の三種類の切手は、無事に発売のはこびとなった。よくやれたものだと、あらためて感心している。(ケ)

つづきは→こちら←

※1「オリンピック東京大会にちなむ寄附金つき郵便切手」
※2 一九九九年十一月発売「天皇陛下御在位十年」切手があります。横菱型です。



Originally Uploaded on Oct. 17, 2019. 19:30:00

posted by 冬の夢 at 00:05 | Comment(0) | 切手 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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