2018年07月20日

切手を買いに ─ 出戻り初心者郵趣事情(3) 博物館のテナントショップ 

 ちょっと、そこのアンタ! 
 と、松田優作なら難癖をつけるだろうな。
 いい歳して昼間っからチマチマ、切手屋なんかあさってんじゃね〜ぞ! と。

 悪いか、この野郎! ここ何年間かでやっと落ち着いて静かに買いものが楽しめているんだ。ガタガタいうな!
 と、亡くなった松田優作にケンカを売り直すこともないが、いまどき記念切手をわざわざ買いに行く面白さはそこだ。そこに尽きている。

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 買いものの楽しみが薄いと感じ出してから長い。
 ちょっとばかり生活を潤わせたいモノが、楽しんで買えない。
 家電や服、本に雑貨……どれもワチャワチャしていて、口上もウソくさい。いいのか悪いのかよくわからず好きでもないのに、さほど安くもないまま買ってしまう。ひょっとすると食品や洗剤など、必需品もそうではないか。
 外車や絵画、高級ブランド商品をホイホイ買える身分だったら、買いものが楽しくてしかたなくなるのだろうか。

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 好きなジャンルのものを、じっくり見て買える記念切手。
 本格的コレクターが狙うような稀覯品を初めから選ばないかぎり、懐はほとんど痛まないし、多少集めたくらいでは置き場もいらない。なにより、静かに気長に少しずつ、納得しながら買える。
 選んで買う自分もまた、場所ふさぎでないところがいい。ひとり坐れるだけのスペースで、カサコソと切手を繰ったり虫メガネで見たり。家電量販店で、そんなものを買ったら部屋が埋まってしまう巨大なテレビを、さも映りの違いが解るかのような顔で選ぼうとしていた自分が、つくづくバカに思える(テレビは持っていない)。

 切手コレクションはもちろん、基本、激しくマニアックな世界で、見るからにオタな中高年男性の縄張りだ。
 しかし案外と「すき間」も多い。「切手女子」といわれるほどには「女子」の姿は見かけていないが、意外にふつうの人たちが、好きな絵柄や思い出の出来事をテーマに切手を探しに来ている。
「落ち着いて静かに」探して買っているぶんには、イジられたりイヤミをいわれたりするようなことはまったくない。いや、そもそもコレクション歴に関係なく、ほとんどのお客さんが「落ち着いて静かに」買っている。誰もが自分専用の小さい博物館づくりに、好きなだけ夢中になっていいのだ。

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 というわけで、今回は切手専門店で、集めはじめたシリーズの「つづき」を買ってみることにした。
 子どものころは、スタンプショップといっていた専門店で買ったから、知らない存在ではないが、半世紀近くのご無沙汰で、ちょっとハードルが高い。
 じつは、すでにいくつか訪店してみているが「落ち着いて静かに」とまではいかず、ちら見する程度。お店のせいじゃないですよ。気おくれだ。こういうシリーズを集めていますと告げたら、「初日カバー」といわれる何万円もする収集家向けの品がずらりと出てきて、ビビったりもして。
 この点では、即売会やフリーマーケットのほうが、マニアックな面もあるが気軽な入り口もあったということか。

 その昔は、真夏だろうが真冬だろうが、中古レコード・CD店があると聞けばネットの情報もガイド本もなしに地の果てまで行ったが、この夏この歳で、そんなふうに切手店を探したら死んでしまう。
 そこで、即売会へ行ったとき見つけた店に行ってみた。東京・目白の「切手の博物館」、ミュージアムショップのいちばん奥にあるテナントショップ某店だ。集めているシリーズが店頭のカゴにまとめてあるのに気づいていた。

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 広くはないスペースに切手やファイルがぎっしりだ。店の前の細い通路で、ごく小さいテーブルに向かうか、椅子を出してもらえて、肩をすぼめて選ぶ。
 初訪問だとやはりすこしビビるが、博物館内の店だからか、コレクターらしからぬ人も買っているし、お店の人がとても親切で、初心者質問にもていねいに答えている。希望が抽象的でも、たちまちファイルを出してくれて、切手の取り出しかたも教えてくれる。

 カゴをしばらく漁ってから、ファイルも見せてもらった。
 もちろん、集めているシリーズが全種、数も豊富にある。発行年順にきちんと整理されていて、持ってきた「日本切手カタログ」とつき合わせながら簡単に探せるし、別途、シリーズ全点のパック売り品もある。
 いずれにしても、その場で、たちまち欠品集めが完成してしまうわけだが、せっかく「楽しい買いもの」に出会ったことを大切にしたいから、十枚ほどにしておいた。
 ファイルには、売価が書いてあるものもないものもあったが、博物館の案内に、国内未使用品特売の店とあったから、カタログ評価額前後だろうとみた。計算ヘチュセヨ。

 値段は、額面に五円から十円プラス程度で、やはり評価額より安い。そもそも額面が十五円、二〇円だから、合計は片道交通費より安かった。
 そう、切手専門店をあちこち訪ねて集め続けると、百枚ほどの切手を集めるまでに交通費のほうがよほどかさんでしまうが、それはそれでいい。お店の前で小さくなって切手を見ていると、時を忘れてしまう。
 発行年が一九七〇年代半ばの、シリーズの終わりあたりから今回は買っていったが、シリーズ発行十年間のうちに、絵柄や印刷の調子がだんだんハデになっていく感じもした。まだまだジミな時代だったと思うのだけれど。
 カラー刷りの「国定公園シリーズ」でそう感じたのだが、ブルーノートの単色刷りジャケットみたいで国定公園切手よりカッコいいと思っている「国立公園シリーズ」も、最後はカラーで発行されていて、統一感を欠いている。
 それはともかく、百円玉数枚で、こんなことに埋没していていいいのだから、いまさらながら驚いてしまう。

 いや、安さに驚いただけではない。
 帰宅してまたびっくり。ショップカードといっしょにオマケが入っていた。
 アメリカの使用済み切手二枚。最近「科学的思考」についてたまに考えていることを見透かされたような「科学もの」切手だった。
 うっ、このシリーズもかなりカッコいいかも。くそ、目うつりしていかん! (ケ)

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Originally Uploaded on JUL. 22, 2018. 14:55:00
*写真の解像度は低くしてあります
posted by 冬の夢 at 00:05 | Comment(0) | 日記 旅・徘徊・発見 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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