2018年11月06日

モンブランの首が折れた!


 とんでもない悪筆のくせに、なぜか万年筆が好きで、書きやすいペンを求めているうちに、いつの間にか雨後のタケノコのようにペンの数が増え、高級ブランドとして名を馳せているモンブランの万年筆も3本も所有している。そのうちの1本はマイスターシュテュック149という、万年筆の代名詞のような、正にthe Fountain Penと呼ばれてもおかしくないようなゴッツいもの。これは自宅からは禁帯出(サイズが大きすぎるし、どこかで紛失したりすると泣きたくなるから−−以前、お気に入りのモンブランのペンをノートと一緒になくしてしまい、しばらく立ち直れなかったことがある)、もう1本は現在は廃盤のノブレスというお洒落な名前と姿を持ったもの。これは極細字仕様で、手帳用にと思っていたのだが、もしかしたらコンバーターの具合が悪いのか(ひと昔前のモンブランをコンバーターで使おうとすると色々と問題があるらしい)、軸の中でインクが漏れることがあり、残念ながら使い物にならず(安心して外で使えない、ということ)、普段は引き出しの中で眠っている。そして残る1本がこれ。

マイスターシュテュック144.jpg

これも一応マイスターシュテュック(英語でいうmasterpiece=名人の品)なのだが、史上もっとも評判の悪い、そして最も廉価だった144というもの。わざわざ女性っぽいボルドーにしたのは、インクも赤系統のものを使って、文章の推敲や直しに使おうと考えていたから。

 万年筆というのはやけに面倒なところがあり、ペン先の微妙な個性(個体差)もさることながら、紙やインクとの相性というものがある。同じペンでも紙が違うと全く違った書き味になり、ときにはインクのフローが渋くなって、文字がかすれるどころか、書けなくなることさえある。あるいは、インクが滲んでしまい、やはり結果としては書けなくなってしまう。それなのに、同じ紙と万年筆でもインクを代えると、事態が一気に好転し、先ほどまでの難儀はいったい何だったのか、ということにもなる。そんなこともあって、なるべく万能の、いつでも安心して楽しく使える万年筆を探しているうちに、その数が少しずつ増えていってしまうわけだ。

 こうして、数えるのも恥ずかしいくらいの数の万年筆が目の前にあるのだが、その中で信頼が置けるペンは限られている。そのうちの一つがこのMeisterstück144だったのに(だった、と過去形で言わねばならないとは!)。

 男の手が使うにはやや華奢ではあるが、ノートに1〜2ページ程度の文章ならばサラサラと書けるような気にしてくれる、使い勝手のすこぶる良い万年筆で、当然ながら、購入当初の目的だった文章推敲用にも大活躍してくれた。ブルーやブラックのインクで殴り書きのようにして書いた文章の上に、ボルドーやブラウンのインクで書き足したり、二重線で消したりすることで、何となく能率が良くなったような気がしたものだ。おそらくは子供のお絵かきのような感覚なんだろうが、つまりはこれが万年筆を使う魅力の一端なんだと思う。

 ともかく、そうして使っていたこのペンが、ある日、キャップを外して、さあ何か書こうと思ったとき、どうもいつもと感じが違う。なぜだろうと訝しく思いつつ、最初の文字を書こうとした途端、あー、ペン先がグラグラする! まるで脱臼した腕のようではないか! とんでもない事態が起きていることは容易に予想がついた。書くのを止めて、両手で確かめてみると、首のところがグラグラ、ゆらゆらと揺れる。恐る恐るペンの胴と呼ばれる、インクカートリッジやコンバーターを挿すときにクルクルと回して分離する箇所を開けて見ると、ペン先が付いた首と呼ばれるパーツのネジ状の溝が切ってある部分がパックリと折れている。劣化だろうか。それともカバンの中で重い本かカメラの衝撃を受けた結果だろうか。上述の通り、この万年筆、Meisterstückというくせにはかなり華奢で、飾らずに言えば、安っぽい作りだ。したがって頑丈さなど、どこを探しても見当たらない。きっとそれが災いしたのだろう。

 そうはいっても、これは紛れもなく一大事。早速専門店に問い合わせてみた。そして、再度驚かされた。なんと、修理費の見積もりが1万6千円。運が良ければ1万2千円になるかもしれないが、いずれにしても、新しい万年筆が楽勝で買える金額だ。そこで、とりあえず、接着剤で修理してみることにした。そのときはこのブログに書こうなんて少しも考えていなかったので、折れた実態を示す写真を撮っておかなかったことが悔やまれるが、かなり複雑な割れ方をしていたので、はたして接着剤で修復できるのか甚だ疑問ではあった。が、ダメなら修理に出すだけだと考え、自らの不器用を省みず、割れた部分をとりあえずくっつけてみた。これがその写真。

ペン軸.jpg

 一枚目の写真をよく見るとわかるのだが、結果は全然ダメだった。接着したには接着した。接着剤がネジ状の部分に少しはみ出したものの、それでもとりあえずは首と胴もちゃんと合体する。グラグラはしない。が、ペンが微妙に曲がっている。つまり、割れた部分が少し歪んだ状態で接着したということだ。でも、これは致し方ないではないか? 接着するためには圧着する必要がある。圧着したとき、すでに割れて強度を失っている素材が歪まないはずがない。それに、多少曲がっているくらい、万年筆の機能や性能には関係ないともいえる。ちゃんと書けるなら、それでいいはずだ。が、しかし、何とも言えない敗北感を感じていることも事実。それに、いくら接着剤で補修したとはいえ、かなりの筆圧がかかる軸の部分に損傷を抱え込んでいるこのペンを、はたしてこれまで通りに安心して使えるのだろうか?

 だとしたら、やはり1万6千円を用意して、再度専門店の暖簾をくぐるべきか。あー、多分遅かれ早かれ、きっとそうなるのだろう……が、しかし、冷静になれば、こんな安っぽい万年筆の修理に1万6千円も出すのなら、まだ使ったことのない、例えばモンブランと双璧をなすペリカン社の相応な万年筆を購入する方が賢明なのではないか。が、しかし……

 煩悩止まることなし。 (H.H.)
posted by 冬の夢 at 02:52 | Comment(0) | 日記 話題・意見・世相 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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