2018年03月23日

Montrose − Rock the Nation 元気が出る曲のことを書こう[39]

 くそ、カッコいい!
 ほかのハードロックバンドを聴く気がしなくなってしまう。
 バンドリーダーでエレキギターのロニー・モントローズが、「地球上でいちばんシンプルなリフだよ」といっているイントロが、たまらん!

 たしかに、初めてギターを持ったその日のうちに弾ける。コードの押さえかたは超簡単だし、同じ指づかいを平行移動させるだけで、このメインリフは弾けてしまう。
 一九七三年といえば、いまと比べればエレキの音もまだまだ牧歌的なころだから、こんなに爆発的な音、どんなにすごいアンプを使って録音したんだろうと思うが、近年、モントローズが自分でいうには、当時ガレージセールで買った四〇ワットの小さいアンプとのこと。エフェクターなしだそうだ。
 ってことは、いまどき通販でも買えるエレキギター初心者セットで、じゅうぶんいけるわけだ!

 じゃじゃじゃじゃ〜! じゃじゃじゃじゃ〜! 
 同時にカウベルが「こん、こん、こん、こん」! 
 続けてドラムで「たど、たど、たっど、たど」! フィルインが「たたんた とことこ」! 

 音符じゃなくて「かな」で書くと「証城寺のタヌキ囃子」みたいですが、実は、そう!
 ギターのリフは地球一簡単な繰り返しだし、裏で踏んでいるバスドラムといいフィルインといい、どえらくイナたい!
 しかし、ギターも、ドラムも、リズムを「くう」箇所を入れているんですよ。それが「ウッ」と息をのませるので、尖った感じがする。
 モントローズがリフを弾くところを見ると、二回セットの二度めのアタマで「空ピック」を入れているのと、伸ばす音符をかなり強くビブラートで揺さぶっている。「ウッ」とさせる部分と下品なネチっこさが合体して、いかにもロック、って感じになっているわけだ。
 ってことは、地球上でいちばん簡単に弾けるリフ、ってわけにはいかないか。練習しがいはあると思うけど。

 練習しがいがあるというのは、四十五年も前のデビュー盤、『Rock the Nation』がA面一曲目の『Montrose』には、それ以降のアメリカのハードロックバンドのカッコよさの「すべて」があるから。
 キッスも、アエロスミスも、モトリー・クルーやヴァン・ヘイレンさえも、この盤から聴こえてくる。
 そして、ほかの曲もどれも『Rock the Nation』と同じようにシンプルだから、いま書いた、ちょっとしたフック、つまり悪い子ちゃんを感じさせるロックっぽい演奏技術が研究しやすいのでは。
 もっとも、昨今の高校軽音部女子なんかにこんな話をしようものなら、顧問の先生が俺のことをすぐ警察に通報するんだろうな。それに、いまの軽音部って外国のガラの悪そうなアンチャンが演奏する洋楽ロックは、課題曲にしないらしいです。
180324mm.JPG
Montrose 1973
リーダーのファーストネーム、バンド名、デビュー盤のタイトルが同じ

 気をとり直してと。
 さっきのフィルインの後にすぐ、サミー・ヘイガーの合いの手が「All right! Come on, now! Ooh, yeah!」とくるが、歌に入る前から、もう上手い!
 だいたいこの曲、歌のメロディがないというか、どういう抑揚でどこで解決しているのかわからない感じなので、ただ英語の字面をたどって歌っても絶対に曲にはまらない。
 つかめるメロディがないということは、歌詞の単語と文が持つ音の起伏や緩急が、バンドをあおるくらいでなければ、曲になりゃしないだろうから、ヘイガーは、このバンドにばっちり合った歌手だったわけだ。

 Got it in me, I've got it in me,
  わかったよ ぜんぶものにしたぜ
 Ain't gonna quit until it all comes out.
  なにもかもはっきりするまで やめないぞ
 Gonna do it, ain't nothin' to it  
  やっちまうぞ 何も失うものはない
 Just shake my hips, throw my head back and shout...
  ケツをふり ヘッドバンクして叫ぶ
 Been a long education
  お勉強はもうたくさんだ
 But my homework is done.
  もう宿題は終わりだよ
 I'm gonna rock the nation
  この国をロックさせるぜ (この国をガタガタいわしたるで)
 Just-a wanna have fun, yeah!
  楽しみたいだけさ いえぃ!        (略)

 ドル危機の余波で景気が低迷するなか、その大きな要因のひとつでもあったベトナムからアメリカ軍が撤退したのが、この盤が発売された一九七三年春。秋の発売とほぼ同時にオイルショックの追い打ちが襲ってくる。反戦運動などを通じて市民意識が高まったころでもあり、ベイエリア発のこのバンドのデビューは、本人たちのハードロック一直線な気分──だったと思う──よりも、もう一段深く、受け止められたのではなかろうか。

 と思って、すこし調べてもみたが、どうもそうではなかったようだ。
 アメリカのハードロック奥義書みたいな盤でもあるのに、いまいち売れていない。
 キレやすい性格と、コントロール癖で知られていたモントローズは、わずか二年でヘイガーをクビにし、バンドも実質三年で解散となってしまった。
 わたしが、これほど「カッコいい」と吠えているのだから、いい盤に決まっているわけだし、実力はじゅうぶん過ぎるほどあったバンドなのに。演奏の面からばかり書いたけれど、聴くによし見るによしのバンドなのだが。
 それが証拠に、いや説明の要もないと思うが、解散後、ドラムのデニー・カーマッシはハートをはじめ数多くのバンドに、サミー・ヘイガーはいわずと知れたヴァン・ヘイレンに、ビル・チャーチはそのヘイガーのソロ活動のサポートにと、世界的人気のバンドに参加できて、モントローズのエッセンスを伝道し続け、いまも現役だ。

 つまり『Rock the Nation』にはじまる「奥義書」の主著者であるにもかかわらず、ロニー・モントローズだけが、ビッグステージに縁のないままだったことになる。
 ヘイガーの見かたでは、せっかくハードロックのブームが来ようとしていて、自分はその気でやっているのに、モントローズはそこ一本にバンドの方向性を絞れず読みが甘かったということらしい。モントローズからいうと──自分が解雇したことを認めた以外は、あまり細かく話していないが──とにかくビッグになりたがる、調子がいいばかりのヘイガーとは、バンドでいっしょにやれる余地がなかったようだ。

『Rock the Nation』ができたとき、モントローズは二十五歳。ほかの曲もそうだが、そんなに若くて、しかもデビュー盤で、なぜこんなにすばらしいロックが作れたのかということについて、彼はこんなふうにいっていた。
 もちろん経験不足でボキャブラリーも表現力も足りないが、そのかわり、強烈さそのものに集中できたと。
 これはモントローズの言を待たずとも、よくいわれることだが、どうも彼は、その成果に自信が持てなかったようだ。進歩しなければならない、より良くなければならない、という強迫観念じみたものに、とり憑かれ続けていたらしいのだ。

 マネジャーでもあり公私ともに支え続けてきた奥さんによると、つらい子ども時代だったので、そのような性格になったのだという。
 くわしくはわからないが、もともとサンフランシスコ生まれだが両親の事情で、幼いときにお母さんの在所、コロラド州の田舎町に越している。十六歳のとき、どうしても音楽がやりたくて家出し、サンフランシスコに舞い戻ってキャリアを求めたそうだ。
 キレやすく、他人をコントロールしたがる性格であるように書いたが、二十歳代でロックの奥義をきわめながら、あるいはきわめてしまったがゆえに、さらに進化を続けようとした純粋な人だったのかも知れない。
 ロニー・モントローズが亡くなってからまる六年がたつ。病気と発表されたが、まもなく自殺だったと明らかになった。長年にわたって過度の飲酒と鬱の問題をかかえており、酩酊状態で奥さんにメールを送り続けた──それまでにも自殺をほのめかすことがよくあった──すえの、拳銃自殺だったという。

『Bad Motor Scooter』の、あの印象的なバイクの効果音をギターで出せたときのことは、映画『2001年宇宙の旅』の冒頭でサルがヒトに進化する段階を描いた場面に似ている、といっていたのが印象深い。
 骨を道具として使うことを知ったサルが、骨を思いきり空へ放り上げたらそれが宇宙衛星になるシーンのことだ。
 ご存じのかたも多いだろうが、サルに骨を使うことを教えたのは宇宙から送り込まれた「モノリス」だ。そういえば『Montrose』には『Space Station #5』という曲もある。「地球上でいちばんシンプルなリフ」の
simplest on the planet といういいかたといい、彼は、宇宙からとどいたロックを演奏しようとしていたのかもしれないな。カネやプロダクションやマーケティングがどうのこうのばかりの、地上の音楽ではなくて。(ケ)

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PAPER MONEY 1974
曲に変化がつき、より「宇宙っぽい」曲もあるが、押しが弱い感じも。
このデビュー二作めで、サミー・ヘイガーは脱退している。

Ronald Douglas Montrose 1947/11/29 - 2012/03/03



※ほんとうの死因や背景について遺族は、専門誌「GuitarPlayer」の記者に公表を依頼した。guitar.player.com Apr 10, 2012
※ロニー・モントローズのインタビュー動画は、YouTubeの公式チャンネル「OfficialMontrose」で見られます。
 www.youtube.com/user/officialmontrose/

Originally Uploaded on Mar. 24, 2018. 21:21:00

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posted by 冬の夢 at 00:05 | Comment(1) | 音楽 ロック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なるほど…そういうロックグループだったのですねぇ⁉
解説面白かったです‼
今度聞いてみたくなった‼‼
Posted by 是 at 2018年03月26日 22:54
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