2018年04月02日

Bang & Olufsen Beolab 6000 と その修理

 Bang & Olufsen のスピーカー Beolab 6000 が、完全に壊れてしまった。
 低音がスカスカになりジブジブ雑音が出る。
 パワーアンプがビルトインの、いわゆるアクティブ・スピーカーなので、アンプ部の修理か交換となると壮絶な費用になるのは間違いない。二十五年前の機種だが、近年まで製造されていたようで、同構造の後継機もあったらしく、修理は可能かもしれないが。
 CDプレーヤー Beosound Overture 側の問題だと、製造終了から十五年、Bang & Olufsen ジャパンのHPではとうぜん、修理不可能のバツ印がついている。十年ほど前に経年劣化したメカ部分を交換しているが「壮絶な」修理代だった。かりに修理可能でも修理代が怖ろしい。

 いや、実は自分の懐中は痛まない。この「バング・アンド・オルフセン」のオーディオセットは友だちのもの。二十年以上も聞かせてもらっている。
 ここ五年のヤドカリ漂流生活のうち、首都圏の居所には特別な楽しみがある。Bang & Olufsen で好きな音楽を聞いてもいいこと。ほかの居候宅では、オーディオ装置がないお宅に自分のスピーカーを置くのは遠慮したし、音楽を聞く習慣がない家で、大音量で自分の好きな音楽を聞くつもりもなかった。間借人ですから。

 Bang & Olufsen を聞かせてもらえる家が、どんな豪邸かというと、ふつうの集合住宅。が、ごらんの通りスピーカーの Beolab 6000 は、上背こそ多少あるが、とてもスリムで、思われているほど強烈に自己主張するデザインではない。たいていの部屋にすんなり収まる。ガラス扉が開閉したりする未来的デザインでかつて注目された Beosound Overture も、最近のドでかいテレビや、逆に、ひと昔前の高級コンポーネントステレオに比べたら「かわいい」存在だ。

 たたずまいもよいが、音もすばらしい。
 音楽好きないっぽうオーディオマニアではまったくないが、長年さまざまな機器を聞いたり聞かされたりした。オーディオ自慢のジャズ喫茶や、家が別に一軒たつほど費用をかけた機材が並ぶマニアのお宅で。
 が、初めて Bang & Olufsen を聞かせてもらったら、これしかない! と思った。
 ふだんMP3プレーヤーやパソコン用スピーカーで聞き、「オーディオ」は、ほとんどBang & Olufsen しか聞いていないので、まれに違う機器で聞いたり、高級ヘッドホンを試したりすると、知っている音楽がまるで違って聞こえる。違った方の音が気に入る場合も、もちろんあるけれど。

 Bang & Olufsen は、オーディオマニアには、おおむね評判が悪い。
 オーディオじゃなく家具だとか、素人向けの音だ、などと。
 値段が高いから、よけいケナしたくなるらしく、価格のほとんどがデザイン料だとか、見てくれに大金を出せるのを自慢したいならどうぞ、と。
 カネを出したのはわたしじゃないので反論はない。ヒョイと買えるものではないことは確かだ。
 二十年以上前、Beolab 6000 は、二本で四〇万円近くしていたし、Beosound Overture は、いくら Bang & Olufsen だといったって「CDラジカセ」なのだが、同じころ発売になって二十五万円くらいだったはず。修理費も常識では厳しい額になるわけだ。

 それでもやはり、好きな音なのだ。
 存在を自己主張しないような立ち姿から、音量に応じた必要充分な低音と、よく通る高音が出てくる。定位とか音像とかいうのか、さまざまな音の居場所が、部屋の中にイヤミなく立ち上がる。
 デザインも含めそれらの特徴をいい表す言葉は「アンビエント」で、デンマークの製品だということもあるかもしれないが、ジャズならECMレーベルだとか、クラシックなら比較的新しい録音の弦楽四重奏などがいい。
 もっとも、わたしはジャズならブルーノートのヴァン・ゲルダー・スタジオもの──プウプウ、ドンドコなやつですね──とか、あるいはスコット・ラファロの音の際立ちがすばらしいビル・エヴァンズの『Complete Village Vanguard Recordings 1961』だとか、クラシックならバッハ以前の古い合唱曲や、一九五〇年ごろのピアノの名手の録音、そういう盤もよく回している。それ以上にロックの盤をよく流す。日本のポップ音楽も、自分でエンジニア以上にスタジオを熟知している奏者を Bang & Olufsen で聞くと、感心させられる。角松敏生とかね。
 オーディオの通人が徹底的にセッティングした機器と、梱包を解いて組み立てたら機械にお任せの Bang & Olufsen の音を、同列で比較するなといわれたら異論はないし、爆音で聞いた場合や、超高音、重低音、微細な再現力では勝負になっていないのだろう。それはそれで、マニアの領域を否定するつもりはない。

 さて、故障個所は。
 Beolab 6000 の低音用スピーカーは、一台に二個ずつ装備されているが、どれも経年劣化でエッジ、つまりスピーカーの振動部分とユニット枠を接合している部材が破れていた! ガビガビになり、コーン部分がユニットから離れてしまっている。
 ユニット在庫の取り寄せができ交換。補修材でエッジを貼り直す作業ではないから短期間で修理完了。各部のダンパーもひどく痛んでいて交換となった。それら以外に問題はなく、修理業者さんの説明はていねいで分かりやすかった。

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エッジがボロボロでした!

 モノの修理がカンタンでないのはオーディオに限らないが、ことオーディオは、デジタル化のため「修理期間終了」での門前払いが当たり前になった。何とか修理できないかとねばったりすると、カッコ悪いというか頑迷ジジイである。二十数年前の機種が「古い」とはあまり思わないが、発売時には生まれてもいなさそうな店員に相談するのも気が引ける。それに Bang & Olufsen の店は、それこそ「おカネ持ちの人しか来ちゃダメ」的な構えだから気おくれもして、ろくに相談は出来なかった。持ち主が十年ほど前の修理を行った会社に連絡して相談した。現在も修理業務を受けていたそうだ。

 好きな人はとことん好きないっぽう、オーディオマニアからは揶揄ぎみな雑言をあびせられている Bang & Olufsen 。
 でも、実際に持っていて、日々たくさん音楽を聞いているという人は、少数派のきわみなのでは。だから毀誉褒貶の振れ幅が激しいのではとも思う。
 それはともかく、今回の修理過程で知ったことを書いておこう。たいした話はなく、公式情報でもないが。
 Bang & Olufsen の名デザイナー、デイヴィッド・ルイスのセンスがいちばんピュアに伝わる、一九九〇年代初めの古いモデル── Beosound Overture も Beolab 6000 も、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されている。ルイスは二〇一一年に亡くなった──を、すこしでも長く使いたいのに、故障してあきらめている「超少数派」の役に立つなら。

 Beolab 6000 のスピーカーユニットは、在庫がわずかにあるらしく、取り寄せられるようだ。そのぶん修理費もかかるが……。
 経年劣化が起きやすいエッジ損傷は、スピーカー修理業者による張り替え修理も不可能ではなさそうだ。もちろん音の変化は了解のうえで。
 パワーアンプの故障例は、過去さほど多くなかったそうだ。別の再生機器を接続することも出来るので、スピーカーユニットさえなんとかなれば、もうひと息、長く使えそうだ。

 Beosound Overture をはじめ、公式には修理期間終了のコントロール部分も、修理できる場合もなくはないそうだ。交換用の動作ユニットが、現在まだ見つかる場合もあるので。
 ただし、ユニットを換えるだけで廉価な小型コンポがワンセット買えてしまう価格。またマイクロコンピューターも組み込まれているが、そこは交換部品がなく特殊構造ゆえ修理不可能。高価な動作ユニットを入れ替えた直後にマイコンがイカレてオダブツという場合もありうる、とのこと。
 
 いずれにしても、古いモデルの修理を希望するなら、昔からのスタッフが在店しているショップに相談するとよいそうだ。さいわい都内に、まだそういうショップがあるとのこと。
 
 面白いのは、痛むいっぽうだったスピーカーで聞き続けてきたせいか、修理後の Beolab 6000 は、あきらかに音が違う。音の輪郭がやや固く、ボリュームをけっこう上げないと、コクがのってこない感じだ。いままでさぞ、モワモワの音で聞いていたんでしょうね。
 ならばと、古い録音で、モックリと音が出てくる中にキラッと楽器の音が輝くような盤を選んで回すようになり、楽しんでいる。
 ミルト・ジャクソンの『ballads & blues』(一九五六年)とか、アントニオ・カルロス・ジョビンの『WAVE』(一九六七年)とか。うわっ、いい!
 なんのかのいって、いちばん使っているのは自分なので、修理代を半分払うことにした。(ケ)

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本体:アルミニウム サイズ:20・110・22センチ・6.2キロ 最大出力:59W
本体正面上からバスレフダクト、高音スピーカー:1個 低音スピーカー:9センチ2個 アンプ(放熱部)
高級オーディオスピーカーとはぜんぜん違うスタイル。これが「デザインだけ」といわれてしまう理由なのか…。


※仕様は英国の販売店サイトから。www.beoshop.co.uk
 せっかく苦労して撮影したのに、こんな小さい写真に…。








posted by 冬の夢 at 13:21 | Comment(0) | 音楽 オーディオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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