2018年05月29日

A.E.Housmanの詩

 
 このところ、特別に鬱というわけではないのだが、仕事が忙しいことと、おそらくは忍び寄る老いが災いして、腰やら肩がまるで錆び付いた自転車のようにキーキーと悲鳴を上げて、あまり楽しくない日々を過ごしている。休みの日に出歩くことも億劫になり、音楽さえもあまり聴かなくなっている(とはいっても、それでも普通の人の優に10倍は聴いているだろうけれど)。そこで、というわけではないが、昔に殴り書きしたノートなんぞを暇な時間にふと意味もなく漫然と見返したりしている。その中の一冊の最初のページに

I, a stranger and afraid(A.E.Housman)
(ワタシ、ヨソモノ、そして怯えている)

と書かれていた。いつ書き付けたものなのか、自分でもはっきりと思い出せないが、ノートの扉に書いてあるからには、その頃はそれなりに深く感じ入ったに違いない。

 この語句だけを見れば、アルテュール・ランボーが残した je est un autre(私とは一人の他者である)という言葉とも深いところで似ていて、おそらくそれが気に入って書き留めたのだろう。確かに、ランボーとハウスマンという二人の詩人を並べる試みも悪くはなさそうだ。そして、ランボーのことは多くの人が知っているだろうが、ハウスマンのことは今ではあまり話題にもならないから、この問題の語句が出てくる詩をこの場に載せておくのも悪くないかもしれない。
  
 以前にもA.E.Housman(1859-1936)のことを話題にしたので、興味があればそちらもどうぞ


The laws of God, the laws of man,
He may keep that will and can;
Not I: let God and man decree
Laws for themselves and not for me;
And if my ways are not as theirs
Let them mind their own affairs.
Their deeds I judge and much condemn,
Yet when did I make laws for them?
Please yourselves, say I, and they
Need only look the other way.
But no, they will not; they must still
Wrest their neighbor to their will,
And make me dance as they desire
With jail and gallows and hell-fire.
And how am I to face the odds
Of man’s bedevilment and God’s?
I, a stranger and afraid
In a world I never made.
They will be master, right or wrong;
Though both are foolish, both are strong.
And since, my soul, we cannot fly
To Saturn nor to Mercury,
Keep we must, if keep we can,
These foreign laws of God and man.
(A.E.Housman: Last Poems IX)

神の掟、人の世のしきたり、
守りたくて守れる人は守ればいい。
しかし、私にはできない。神も人も掟でもしきたりでも宣言するがいい。
だがそれは彼らのためであって私のためではない。
だから、もしも私の流儀が彼らの流儀と違っていても
私のことは放っておいてほしい。
私だって彼らの振る舞いをあれこれと見定めて咎めもするが、
しかし、私が彼らのための掟を作ったことなど一度もないのだ。
「どうぞご自由に、ご自身のことを。他の人のことは構わずに」と私は言うのに
それなのに、彼らは相変わらず隣人を自分の意に沿わせようとあくせくし、
彼らの望むままに私を踊らせようとする、
牢獄や死刑台や地獄の業火を使って。
だとしたら、私に何ができるのだろう、
取り憑かれたような人と神の奇妙なしきたりに対して?
私は、自分が作ったわけでもないこの世界で
一人きりで怯えている。
神と彼らこそが、良きにつけ悪しきにつけ、この世の主流だ。
両者とも愚か者だが、その両者が力を持っている。
だから、私の心よ、
私たちは木星にも水星にも飛んでいくことができないのだから、
もしもそれができるなら、
神と人の奇妙な掟やしきたりを守るしかないのだ。

(H.H.)

スクリーンショット 2018-05-29 0.54.18.png
(Housmanのご尊顔)


posted by 冬の夢 at 01:02 | Comment(0) | 文芸・読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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